#田舎暮らしミステリー
およそ10ヶ月ぶりの池井戸潤新作。
池井戸潤と言えばビジネス系小説の第一人者、というイメージがあるのだが、
今回はその『括り』から完全に外れた異色作。
ひょんなことから亡き父の故郷に移住することになった中堅ミステリ作家。
自然に恵まれ、景観も良い土地への引っ越しは功を奏し、執筆活動も好調。
田舎ならではの慣習にもしっかり順応し、自治会にも参加、遂には消防団
への入団も果たし、田舎暮らしは大成功。しかし、その平和な土地に連続
放火事件が起こり・・・という内容。
これまで、どんな作品でも必ず【お仕事】がフィーチャーされ、ソレがす
ばらしいスパイスになる、というのが池井戸作品の真骨頂。だが、この作
品はそういう要素がほぼ排除され、純度の高いピュア・ミステリーが展開
されている。この事実に、本当に舌を巻いた。
そして、今このタイミングで「新興宗教」を素材に出来た、という強運。
この作品の連載時はもちろんまだあの事件は起こっていないハズなので、
計算されたモノ、という事はまず無い。こんな偶然を当然のように起こせ
るほど『持っている』作家なんだろうなぁ、きっと。
文章量は多く、ちゃんとした長編だけど、読み応えはバッチリ。
ミステリーに振り切った池井戸潤もカッコいいぞ、マジで!