#リアルな天才
▼イロモノの野望 / 男色ディーノ(Kindle版)
“DDTのアイコン”こと、男色ディーノの著作。
ディーノは3日後、DDTの後楽園ホール大会にて新日本プロレスの棚橋弘至との
シングルマッチに臨む。カード発表と同時にチケットがソールドアウトになった、
という、ある意味で「夢の対決」の前に、どうしても読んでおきたかった作品。
いわゆる「プロレス頭」の良さに於いて、ディーノは国内プロレスラーの中でも
1・2を争う天才。そもそもディーノがDDTに上がるきっかけになった試合とい
うのが、インディ団体で行われた『透明人間』との一騎打ち。この試合の完成度
に唸った高木三四郎がほぼ三顧の礼でDDTに迎え入れた、というまるで都市伝説
の様な事実。この作品のサブタイトルが『透明人間と戦ってわかった自分の商品
価値の上げ方』なのは、その“奇跡”に由来しているハズ。
“ゲイ”という取り扱い注意なキャラクターを20年に渡って演じ続け、そのキャラ
のまま“ここぞ!”という場面では絶対的なエースとしてファンの期待を一身に背
負って魅せる。ゲイキャラのままファンから絶対的な信頼を得ている、というの
は、考えてみればかなり凄いこと。そんな芸当はディーノ以外の誰にも出来ない、
と心から思う。
そしてディーノは、プロレスに於ける「物語」の作り方が圧倒的に上手い。
リング上で行われるのは”通常のディーノの試合”だが、試合に至るまでに自ら
の思想や過去の因縁などを解りやすくファンに伝え、期待を煽りまくる。プロ
レスの魅力が『プロセス』であることを誰よりも解っており、我々はディーノ
の掌から動くことが出来ない。こういうのを、普通に「天才」と呼ぶ。
そんな天才、男色ディーノは、文章でもやっぱり天才だった。
元々ゲーム系のフリーライターとして活動しており、その文章力には定評があ
ったのだが、1テーマで一冊を仕上げられると、その説得力は圧倒的。ディー
ノ本人はこの作品を『ビジネス書』としているのだが、そこに偽りは全く無い。
自らの経験を事例とし、他分野でソレを生かせる方法が懇切丁寧に記載されて
いるのだから、正直舌を巻いた。
僕は男色ディーノというプロレスラーを心から尊敬している。そして、それと
同じレベルで棚橋弘至というプロレスラーにも絶大な信用を置いている。その
2人が、遂にシングルで・・・。いやぁ、楽しみでしかない、本当に。