#BIG BANG
楽しみにしていたボクシングのビッグマッチ『Prime Video Boxing 11』。
今回は世界タイトル戦が2試合、そして那須川天心の世界前哨戦が1試合。
先に結論を書く。ボクシングのおもしろさが全て詰まった、すばらしい興行で
あった!
まずはWBA世界バンタム級選手権、王者の堤聖也に挑んだのは、元WBC世界
フライ級王者の比嘉大吾。そもそもこの二人は親友同士であり、妙な和やかさの
あるまま試合開始となった。
・・・いや、スゲェ。
正直、1Rから8Rまでの攻防だけでも神懸かった試合内容。偶然のバッティング
で負傷した王者・堤がかなり不利な状況ではあったが、恐ろしい精神力で対応。
比嘉も傷口狙いを躊躇しない。この段階で、今年のベストバウト!と思ったの
だが・・・。
9R、ダウンの応酬。
最初にダウンを奪った比嘉がそのまま勝ち切るかと思ったのだが、ラウンド内
で堤がダウンを奪い返す。何が彼らをそうさせたのか、皆目見当が付かない程
の削り合い。こんなに泥臭くて熱い試合、本当に久しぶりに観た。
判定の結果、ジャッジ全員がドローを付ける、という驚愕の結果。
堤はタイトル防衛を果たしたが、試合後のインタビューでも悔しさを隠さない。
対する比嘉は、判定が出ると潔く退場。最後の最後まですばらしい二人だった。
続いて那須川天心の世界前哨戦。対戦相手は武居由樹に敗れた前WBOバンタム
級世界王者で、井上尚弥との対戦経験もあるジェイソン・モロニー。天心が初
めて闘う「世界レベル」の選手である。
結果は10R判定3-0で天心の勝利。
この判定は物議を醸しているが、個人的にはギリギリ天心が勝利していたと思
う。でも、例えばこの試合がオーストラリアで行われていれば、モロニーが勝
っていてもおかしくなかった、とは思う。それだけ接戦であったのは間違い無
いのだけど、あのモロニーと10Rを闘い抜いた6戦目の選手、という存在、よく
考えれば恐ろしいと思う。
メインは“NEXT MONSTER”から“BIG BANG”に異名が変わったWBC世界バンタ
ム級王者の中谷潤人が、同級6位、メキシコのダビド・クエジャルの挑戦を受け
た。クエジャルは28戦28勝18KO、これまでダウンの経験は無く、中谷よりも
長身でリーチもやや長い。今のバンタム級では最強の挑戦者、という触れ込み
だったのだが・・・。
・・・呆然とした。
初回に二人がコンタクトした瞬間、実力差は明白に。中谷の佇まい、「強さ」
はもちろんだが、背筋が凍るような「怖さ」もある。3Rで魅せたコンビネーシ
ョンは正しく恐怖であり、テレビの前で完全に沈黙してしまった。
この段階で言うのは憚られるかもしれないが、敢えて。
・・・もしかしたら、いま日本でいちばん強いボクサーは中谷潤人なのでは??
怪物に引導を渡す選手が居るとすれば、もう中谷しか考えられない。一線を超
えたプロボクサーが二人も存在する時代を生きられて、僕は幸せだ。