許されようとは思いません

#珠玉五篇


▼許されようとは思いません / 芦沢央(Kindle版)

「悪いものが、来ませんように」に衝撃を受け、続けて芹沢央作品。
こちらは全5篇からなる短編集

・・・いや、脱帽
全く関連性の無い5篇だが、どのストーリーからも計算され尽くした
『薄気味悪さ』が漂う。いわゆるイヤミス系とはまた違った感覚で、
読書中にいたたまれなくなり、思わず本を閉じてしまう機会が数度
あった。しかし、ミステリーとしても非常に秀逸で、見事に5回、し
っかりしたどんでん返しを喰らったのだから驚く。

特に印象に残ったのは、1篇目『目撃者はいなかった』と、タイト
ル作・ラスト『許されようとは思いません』の2つ。前者は仕事の
ミスの隠蔽を図った冴えないサラリーマンの顛末を描いたひたすら恐
ろしい物語、後者は身内に殺人犯を持つ男が苦悩しつつ事件の真相に
迫るオカルトテイストのミステリー。最後のタイトル作のみ、ホンの
少しだけ清涼感を含んでいるところが小憎らしい

マジで良い作家に巡り会ったかも。
しばらく読書に困らないくらい著作もあるので、今後バリバリ読む!

証言 武藤敬司

#内側が語る「天才」


▼証言 武藤敬司 / 宝島プロレス取材班

気付けば全て購入してしまっている、宝島「証言」シリーズ
今回の素材は先日東京ドームで大々的に引退した武藤敬司。サブタイト
ルは『平成プロレスを支配した「天才レスラー」の光と影』。案の定、
と言うか、やっぱりと言うか(^^;)。

今回の証言者。新日本プロレス時代船木誠勝、ジミー鈴木、永島勝司、
大仁田厚全日本プロレス時代川田利明、和田京平、TARU、諏訪魔、
大森隆男、そしてリングの外側橋本かずみ、神奈月、小島和宏

これまでの武藤の歴史を考えると、もっと関係の深そうな人物・・・例えば
蝶野とか・・・が思い浮かんでしまうのだが、よくよく考えてみれば非常に
興味深いメンツ(^^;)。コレが期待を裏切らないオモシロコメントを連発
しており、結果証言シリーズの中でも屈指の内容となっている。

引退興行のインパクトが強烈なこの時期、タイムリーなリリースかと。
宝島のこういう嗅覚、ちょっと見習った方がいいかもしれない。

ちなみに今回から著者が宝島プロレス取材班になったらしい。
レビューするにはこっちの方が楽でいいね、うん。

悪いものが、来ませんように

#叙述トリック


▼悪いものが、来ませんように / 芦沢央(Kindle版)

約4年ぶりの芹沢央作品。
前々からタイトルが気になっていたのだが、Kindle Unlimitedになっ
ていたのでコレ幸い、とばかりに読んでみた。

主人公である二人の女性が基本の語り部であり、そこに周囲の人間
証言が挟まる、という構成。この証言から主人公二人が何らかの
事件に巻き込まれている、ということが解って来るのだが、最後に
とんでもないオチが待っている。

・・・いや、見事な叙述トリック
事件の概要が解った段階で思わず呆気にとられ、冒頭の章を読み返
してしまったほど。ネタバレすると申し訳無いので詳しくは書かな
いが、ミスリードを誘う構成が非常に秀逸。中山七里や最近の真梨
幸子に勝るとも劣らない。

ミステリーとしてもすばらしいが、ドロッとしたオンナの心情描写
もなかなかのモノ。かなりの長編だが、いろいろな意味で退屈しな
い、凄い作品だと思う。

ということで、今は別の芹沢央作品を鋭意読書中。久しぶりにハマ
れる作家が出て来たかも!

タケ・ササ手入れのコツ(?)

#ミス


Amazonのマーケットプレイスで購入したが届いた。
以前から気になっていた本で、読むのが非常に楽しみだったのだが・・・。

『育てて楽しむタケ・ササ手入れのコツ / 内村悦三』
タケやササを育てている人には必須の指南書であり、この本があれば
初心者でもかんたんにタケ・ササが育てられ・・・、いや、知るか!!

当然ウチにはタケ・ササの類を育てていないし、実家にも無い。
親戚がちょっとした竹藪を持っているけど、特に世話をする必要は無い。
だから僕がこの本を注文する必要は無く、もちろん注文した覚えも無い。
どういうことかというと、まぁ単純な配送ミス(^^;)。

注文したのは↑↑コレだったのだけど(^^;)。
もちろんAmazonに報告、返金もして貰ったのだけど、さてこの本を
どうすべきか・・・。悩むな、若干(^^;)。

俺が戦った真に強かった男

#風雲昇龍


▼俺が戦った真に強かった男 / 天龍源一郎(Kindle版)

稀代の名プロレスラー、天龍源一郎の著書。
自身のプロレスキャリアの中で共に闘った「強かった男」たちについて書か
れた作品だが、コレは単なる“強い・弱い”ではなく、天龍さんが“好き”なタ
イプのプロレスラーに関する記録、とするのが正しい。

主に取り上げられているプロレスラーは全12名
ジャイアント馬場、アントイオ猪木、ジャンボ鶴田、阿修羅原、スタン・ハ
ンセン、ブルーザー・ブロディ、ミル・マスカラス、ザ・グレート・カブキ、
前田日明、三沢光晴、武藤敬司、そしてオカダ・カズチカ

注目すべきは、この中に長州力の名前が無いこと。コレについては、もしか
すると深い意味があるのかもしれないが、単純に忘れていただけの可能性も
ある。こんなところにも問いかけを残すところが、天龍さんの魅力の一つ。

暴露的な要素が一切無い、オーソドックスなエッセイ集だが、読後爽やかに
『漢』を感じられる。あ、僕は天龍源一郎が好きだった、と改めて思い出さ
せていただいた。

天龍さんが引退してもう8年が経過する。あれからもプロレスは面白いし、
凄い試合もたくさん生まれた。今の選手たちがいつか引退して本を出した時、
同じように思わせてくれると嬉しい。そこまで生きられるかどうか定かでは
無いのだけど。