ツキマトウ

▼ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係 / 真梨幸子(Kindle版)

真梨幸子新作なのだが
このタイトルを見ると普通に思い浮かぶのがいわゆるシリーズモノミステリー
中山七里今野敏などの秀作群をどうしても想像してしまいがちで、最初は
「遂にイヤミスの教祖もこういう世界に進出してくるのか・・・」と考え、ある種
寂しくなった。そういうのは他の作家に任せといてもいいじゃねぇか、と。が・・・。

幸子サマ、あまりにお見事です!
今回も徹底に徹底を重ねたイヤミス。イヤミスとはこうあるべき、的な構成は
本当にコチラのアレな部分ガツガツ突いてくる。なんつったて起こる事件が
詐欺・ストーカー・リベンジポルノ・地下アイドル偏愛・盗撮・盗聴。人間が
起こす事件の中でも相当に陰湿イヤラシイモノばかりをかき集め、暗黒の世
を構築してしまう手腕、凄いと言わざるを得ません!

そして、完成度が異様に高くなっている独自の叙述トリックにも注目。
とにかく胡散臭い人物がこれでもか!とばかりに登場し、整理が追いつかない
状況をカッチリ仕立て上げる。「鸚鵡楼の惨劇」あたりで開発され、磨き上げ
てこられた技術だが、以前感じた面倒くささが全く無く、整理出来ない状況で
興味が継続する、という凄まじいテクニック。もしかしたら今現在、日本の
代表的なミスリードメーカーは、真梨幸子かもしれない、とまで思った。

とにかく、最強のイヤミス作家入魂の一作
今年に入ってから3ヶ月に1作のペースでリリースが続いているのも嬉しい。
ただ、身体を壊さないように願います。真梨幸子作品が読めなくなっちゃたら、
もう楽しみが半分無くなっちゃうのと同じなので。

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