EYE OF THE WOLF

なんてカッコイイ力士なんだ・・・。
それが闘う千代の富士を最初に見た時の正直な感想だった。

千代の富士が登場するまでの大相撲は、大型力士中心の異形の世界、ハッ
キリ言ってしまえば“強いデブ”同士がその力強さを競う格闘技であった。
その中に突然現れた、筋骨隆々の身体のような鋭い目つきの勝負師。
決して恵まれていたとは言えない体格を、筋力努力で完全にカバー。
誰もが憧れたその闘う姿勢は、大相撲を「カッコイイ」というレベルまで
余裕で持って行った。

第58代横綱。ニックネームは“ウルフ”。生涯戦績1,045勝437敗159休。
肩の脱臼に悩まされながらも双葉山に迫る53連勝を達成。最後の土俵まで
狼の目を無くさなかった、偉大過ぎる横綱である。
最後の2番、貴花田戦・貴闘力戦を、僕は未だに忘れられずにいる。

千代の富士貢・享年61。
昭和の大横綱であり、稀代の格闘技者であった男が、あまりにも早く天に
召されてしまった。

あちらでは、ぜひ総合格闘技の舞台にも上がって欲しい。
相撲最強をいちばん叫ぶべき力士は、千代の富士を於いて他に居ない。
また必ず、どこかで。

アンマーとぼくら

▼アンマーとぼくら / 有川浩

待望と言って過言の無い、有川浩最新作
純粋な小説としては、2014年にリリースされた「キャロリング」以来だから、
どうしても期待値が高くなる。もちろん、僕もかなり期待して読んだ。

舞台は沖縄で、32歳の青年義理の母親と共に、亡き父の思い出の地・沖縄の
各所を巡る話。沖縄ローカルの人たちしか知らないようなとっておきの場所か
ら首里城のような王道観光ポイントまでが多岐に渡って紹介されている。

基本的に沖縄好きな僕ですらかなり反応出来る紀行文。おそらくコレは未だに
彼の地を踏んでいない人たちにも有効であり、ちょっとした指南書の役割を果
たす筈。よし、沖縄へ行こう!という人は一読してみるといいかもしれない。

ただね・・・。
僕と同様の有川浩のファンの人たちへ問いたいことがある。
・・・これ、面白かった?

帯には有川浩自身の言葉として「これは、現時点での最高傑作です」とある。
もし本人がそう思っているのであれば、それは彼女の過去の作品に対して凄く
失礼な気がする。ロードムービー的な手法もあざとさが先に立つし、女史の
同種の傑作である「旅猫リポート」のレベルには遠く及ばない。

作家本人の言葉に反論するのは正直遺憾だが、これまで読んで来た有川浩作品
の中では、最高にときめかなかった。レベルで言えば、デビュー作の「塩の街」
と同等くらい。ただし、アチラは有川浩の今の形が出来上がる前の作品だと考
えると、僕にとってはこの作品がいちばん・・・。

僕の読書スタイルが変わったのか、それとも有川浩が変わったのか?
今後もこの状態が続くとは思わないし、思いたくも無い。ただ、今は正直コレ
を最高傑作だとコメントする有川浩の精神状態が、本当に心配だ。

二子玉川・河川敷

東急田園都市線・二子玉川駅から見える多摩川河川敷エリアが前から気になっ
ていた。東京と神奈川の境にある河川敷なのに、かなり大胆な川遊びをしてい
る人たちを多く見掛ける。キャンプやバーベキューだけでなく、下手すれば
あの川を泳いでいる子どもたちまで。我が江戸川荒川も河川敷のレベルでは
決して多摩川に負けていないと思うのだが、とにかく二子玉の河川敷は楽しそ
うに見える。いつか途中下車してみたい、と思っていたのだけど・・・。

・・・行きました、本日。まぁ、仕事だったんだけど(^^;)。
近くで見ると、まるで楽園。陽射しが強く、通常なら難儀する屋外業務なのに、
川から吹き込む風が心地よく、思ったほど苦にならない。そして周囲の家族は
みんな本当に楽しそうで、つられてこちらまで楽しげな気分になる。

子どもたちが遊べる親水公園的なエリアまで完備。
地元にこよなく愛される場所なのがよく解るし、他のエリアの人たちが憧れる
のも本当に理解出来る。世田谷ってあまり良いイメージ無かったけど、こういう
場所があるのは正直羨ましいなぁ・・・。

いつか仕事抜きで再訪。
ただ、クルマで行くのはちょっと不便なところなので、その場合電車か・・・。
ビール飲んで川眺められるから、もちろんソレもアリなんだけど♪

CWC #03

「WWE CRUISERWEIGHT CLASSIC」、3週目。
今週のトーナメント初戦4試合は統一テーマ。名付けて「TECHNICAL DAY」
今回は順番付けやすい。今週も印象に残った試合順にて。

▼ 〇ザック・セイバーJr.(胴締めアームバー)タイソン・ダックス×

NOAHでイギリス代表・ザックのプロモーションのような試合。
いわゆる派手な展開一切無くこれは痛そう的なサブミッションの攻防に終始。
ただし、対戦相手となったカナダのタイソン・ダックスもいわゆるU系が好きそう
な動きで対応して見せる。ランカシャー vs UWF、という日本人が好きなタイプ
の試合だった。最後は説得力満点のアームバーでザックのタップアウト勝ち
ザックは結構上の方まで行きそうな気配大。

▼ 〇ブライアン・ケンドリック(拷問式フェイスロック)ラウル・メンドーサ×

ケンドリックレオナルド・スパンキーのリングネームでZERO1・新日本で活躍
した選手であり、元WWEスーパースター「落ちぶれた元スター」的なプロモで
悲壮感を醸し出す。対するはジンゾーの名前でNOAHに来日した事もあるメキシコ
ラウル・メンドーサ。この試合のみメンドーサのハイフライ系の要素も見えたの
だが、基本的にケンドリックの小ずるいテクニックとメンドーサのメヒコ流切り返
しが交錯する好試合。最後はケンドリックが意地のフェイスロックで勝利!

▼ 〇ドリュー・グラック(胴締めドラゴンスリーパー)ハーヴ・シーラ×

元CZW王者デスマッチファイターグラックが意外なテクニシャン振りを披露。
対するインドハーヴ・シーラも細身の割に当たりの強い打撃足関節で試合を
組み立てる。どちらもあまり予備知識の無い選手だったのだが、思わず手に汗
最後はレッグロックドラゴンスリーパーの掛け合いを制したグラックが勝利。
これもいい試合だった!

▼ 〇トニー・ニース(450°スプラッシュ)アンソニー・ベネット×

香港のホーホー・ルンに続き、またもや「ここに居てはいけない選手」が登場。
アンソニー・ベネットは見た目が面白い(スベッてるけど^^;)だけで、身体も
受身も基本的なテクニックも、一切が評価出来ない(^^;)。過去ドラゲーに参加
した実力者・ニースもこれでは気の毒。フィニッシュの450に入る前に、レフェ
リーに健康状態をチェックされる選手なんて初めて見たよ・・・。

というワケで、ベネット以外全員良かった3週目。
ただ、この試合内容って日本人以外にウケるのかどうか、それがちょっと心配。
来週は遂に一回戦ファイナル。大注目のリッチ・スワンジョニー・ガルガノ
登場する!! リッチの試合が超楽しみ♪

私が失敗した理由は

▼私が失敗した理由は / 真梨幸子

我が“教祖”こと、真梨幸子の最新作。
もちろん、今回も極上を更に極めたレベルザ・イヤミスである。

幸子様は僕にとってもう特別な作家であり、判官贔屓がどうしても出てしまうの
だが、冷静に分析してもその成長が新作が出る度に確認出来る現在進行形タイプ
凶悪な心情描写は昔から鋭かったのだが、現在はコレにレベルの高いミステリー
という要素が加わっており、そこから創り出される物語はスリリングなことこの
上無い。さらにリリースタイミングが非常に安定しており、そろそろあの悪意に
塗れたい、と感じる頃に必ず新作が出るのだから、マニア層の期待を絶対に裏切
らない。考えてみれば、とても凄い作家な気がする。

この自己啓発書のようなタイトルと装丁の作品も、もちろんその枠の中。
登場人物は誰も彼もが最悪、そして最低であり、救いようはまるで無い。ただ困っ
たことに、勘違いをし続けた人間がどんなサイアクな最後を迎えるのか?という、
これまた最低な興味を、僕は全く抑えることが出来ない。夢中になって読んでい
る途中で、ふとそういう下衆な自分が本当にイヤになったりもしてしまうのだが、
それでも読みたい、という衝動は治まらない。完全に突き抜けた、ある意味で
最高の作品である。

今回、珍しく真梨幸子は実在する作家の実在する作品に対し、総攻撃をかける。
糾弾された作家・作品とは誰で、何か? ・・・ソレを確認した時に、真梨幸子とい
う作家の恐ろしさが、否応無く解ると思う。

この世の誰が読んでも、サイアクで最高の悪意を感じられる筈。
幸子サマがブレない限り、この快進撃は当分続く。願わくば、末永く!