イマジン?

#おかえり!


▼イマジン? / 有川ひろ

有川ひろの新作。
・・・この枕詞を、ずっとずっと書きたいと思っていた。なんつったって
純粋な小説およそ4年ぶり。この作家にここまで待たされたのは初め
てである。

僕の中での「問題作」となっている「アンマーとぼくら」以降の5年間、
有川ひろという作家には本当にいろいろあったんだと思う。入ってくる
話題は憶測やウワサでしか無く、その中に良い話は一つも無い。もしか
したら作家として終わってしまったのではないか?と真剣に感じていた。
だから改名後初の小説であるこの本には、最初から真剣に向き合わざる
を得ない。

書き下ろしの長編、である。
ゴジラに感銘を受け、映像業界で働くことを夢見て上京し、ほぼ不可抗
力の状況挫折を余儀なくされた若者が、ひょんなことからテレビの制
作現場に飛び込んで行く・・・という内容。

かなりのあるハードカバーをあっという間に読了。
最初の章を読み終えた瞬間に「こういうのが読みたかったんだ、オレ」
と心の底から思った。自ら幸福を拾いに行く積極的な連中の話は最初か
ら心にストンと落ちてくるし、共感度も半端ない。そもそも有川浩とは、
こういう「熱いお仕事系」を書かせたら、右に出るモノが居ないほどの
表現者だったことを、まざまざと思い出した。

構成的な工夫も正直凄い
ここで制作される映画やドラマの半分は過去の有川作品をアレンジした
モノだからイチイチニヤリと出来るし、時折提示される「台本」のレベ
ルも高い。女史のこれまでのキャリアが全く無駄になっていないところ
が、何よりもすばらしい。

そして個人的に、僕の後輩たちに是非読んで貰いたい作品でもある。
おそらく皆が解らないまま行っている「制作」という仕事の何たるかが
理解出来ると共に、“製作”“制作”の違いなど、今さら聞けない系の疑
問が解ける部分が多々あるハズ。そして、描かれる現場は我々に近い世
界の話だから、自分たちにも希望とか未来がある、と信じられるように
なると思うので。

ある意味万感の思いで、僕の大好きな作家の一人にずっと言いたかった
言葉を記しておきます。

おかえりなさい! 待ってたぜ!

平成維震軍「覇」道に生きた男たち

#やってやるって!


▼平成維震軍「覇」道に生きた男たち / V.A

G SPIRITS MOOKの記念すべき10冊目は、なんと平成維震軍
1991年に突如始まった新日本プロレス空手・誠心会館との抗争劇か
ら生まれたユニット。ココに目を付けるあたりがG SPIRITSのセンス

実際のところ、誠心会館の青柳・齋藤と、新日本の越中・小林の抗争は
本当に熱くなった。異種格闘技戦云々のレベルの話ではなく、バックボ
ーンの違う双方が本気丸出しで闘うのだから、コレが面白く無いワケが
無い。闘魂三銃士が全盛期を迎えた頃に一方で毒々しく狂い咲いたベテ
ランの意地が、ファンの心を鷲掴みにする、という見事な展開を魅せて
くれたのを、昨日のことのように覚えている。

そんな平成維震軍に所属した7選手の共著。
執筆者は、越中詩郎・小林邦昭・木村健悟・Gカブキ・青柳政司・齋藤
彰俊・AKIRAの7人。小原道由後藤達俊の参加が無かったのは残念だ
が、この手の書籍にはなかなか登場しない選手たちの談話が多々。特に
青柳館長の項は、非常に興味深く読ませていただいた。

嬉しく感じたのは、平成維震軍に在籍した全ての選手がこのユニットに
「愛」を未だに持ち続けていること。プロレスラーの多くはかつて自分
が在籍したユニットに対してドライなことが多い傾向があるのだが、皆
「すばらしいユニットだった」と一様に語る平成維震軍は、間違い無
く稀有な存在。確かに僕も、プロレスファン全体から煙たがられている
木村健悟を真剣に応援したのは、この時代だけだったかもしれない。

もちろんキャリアのあるプロレスファン向けの書籍。でも、あの時代の
「熱さ」を覚えている同士たちは、一読する必要があると思う。
初代の維新軍より、断然好きだったな、平成維震軍

騒がしい楽園

#幼稚園の大惨事


▼騒がしい楽園 / 中山七里(Kindle版)

読むべき本の在庫が底を付き、困った時中山七里登板。
基本この作家は僕にとって「鉄板」の一人であり、これまで作品を
読んだ後に落胆した記憶が殆ど無い。というわけで、紹介文も何も
読まずにチョイスしたのだが・・・。

基本的には以前レビューした地方幼稚園ミステリー「闘う君の唄を」
の続編・・・というかスピンオフ。あの時登場したクールでプロフェッ
ショナルな幼稚園教諭・神尾舞子が東京の幼稚園に転勤、そこで悲劇
に見舞われる、というお話。

・・・いやぁ、コレはちょっと
いや、物語の構成やミステリーの質はいつも通りだし、待機児童
騒音などの問題に対する着眼点は相変わらずおもしろいのだけど、
作中でたった一人だけ死んでしまう人がちょっと問題

これはもう生理的な話になっちゃうと思うので詳しくは書かないが、
残念なことにその時点で興味が萎え、冷静になったおかげで氏お得
意の「どんでん返し」ラス前で全て読めてしまった。ちょっと損
した気分だなぁ・・・。

しかし、この幼稚園シリーズはかなり面白いので、続編に期待。
出来ればああいう人たち死なない方向で話を創って欲しいけど。

戦慄するメガロポリス

#天才クラッカー、北へ


▼戦慄するメガロポリス / 志駕晃(Kindle版)

志駕晃「スマホを落としただけなのに」シリーズ第三弾
現状ではこの作品が最新作ということに。前作のラストの「含み」
をどう拡げてくるかと期待したのだが、良い意味で「まさかこんな
手で来るとは!」という驚きが。

前作に続いて主役を張る警視庁サイバー捜査官・桐野と、その宿敵
である浦井はもちろん登場するのだが、物語の始まりは普通のOL
ある有希「公園のベンチでスマホを拾う」、という第一作を踏襲
した感じなのがまず面白い。この新たなキャラクターも含めた主役
クラスの連中がランダムに語り部を務める構成。読者のミスリード
を誘う展開だが、「そうはさせるか!」とばかりに注意した・・・のだ
が、まぁ見事にやられた(^^;)。

今現在を考慮すると「かなり近い未来の話」ということになる。
その辺りの想像を膨らませながら読むと本当にドキドキするし、ま
たもや「実際に起こりうる」と感じてしまったのだから凄い。

シリーズとしての惹きも充分に残した上でのラスト、実際のところ
かなりすばらしいと思います、ええ。続編出たら即買いだな、コレ。

囚われの殺人鬼

#シリアルキラー+天才クラッカー


▼囚われの殺人鬼 / 志駕晃(Kindle版)

志駕晃「スマホを落としただけなのに」シリーズ第二弾
前作のラストで逮捕され、死刑確実連続殺人鬼にして天才クラッ
カーの浦井が、どういうワケだかサイバー犯罪の解決に協力する
という驚きの展開。

前作に比べると事件の規模がかなり拡大しており、さすがにファン
タジックな香りが漂うが、それでも事件の「リアリティ」は大した
モノ。さらに今回は主役としてワケアリ気味警視庁サイバー捜査
官・桐野が登場し、物語の緩急が明確になったのが大きいかもしれ
ない。

最後の最後は思わず口アングリの怒濤の展開。
シリーズモノにするには必要な状態ではあると思うのだが、コレは
さすがに無理があった(^^;)。しかし、以降の展開は正直楽しみ
こういうあざとさなら、まぁアリ(^^;)。さぁ、続編読もう!