湊かなえの新作。
純粋な小説としては、2年前の「ポイズンドーター・ホーリーマザー」以来。
あいだにボリュームのあるエッセイを2冊出しているとはいえ、これだけ期間が
空くのは珍しい。つまり、ファンとしては待望の作品なのだが・・・。
なんと、今回も“原点回帰”とされるイヤミス。
そもそも僕がイヤミスにハマったのは正しく湊かなえの「告白」があったから
であるから、女史がその手の作品を連発することになんの文句も無い。
しかし・・・。
今作に関しては、なんというか・・・。今ひとつ食い足りない感があった。
イジメに始まり、DVや近親相●、AV出演から殺人までいろいろな負の要素が
網羅されているのは初期からのファンである僕には嬉しいし、それらを繋いで
形成されるミステリーもかなりのレベルだと思う。実際読書中はかなりドキド
キし、湊マニアとして極上の時間を貰った。じゃあ何が悪いのかと言うと・・・。
おそらく、ラストの処理。
イヤミスならイヤミスらしく、最後まで救いようのない展開で全うして欲しか
った、と言ったら贅沢なのかなぁ・・・。
ミーニングのちゃんとあるタイトルや、ソレと真逆を行くデザインの装丁など、
気合い充分の新作ではあるだけに、この中途半端さがちょっと残念。もしかし
たら今の湊かなえに「圧倒的なイヤミス」を求めてはいけないのかも・・・。