汚れた手をそこで拭かない

#ヒューマンミステリー


汚れた手をそこで拭かない / 芦沢央(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Kindle Unlimited
を徘徊中に発見した、僕にとって久々の芦沢央作品。
5篇からなる短編集であり、第164回(2021年)の直木賞を惜しくも次点
逃した作品。傑作ミステリーとして評判だったのだが・・・。

・・・なるほど、確かにミステリー
短編ながらしっかり伏線が貼られ、ソレがキッチリ回収される、というちゃん
としたミステリーなのだが、読後感ヒューマン系のソレ。各篇全てがリアリ
ティ満点のエピソードであり、この作品の中で起こる全ては自分にも起こりう
ること、と余裕で錯覚。自分がそうなってしまった時のシミュレーションまで
初めてしまうのだから凄い。

特にシンクロ率が高かったのが3篇目の「忘却」
人生の晩年期に差し掛かった老夫婦の物語だが、ここで起こった事件があまり
にも恐ろしい。もし自分がコレをやってしまったら、と考えると、胸が潰れそ
うになるくらい苦しくなるし、耐えられる気がしない。そこまで人の心をコン
トロールした上で、しっかり意外なオチを付けてくる。これはもう、「傑作」
というレベルに達している気がする。

これまでも見事な叙述トリックを楽しませてくれた芦沢央だが、ここでまた
新たな『魅せ方』を持ってくるところが非常にニクい風変わりなミステリ
を探している人がいれば、もう是非に。またハマりそうだな、この作家。

Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇

#Natural Born Master


Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇 / Gスピリッツ編(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お馴染みGスピリッツ選集第三弾は完全に予想外「武藤敬司」篇。
Gスピリッツの編集方針から考えると、武藤は比較的新しい選手のハズ。
いつかは出る、とは思っていたが、まさか三冊目武藤特集が来るとは、
夢にも思わなかった。

Gスピリッツは「昭和専門」を謳っているワケでは無い、と思う。
そして武藤敬司というプロレスラーの全盛期も“平成”であることは明白。
しかし「選集」になるほど武藤の記事があった、ということ。コレはち
ょっと意外だった。

そしてこの天才プロレスラーに関する記事をまとめて読んでいると、
思った以上に“昭和”の香りがプンプンする(^^;)。まぁ、武藤のデビュー
は昭和だし、その頃に藤波・前田・長州、なんなら猪木とも濃密に絡ん
でいたのだからソレも当たり前。そんな時代から引退した令和に至るま
で、ほぼトップで居続けたのが武藤敬司という不世出のプロレスラー
そんな武藤の「特別」さが、改めて理解できる作品だと思う。

やはり興味を惹かれるのは、SWS移籍未遂の件。
武藤の性格から考えるに、プロとしての価値を認めてくれる場所であれ
ばすんなり移籍してもおかしくなかったハズ。新日本に残ったのは結果
的に大正解だったのだけど、そういう「運」に恵まれるのも天才が天才
たる由縁。やっぱり特別なんだよなぁ、Natural Born Masterは。

まさかの武藤だったのだが、思った以上に楽しんでしまった。
Gスピリッツ選集、次こそルチャ関連のまとめに期待!
・・・売れないのかなぁ、それだと(^^;)。

たとえば孤独という名の噓

#China Power


たとえば孤独という名の噓 / 誉田哲也(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コレも入院中にまとめ買いした電子書籍の中の一冊。
しかし、僕の“本命作家”の一人である誉田哲也新作(昨年11月発売だけ
ど^^;)で、楽しみに取っておいた、というのが正解。他作品を諸々を読了
し、ようやく読み始めたのだが・・・。

全5章からなる長編ミステリー
1章を読み終え、2章のアタマくらいまで読んだ時は“連作短編”と勘違いし
たが、紛れもなく一連な物語。章ごとに語り部が変わり、新しい“事実”
次々と積み重ねられて行く。前章で決定的だと思った“犯人”が次章で覆さ
れるので、事態は混沌の極みに。最後に「まさか?」の真実が露わになる
様は、いっそ清々しさすら感じる。

氏お得意の警察小説であり、所轄警視庁捜査一課はもちろん、公安も出
てくる“全部入り”。誉田哲也作品で「公安」が登場する作品は、ジウシリ
ーズを始めとした「重たい作品」が殆どなのだが、この作品はソレらに比
べれば幾らかライト。どちらかと言えば、緻密なストーリー構成どんで
ん返しを幾つも乗せた、良質なミステリーに仕上がっている。

そして、今回のネタが『中国』というのも興味をそそるポイント。
この作品の中で描かれる中国という国と、そこが行っている諜報活動の様
子が、彼の国の“真実”に近いモノであるのかどうか、本当のところはもち
ろん解らない。ただ、「実際もこんな感じなのでは?」と思わせてくれる
圧倒的なリアリティ。コレはもうさすがとしか言い様が無い。

姫川玲子などの有名キャラこそ出て来ないが、それでもノンストップで読
みたくなる快作。この作家のブレなさはすばらしいな、マジで。

カフネ

#本屋大賞


カフネ / 阿部暁子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院中まとめ買いした電子書籍の中の一冊。
阿部暁子作品はもちろん初めてなのだが、購入の決め手は2025年本屋大賞
受賞作である、ということ。そういえば、同じ頃に購入した「成瀬」も前年の
大賞作品だった。成瀬には相当刺激を受けたが、果たしてこちらは・・・。

主人公・野宮薫子は中年の域に達した公務員溺愛していたが若くして
し、絶望のどん底まで落とされるも、弟の残した「遺言」に従い、遺産
相続すべく、彼の恋人であった小野寺せつなに会うことに。薫子はせつなの
慇懃無礼な態度に憤るのだが、疲労が祟りその場で倒れてしまう。実は薫子
はごく最近離婚を経験しており、荒んだ生活を送っていた。無愛想だったせ
つなだが、薫子を家まで送り届けることに。そこでせつなが薫子に振る舞っ
料理絶品で・・・という導入

ザックリ言えば、世代の違う女性同士「対立」から始まる「友情」を描い
た作品かと。とはいえ、単純なヒューマンストーリーだけと言うワケではな
く、ちょっとしたミステリー要素も含まれている。もちろん、本屋大賞受賞
作に相応しい「濃い人間ドラマ」圧巻で、読み応え充分。だけど・・・。

実は入院中から少しずつ読んでおり、読了したのはつい最近(^^;)。
僕はかなりの速読を自負しているのだが、それでもこの作品の“文章量”
に余るほど(^^;)。まぁ、冒頭の導入解説がこれまでになく長くなってしま
ったのもソレが原因かも。個人的にはあまり問題は無いのだが、読む人によ
っては冗長に感じてしまうかもしれない。この作品に敢えて弱点を挙げると
するのなら、そのあたりなのかも。

とはいえ、本屋大賞に相応しい作品であるのも事実。逆に言えば、ガッチリ
読書を楽しみたい人にも向いている作品だとも思う。「アオハライド」など、
有名な著作もあるので、機会があれば読んでみようかな・・・。

波瀾万丈な頼子

#リテラシー


波瀾万丈な頼子 / 真梨幸子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院中に入手した真梨幸子新作。といっても、発売は10月頃だったらしい。
なんなら真っ先に読んでもおかしくない作品なのだけど、さすがに身体、そして
心まで弱っている時に幸子サマの作品を読むのは危険、と判断(^^;)。無事退院し
た後に一気に読んだのだが、コレは正解だった。

今回の素材はその実態すら定かでない「シルバー系YouTuber」孤独貧困生活
をアピールする老人がYouTubeにてライブ配信を繰り返し、投げ銭にて生活支援
強請る、というあまりにトホホな状況(^^;)。冷静に考えればあり得ない状況な
がら、コレにカネを払ってしまう人が何故だか多々登場(^^;)。そうこうしていく
うちに、関係者が次々と・・・という感じ。

相変わらず、凄まじいまでのイヤミス(^^;)。
最近の幸子サマ作品は、ミスリードを誘う作風が多くなっていた感があったにだ
が、今回は完全に原点回帰し、ドロドロ系イヤミス再シフトオチに関して
は、途中で読めてしまったのが残念だが、「迂闊な人間たちの末路」を堪能させ
てくれる、実に真梨幸子らしい作品

さすがにコレ、心が弱った時に読むと、同調圧力に屈していた可能性大(^^;)。
心身共に充実している時に読むことを強くオススメします。凄いけど(^^;)。