これまた久しぶりの吉村達也作品。
系統的には情愛系のヒューマンホラーであり、この作家が非常に得意と
する分野。もちろん今回もタイトルから内容予想をした上で読んだのだ
が、またもや・・・。
10歳年上・バツイチの男と結婚した見た目だけ清楚系の今どきオンナが
主人公。この上なく優しく、家事全般を完璧にこなす旦那を得て、内心
ほくそ笑んでいた主人公が、あることをキッカケに旦那に疑問を抱く。
旦那の過去を調べ始めた主人公は、前妻との出会いで衝撃的な事実を知
ってしまう・・・といった内容。
キーワードはタイトルの「セカンド・ワイフ」。このどうにでも取れる
言葉を上手く利用した叙述トリック要素もあるヒューマンミステリーな
のだが、やっぱり少し落とし込みが甘いような気が。クライマックスに
入る直前の章でほぼ謎に気付いてしまうし、ハッキリ言えば必要の無い
キャラクターも何人か見受けられる。着眼点は決して悪く無いので、そ
のあたりを意識して補強していけば、もっと良い作品になった気がする。
ただ、悪いところばかりが目に付くワケでは無い。
文章に無駄が無く、思ったよりも短い物量であっという間に終わらせる
構成力は見事だし、読んでいて飽きたり疲れたりする事は無い。読むモ
ノに困った時に手を出しやすい、というのが僕の評価であり、おそらく
今後も吉村達也に手を出す気がする。これって結構なアドバンテージな
のではないだろうか?
ということで、新しい作家にチャレンジしたい人には選択肢の一つとし
てオススメ。ちょっとドロドロなヒューマンモノが好きな人、どうぞ!