#妖艶純文学
▼恋塚 / 花房観音(Kindle版)
おそらく「フェイタル」を読んだ所為でKindle Unlimitedのリコメンドに登場し
たモノ。花房観音作品は「花びらめくり」以来、実に8年ぶり。
全6篇からなる短編集。
相変わらず気合の入った官能小説で、さすがは団鬼六賞・大賞受賞作家。
この手のジャンルはそれほど大量に読んでいるワケでは無いのだが、作品によっ
てクオリティに天地の差がある。花房女史の作品はエロ描写が妙に艶めかしく、
“官能”という部分だけ切り取っても太鼓判が押せるのだが、作品内でのエロ比率
はそれほど高いワケでも無い。各篇冒頭のトーンは純文学的で、そこから徐々に
エロを高め、最終的に切なめなエンディングに落とす、という手法は、ちょっと
した職人芸。官能小説なのに、読後感は一般作の長編を読んだ時に感じるモノに
近い気がする。
印象に残ったのは、タイトルロールの「恋塚」。
偶然再会した幼なじみと関係を持ってしまい、最終的に殺人まで犯してしまう男
の話なのだが、この展開があまりにゾッとするモノ。ハッキリ言えばオチは読め
るのだが、そこに至るまでのプロセス描写が凄まじく、解りきった結果にすら呆
然としてしまったほど。
花房観音、実に恐ろしい作家。
この手のジャンルにアレルギーが無ければ、ぜひご一読を。おもしろいので!