#道
先日「G SPIRITS SPECIAL EDITION vol.1 アントニオ猪木」を入手。
10年前のMOOKで、これについては改めてちゃんと書きたいのだが、その中
に今や直木賞作家となった西加奈子のインタビューが掲載されていた。
西加奈子がプロレス好き、というのは周知の事実なのだけど、何故に世代の
全く違う猪木のMOOKに彼女が・・・?
・・・インタビューを読み込み、その後すぐに2冊の本を注文。そのうちの1冊
がこちらの作品となる。
大阪の下町を舞台としたヒューマンドラマ。
裕福では無いが、何故だか近所の人が集まりがちな家に住む中学生女子が主
人公。祖母・母・叔母・イトコに加え、2匹の猫、1匹の犬までが女性という
少しだけ特殊な家族と暮らす主人公のそばに、背の高い転校生男子が現れて
・・・という内容。
メインは主人公の日常とその心情描写なのだが、章の合間に異なった語り部
による独白が挿入される、という構成。タイムラインがはっきりせず、普通
ならとっちらかって解りにくい内容になってしまうのが常なのだが、幾つか
のキーワードで統一感を保っているのは見事。もちろん、何の関連性も見え
ない話はラストでキッチリ繋がる。
僕は「大阪弁の表記」が苦手で、以前に読んだ他の西加奈子作品でもちょっ
としたアレルギーを感じたのだが、この作品はすんなりと入ってきたどころ
か、ちょっとした心地よさすら感じた。不思議な世界観を有する唯一無二の
作品、とまで思う。
そして、アントニオ猪木という存在が非常に重要。何故に今までこの作品を
知らなかったのか、と自分を責めた(^^;)くらい。
この1冊だけでもかなりの完成度なのだが、【こうふく】は2冊で1作品、と
いうことらしい。このまま『こうふく あかの』を読むつもりである。