個人的に2作目の矢樹純作品。
リコメンドで手に入れた「或る集落の●」がかなり面白かったので、他の作品
も読もう、という事で。「●」を除くと現在Kindleストアで入手出来る矢樹純
の小説は残り2つ。まずは「●」と同じ短編集から読んでみた。
全8篇からなるホラー短編集。
それぞれに繋がりがあるワケではなく、場所や時代設定等は様々。最近では珍
しい純粋な短編集であり、下手をすれば作品としてのまとまりに欠けてしまう
状況に陥りそうなのだが・・・。
共通しているのはどの篇も主人公は女性であることと、その主人公が「家族の
中の誰か」、つまり「かけがえのないあなた」に翻弄されるお話であること。
この設定が全8篇で一切のブレを見せないため、読後はちょっとした長編を
読み切ったくらいの充足感がある。
ホラーとしての「怖さ」はもう一級品の域。
淡々とした解説風の描写は薄気味悪さを募らせ、どの篇も一度は必ずゾワっ
と来る。ホラー系の小説はこれまで何作も読んできたが、こういう「真綿で
首を絞められる系」の怖さを矢継ぎ早で感じさせてくれる書き手はこれまで
居なかったかもしれない。
さらに驚いたのは、ミステリーとしてもかなり秀逸である、ということ。
単に怖いだけの話ではなく、ちょっとした仕掛けで全ての篇にオチを付けて
くるところがすばらしい。この種の作品なのに読後感がわりと爽やかなのは、
この部分の充実がその要因なのだと思う。
ホラー部分の怖さをキープしつつ、ミステリー部分を強化していけば、この
作家は最強のホラー&ミステリー作家になっちゃうかも。
少なくとも僕は完全にハマったし、小説が残り1作しか無いのが非常に不満
だったりする(^^;)。
今後は・・・。行っちゃうだろうなぁ、加藤山羊作品に(^^;)。