#文化系部活動
湊かなえ、待望の新作は名作『ブロードキャスト』の続編。
交通事故で陸上選手としての夢を絶たれ、やむなく放送部に所属した男子
高校生が、放送コンテスト「Jコン」で全国制覇を目指す物語。前作は
優勝にあと一歩及ばず、翌年のリベンジを誓うところで終わっていた。
今作は主人公と放送部の面々の、その後の物語である。
かつて“イヤミスの女王”と言われた湊かなえだが、最近はイヤミスを殆ど
頼りにしていない作品が多い。もちろん僕もイヤミスで湊かなえに入った
ので、最初は違和感があったのだが、脱イヤミス作品もなかなかに面白か
った、というのが湊かなえの凄いところ。その中でもいちばん共感したの
が3年前にリリースされた『ブロードキャスト』という青春モノであり、
個人的にはずっと続編を待っていた。
今回は最先端の文化系部活動の物語だと思っていたのだが、かなりレベル
の高い学園ミステリーに変貌。思春期の少年少女の心模様を描きながら、
ある日起こった事件の犯人を炙り出す、という構成。悔しいことに、僕は
最後まで犯人が解らなかった。いや、解らなかったというよりも、誰一人
犯人であって欲しく無い、という先入観を植え付けられた結果な気がする。
ということで、読み応え抜群の青春群像ミステリーであることは保証する。
誰が読んでも絶対に熱くなれる、とは思うのだけど、この単行本の為に書
き下ろされた「終章」があまりに切ない。不覚にも、ちょっと涙が出た。
・・・おそらく今後はこういうスタイルの小説が増えていく気がする。
この作品に関しては、今の騒動が【過去】になった時にもう一度読みたい。
せっかくの傑作なのだから。