#仕事のやり方
ヒットメーカー・中山七里の新作はなんと金融ミステリー。
タイトルの「シャイロック」とは、ヴェニスの商人に登場する金貸しの名前で、
以前読んだ池井戸潤の作品でも表題となった元祖悪徳金融屋。さすが中山七里!
と感心したのは「渉外部」、つまり債権取立の現場を舞台にしていること。
このシチュエーション、他ではあまり見られないと思う。
一流の大学を卒業し、幹部候補生として順風満帆にメガバンクの営業畑を歩い
て来た男が、まさかの渉外部へ異動。出世コースから外れた、と落ち込みなが
らも、そこで“シャイロック”の異名を取る取り立てのエキスパートが上司とな
ってしまう。反発しながらもだんだんとこの上司に惹かれていく主人公だが、
ある日その上司が不慮の死を遂げてしまい・・・という内容。
リーマンショック前の杜撰な融資体勢はイヤミたっぷりに、その後の困難極ま
りない債権回収部分はリアリティ抜群に描かれているため、起承転結の流れが
解りやすく、のめり込んで読める。さらに著者の他作品とのコラボもひっそり
と実現しているため、ファンにはたまらない内容となっている。
金融系と言えばどうしても池井戸潤の一連の作品を思い浮かべてしまうのだが、
こちらにはまた違った「熱さ」がある。ビジネス系の小説がすきな人は一読し
ておくべき。続編及びシリーズ化、強く希望します!
・・・惜しむらくは、氏の代名詞とも言える特徴、週末付近でのどんでん返しが、
今回は中盤の段階でほぼ読めてしまった(^^;)こと。あからさまに怪しかった
からなぁ、真犯人(^^;)。