#沖縄返還前夜
馳星周アンリミテッド。どうやら「みるくゆぅー」と読む模様。
コレも特に何も考えず、未読作品だったのでチョイスしたのだが、心の準
備もせずに読むべきではなかったかも。
第二次対戦終了後、米軍の占領下にあった沖縄。まもなく日本への返還、
という混迷の時期に、それぞれの思惑で動く沖縄人・米国人・日本人の間
を縦横無尽に泳ぎ回り、「自分のためだけ」に何かを成そうとするアナー
キストの物語。
この作品も間違いなく馳星周独特のノワールなのだが、返還直前の沖縄と
いう舞台設定が悉く磁場を狂わせる。流されるまま生きることしか許され
ないウチナンチューと呼ばれる沖縄人の悲哀、ベトナム戦争で身も心もボ
ロボロにされた米軍人のトラウマ。コレに全共闘の要素も絡んで来るのだ
から、カオス度合いが半端ではない。ある意味、氏お得意の歌舞伎町アン
ダーグラウンドよりも、よっぽどディープな世界が展開される。
さらにこの作品、単純に「長い」。上下巻に別れていたのでハナから覚悟
はしていたのだけど、物語の密度が濃いままでこの長さの読書に対応する
には、強靭な精神力が必要かと。下巻のことを考えると、良い意味で先が
思いやられる。
・・・ただ、上巻の最後半で展開される吐き気を催すような展開だけは勘弁
してもらいたい。僕はああいうのを割り切ることが出来ないんだよね、相
変わらず。