ルポ西成

#大阪アンダーグラウンド


▼ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活 / 國友公司(Kindle版)

「ルポ歌舞伎町」に衝撃を受け、さっそくデビュー作をチェック。
時系列で言えばこちらを先に読むべきだったのだけど・・・。

大学卒業後、就職活動を途中で放棄した作者・國友公司(^^;)。
フリーのルポライターとして生きて行くことを選択し、ほぼそのまま
大阪・西成ドヤ街への長期潜入取材を敢行。やっぱりこの人、どこ
かのネジが一本ハズレている気がする(^^;)。

西成、取り敢えずのイメージは『絶対に近づいてはならない場所』
この作品で解説される西成は正にそんな場所で、とにかく後ろ暗い
人間しか登場しない。さらに言うのなら、その殆どがいわゆる「ダ
メ人間」であり、完全に人生から転落した人間たちの吹きだまりで
ある、ということが非常によく解る。

國友氏の凄いところは、そんな西成の中で「飯場で働く」等の最低ラ
インをしっかり実践し、その経験を元にリアルな文章を書くこと。
このデビュー作を読むだけで彼が気合いの入ったルポライターである
ことが解るし、ノンフィクション作家に必須なスキル「優秀な観察者」
を、生まれながらにして持っている人だ、ということも理解出来る。

結果的に言えば、こちらを後に読んで良かったな、と。
西成で「流されない」ことを学んだおかげで、歌舞伎町住まいも問題
が無かった、と腑に落ちた。

とにかく注目の若手ノンフィクションライター
もう一つ著作があるようなので、早いうちにそちらも。

ルポ歌舞伎町

#新宿アンダーグラウンド


▼ルポ歌舞伎町 / 國友公司(Kindle版)

Kindle Unlimitedリコメンドにいきなり登場したノンフィクション
このところ社会派ハードボイルド系の小説ばかり読んでいた所為か?

作者の國友公司はルポライター。後で調べたところ、名門の筑波大学
に入学しつつも、後ろ暗いアルバイト東南アジアでの放浪に時間を
浪費し、卒業に費やした期間はなんと7年。作家デビュー作は大阪・
西成ドヤ街潜入ルポだと言うのだから、ちょっとヤバイ人(^^;)なの
かもしれない。

その西成の後に、作者が興味を持ったのがなんと新宿・歌舞伎町
一癖ありそうなヤクザマンションに自ら入居し、歌舞伎町とそこで生
活する人々を徹底的に観察。一歩間違えば自らがアチラの世界に取り
込まれそうな状況を、ギリギリのところで泳ぎ切っているのが凄い。

おもしろかったのは「思い出の抜け道」近辺で営業する怪しいお店
実態。基本は不法占拠であり、所有者もハッキリしないところで何年
にも渡って商売が成立しているのが凄いし、その中に“誰も踏み込めな
い場所”今も存在している、という事実。かつて香港に存在したあの
九龍城と同じか、それ以上にインパクトのある場所が、歌舞伎町にあ
る、というだけでかなりときめいてしまう。

個人的に歌舞伎町に多大なる思い入れのある僕としては、最高に入り
込める作品。こうなったら西成の方も読むしかないかな、うん。

全天竜人に告ぐ!

#お前ら全員4ね!


週刊少年ジャンプ・46号
WITCH WATCHに大変な展開があり、次号以降が非常に気になるのだけど、
取り敢えずはONE PIECEの件

今回はマジでいろいろあったので、完全にネタバレ注意で。
コミック派・アニメ派の皆さんはすぐさま退場。もしくはジャンプ読んで
からもう一度来ていただければ。

▼週刊少年ジャンプ(46) 2023年10/30号

タイトル『死んだ方がいい世界』
いや、もしかしたらワンピース史上でいちばん胸クソの悪い回かも(–X)。
どんな事情があるか知らないが、とにかく天竜人に殺意を覚える。特に、
↓↓の画像に赤丸を付けたクソ天竜人、火の点いたママのタバコを目に
押しつけてジュッといっても手を離さないくらいの極刑をお願いしたい。

まずは「老害」の一人、Jを完膚なきまで叩きのめすルフィが見たい!
いや、なんなら正義のために五老星を四老星にするくらいして欲しい。
エッグヘッド篇、スカッと終わってくれないと暴れるぞ、マジで(^^;)。

藻屑蟹

#山渓釣り


▼藻屑蟹 / 赤松利市 (Kindle版)

『鯖』に衝撃を受けたので、まずはUnlimited扱いになっている赤松利市
作品を物色したところ、ソレに該当したのがこの作品。

東日本大震災に被災し、多額の補助金を手に入れ、避難先で贅沢に過ご
避難民たちを横目で睨みつつ、これまでと全く代わり映えのしない生
活を余儀なくされる受け入れ先に住む中年期に差し掛かった男性。金に
対する欲望が最高潮に高まった時、幼なじみから原発関連の仕事を斡旋
されて・・・という内容。

東日本大震災に絡む、原発避難民とその受け入れ先住民たちの「闇」
部分にスポットが当てられており、物語は終始暗いトーンで進行する。
しかし、緊迫感が最初から最後まで一貫して保たれている所為で惹き
強く、読書中に全く飽きることが無いのが凄い。

この作品も「釣り」が重要な場面で描かれる。
今回は山渓・ヤマメの毛針釣り。この作家、本当に釣りが好きなんだろ
うなぁ、と感じた次第。

惜しむらくは、緊迫感を切らさずに続いた物語が、やや尻切れトンボ
ような状態で終わってしまっていること。もう少しだけエンディングに
凝って貰えれば、もっと満足出来たかもしれない。

あと1作Unlimited作品があるので、赤松利市強化月間は続行。
この迫力ある文章、ちょっと病みつきになるかも・・・。

#一本釣りミステリー


▼鯖 / 赤松利市 (Kindle版)

Kindle Unlimitedで発見、タイトル買いした作品。
赤松利市という作家はもちろん初めてなのだけど、高齢になってからデ
ビューした曰く付きの人物っぽい。この作品で長編デビューとのことだ
が、その当時は無職ホームレスだったとか。

醜悪な容姿にコンプレックスを持つ主人公の属する漁業船団雑賀衆
は、紀州雑賀崎発祥の一本釣り漁師たちの集まり。彼らの獲る魚、品質
は一級品だが、網を使った大量捕獲の漁には数で勝てず、漁協にも加盟
出来ない。船頭の買い上げた瀬戸内の無人島を拠点に、唯一の取引先で
ある料亭に収穫を卸し、細々と最低限の生活を余儀なくされている。
そんな彼らに、料亭の女将から大きな仕事の話が持ち込まれて・・・とい
う内容。

とにかく、時代から見放されたアウトローの集団「雑賀衆」のメンバー
が、全員恐ろしく個性的。どちらかと言えばの部分が強調されている
ので、憧れや共感を抱くことは出来ないが、その破滅的な生き方に妙な
魅力を感じる。特に痘痕顔女性恐怖症の主人公が小金を持ち、あから
さまに変わっていく様子は、やたら人間臭くて非常に良い。

残念ながらミステリーとしての構成はそれ程でも無く、結末は正直読め
てしまったのだが、ソレを補って余りあるレベルの濃密な人間ドラマ
赤松利市は他にも魅力的な煽り文の作品が多々あるので、片っ端から読
んでみようと思います。

・・・雑賀衆の持ってくるサバは美味いな、きっと。