「AX」から2ヶ月くらいしか経っていないのに、もう新作!
伊坂幸太郎の新刊は、なんと“籠城ミステリー”。この段でもう胸がときめい
ちゃう人、やたら多い気がする(^^;)。
伊坂幸太郎の籠城モノと言えば、「チルドレン」や「陽気なギャング」シリ
ーズで何度か目撃したことがあるのだが、今回のは完全に一線を画す内容。
籠城モノなのに登場人物はやたら多く、ともすれば話がこんがらがってしま
いそうなのだけど、絶対にそういう展開に持って行かないのが伊坂幸太郎の
凄いところ。終わってみれば全キャラが皆重要な役回りを最低一つは担って
おり、結果的に“無駄な人物”が一人も居ない。加えて、章全てに用意された
どんでん返しは感嘆に値するくらいレベルが高く、随所で爆笑しつつも唸る。
奇跡のような作品だ・・・。
そして嬉しいことに、今回のキーマンは「泥棒」と「探偵」の両極端を生業
とするあの男。彼のキャラがここまで立つのはかなり久しぶりで、それだけ
でもう嬉しい。さらに、「レ・ミゼラブル」にインスパイアされた狂言回し
的な表現があまりに小憎らしい上に「あそこからこの話を思いつくのか!」
という天才ぶりも遺憾なく発揮されているのだから、もう脱帽するしか無い。
ユーモアに富んだジェットコースターミステリー。しかしこのカッコ良さ。
伊坂幸太郎のエッセンスが存分に詰まった作品、ぜひお試しを!