教誨

#モチーフ


▼教誨 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子の新作。長編としては『ミカエルの鼓動』以来。
主人公の一人は、自分の娘と近所の子どもを殺害し、死刑判決・執
を受けた女性。この女性のかなり遠縁に当たるもう一人の主人公
(♀)に、遺骨の引取依頼が。遺品の中にあったノートの「言葉」
に引っかかりを覚えた主人公は、彼女の隠した事実を探し始める・・・
という内容。

モチーフは2006年に起きた「秋田連続児童殺害事件」かと。
この事件、僕の中ではまだ記憶に新しく、容疑者の特徴的なビジュ
アルや彼女の於かれた状況、イジメが原因の壮絶な人生など、強烈
な印象が残っている。この作品内では、現実の事件の容疑者の生い
立ちをほぼ踏襲。実際には無期懲役となった主人公が死刑囚となっ
ており、そこに田舎の閉鎖的な状況を組み合わせている。救いがあ
るとするなら、この作品の主人公が、リアルよりもやや“毒”の抜け
た性格に描かれていることくらい。

・・・とにかく、重い
話が進むにつれて謎はどんどん明らかになっていくのだが、どんな
事情があるにせよ、幼い子どもを2人も殺した死刑囚にどうしても
共感が出来ない所為で、展開が進んでもどんよりした気分が全く晴
れない。コレが完全にフィクションである、ということは理解して
いるモノの、モチーフがモチーフなだけに・・・。

おかげで読むのが辛く、読了までかなりの時間を擁したのだが、と
にかく重く響く鈍痛のような感覚は心に残った。判断は難しいが、
少なくとも“重い”だけの作品では無いことだけは保証する。

相変わらず漢らしいな、この作家。

参考図書リリース!

#このミス #このマン


▼このミステリーがすごい!2023年版

▼このマンガがすごい!2023

年末に購入しておいた↑↑の“読書のための参考書”2冊
一応年明けにコレを読み込み、興味を持ったモノを購入して読みまく
るのが定番。今年も双方を興味深く読んだのだけど・・・。

残念ながらこのミス側にピンとくる感じの作品がちょっと少なかった
かもしれない。ベスト10にランクインしてる作品はどれも「本格」
匂いがプンプンし、ちょっと敷居が高い気が(^^;)。実はエセミステリ
ーマニアなんだよね、僕(^^;)。気になったのは5位『プリンシバル』
戦後ミステリーらしいから、コレは購入しよう、後で。

そしてこのマンの方は大豊作。オトコ篇のベスト10作品は持っていな
いモノは全て買ったし、オンナ篇も数作手に入れた。しばらくマンガ
読むのに忙しくなりそうな気配。1位『光が死んだ夏』6位『これ描
いて死ね』は既にオススメ!

今年はブクログ蔵書数4桁に到達したい。読書にも注力だ!

シン・日本プロレス

#RINGS


▼シン・日本プロレス / 前田日明・片田直久(Kindle版)

どうやら電子書籍のみでリリースされている作品。
“新格闘王”こと前田日明に対するインタビューを書籍化したモノで、
前半は新日本プロレス-UWF時代、後半はRINGS-OUTSIDER時代
中心に構成されている。前半と後半で内容的に被る部分があるのは
若干腑に落ちないところ。

これまでいろんなところで目にしてきた『前田日明の言葉』をまと
めたような作品。故に内容はほぼ知っている話の焼き直しになって
しまうのだが、残念ながらに僕はコレに共感することが出来なかった

・・・個人的な意見だが、前田日明からはなんとしてでも自己を正当化
しよう、という意識を感じる。だから、いつも前田は被害者であり、
悲劇のヒーローを装うのだが、当時を知っているファンの側からする
と、それはとんでもない間違いだと思う。

僕らが心血を注いでいた新生UWFが潰れたのは、前田の人望の無さ
が大きな原因だったと思う。更に言えば、新生UWF時代の前田の試
は緊張感に欠けるモノばかりで、下からの突き上げに対してモノ
を言えるレベルの選手ではなかった。だから、新生UWFが解散した
後の僕はUインターの熱狂的なファンになったし、船木鈴木が在籍
した藤原組も心の底から応援出来た。でも前田のリングスは・・・とい
う感じ。それが今もずっと続いている。

だからこの本の内容に共感出来ないのは当然なのだが、それでも前田
ブレの無さだけは認める。過去から現在に至るまで、話の内容やニ
ュアンスは全く変わらず一貫している。そういう前田日明から離れら
れない人が居るのも、凄く理解できる。

だから前田ファンには確実に楽しめる作品なのは間違い無い。
僕の好きだった前田日明は、出戻った新日本を解雇された段階で終わ
っているから、その中に入れないのはしょうがないんだけど・・・。

いまさら翼といわれても

#継続希望


▼いまさら翼といわれても / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信古典部シリーズ第六弾
この後に企画本があり、そちらでも短編が読めるらしいのだが、一応
古典部シリーズとしては今のところ最終巻。こちらは全6篇から成る
短編集である。

古典部シリーズは短編よりも長編の方が好みなのだが、同じく短編集
であった前々作「遠まわりする雛」に比べると、一話々々が「重い」
千反田える苦悩折木奉太郎過去、そしてずっとブレのない福部
里志物語は、どれも興味深いものばかり。読む手は止まらず、久し
ぶりに半日ほどで速読してしまった。

圧巻だったのは、伊原摩耶花が主役の「わたしたちの伝説の一冊」
前作まででは描かれなかった“摩耶花が漫研を辞めた理由”がしっかり
物語になっており、今後に希望を感じずにいられないラストには、ち
ょっとときめいた。

この本の刊行は2016年であり、そこから約6年が経過。次がいつに
なるのか解らないが、出来れば二度目のカンヤ祭を中心に描いて欲し
いところ。古典部シリーズと過ごす3ヶ月、楽しかった!

ふたりの距離の概算

#マラソン大会


▼ふたりの距離の概算 / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信古典部シリーズ第五弾
時間は少し動き、めでたく高校2年生へ進級した古典部の面々。
2年になるとやらなければならないのは、もちろん新入生の勧誘(^^;)。
いろいろあってようやく1人の新入生女子を確保した(かに見えた)
古典部だが、彼女は程なくして入部の取りやめを宣言。折木奉太郎は、
その原因の究明に動く。なんと、マラソン大会の最中に・・・という感じ。

約20kmを走る間に事情聴取→推理→原因究明の全てが行われる、と
いう面白くも凄まじい展開。普通なら完全に無理がありそうな設定だ
が、そのストーリーが綺麗に流れていく様は清々しい上に圧巻である。

いつものように誰も死なないミステリーだが、妙な緊迫感に溢れた
物語は、そこらへんのハードボイルド系に勝るとも劣らない。実際、
これまで読んだシリーズの中では、いちばん面白かった

・・・う〜ん、あと2冊か(^^;)。
といっても、最後の1冊は企画モノなので、次が実質最後。ちょっと
寂しくなってきたかも。