続けて中山七里作品。
この作家の作品、わりと良いペースで読んでいる筈なのだけど、まだまだ読
んでない作品多々。そんな中から、かなり新しめの作品をチョイスしてみた。
今回のキーワードは「生活保護」。最近では複数の芸人の身内が不正受給を
していたことで話題になった社会保障の一つで、この作品にも一瞬そのネタ
が登場する。だからと言って、笑うに笑えない。そういう種類の本である。
・・・この作品で描かれているような事態が今現在の日本の生活保護の実態だと
するのなら、もう本当にやり切れない。中山七里が想像だけで作品を構築す
るタイプの作家だとは思えないし、このネタを作品にする、ということは、
おそらく綿密な取材の上に成り立っているモノな気がする。だとするならば、
今の日本の何を信頼すればいいのか? そういうことを随時考えてしまうくら
いの問題提起作であることは間違い無い。
久しぶりに、本を読んであまりのやるせなさに涙した。フィクションとは言
え、こんなワケの解らない不幸はやっぱり許せない。ここまで犯人に肩入れ
して読んだミステリー、最近では無かった。
そして、この作品では中山七里の「どんでん返しの帝王」たる由縁が顕著。
終わってみればスッキリ納得出来るのだが、読んでいる途中では全く予想出
来ない結末を思いつくところがただただ凄い。
いわゆる「役人」。特に根性まで役人に染まってしまうような浅い連中には、
必ず読め、と過激に強制したくなる。役人が100人居たとして、その100人
を悪人と言う気は無いが、とにかく役人を攻撃したくなる。役人でなくとも、
暴力衝動を抑えられる人は読んでみて欲しい。是非。