なんてカッコイイ力士なんだ･･･。
それが闘う千代の富士を最初に見た時の正直な感想だった。

千代の富士が登場するまでの大相撲は、大型力士中心の異形の世界、ハッ
キリ言ってしまえば“強いデブ”同士がその力強さを競う格闘技であった。
その中に突然現れた、筋骨隆々の身体と狼のような鋭い目つきの勝負師。
決して恵まれていたとは言えない体格を、筋力と努力で完全にカバー。
誰もが憧れたその闘う姿勢は、大相撲を「カッコイイ」というレベルまで
余裕で持って行った。

第58代横綱。ニックネームは“ウルフ”。生涯戦績1,045勝437敗159休。
肩の脱臼に悩まされながらも双葉山に迫る53連勝を達成。最後の土俵まで
狼の目を無くさなかった、偉大過ぎる横綱である。
最後の2番、貴花田戦・貴闘力戦を、僕は未だに忘れられずにいる。

千代の富士貢・享年61。
昭和の大横綱であり、稀代の格闘技者であった男が、あまりにも早く天に
召されてしまった。

あちらでは、ぜひ総合格闘技の舞台にも上がって欲しい。
相撲最強をいちばん叫ぶべき力士は、千代の富士を於いて他に居ない。
また必ず、どこかで。