俺たちの箱根駅伝(上)

#正月の当事者たち


俺たちの箱根駅伝(上) / 池井戸潤(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒットメーカー・池井戸潤、約1年半ぶりの新作
テーマはなんと「箱根駅伝」陸上競技モノとしては、ランニングシュー
ズの開発をテーマとした『陸王』があり、今回も企業再生モノかと思った。
ところが・・・。

物語の軸は明確に二つ
一つは箱根駅伝本戦への出場を逃した各大学の代表者たちによる混成チーム
「関東学生連合」のメンバーの、箱根への“関わり方”“拘り”について、熱く
展開される部分。そして二つ目は、お正月の定番として箱根駅伝を中継する、
テレビ局のクルーたち鬼気迫る仕事ぶりを描く部分である。

これまでの池井戸潤を考えるに、二つ目はあってもおかしくない内容。
しかし、一つ目に関しては完全に虚を突かれた。まさか“箱根駅伝のお荷物”
ないしは“思い出作り”と揶揄されている学生連合チームにスポットを当て、
そこに意味を持たせた上で痛快な展開を構築されるとは・・・。

実際のところ、内容はこれまでにも増してやたら熱い。ランナーたち全員の、
そしてテレビマンたち全員の意地信念には心を打たれたし、なんなら感動
涙も流した。まだ上巻なのに、だ(^^;)。

そしてこの物語、フィクションであるのは間違い無いのだが、実際に存在す
る大学名がバンバン出てくるし、箱根駅伝中継の歴史等に事実が多く含まれ
ている。その辺りを留意しながら読むと、更に楽しさが増す、と思う。

ココに登場するテレビ局は大日テレビ。もちろんN●Vがモデルなのだが、
彼らの箱根に掛ける情熱に感服した。実際の●TVも、ドラマとか作らずに
スポーツ中継だけやってればいいのに、とか思った。ナイショだけど。

教祖の作りかた

#イヤミスの教祖 #ミスリードメーカー


教祖の作りかた / 真梨幸子(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真梨幸子新作
珍しく前作から約1年ぶりという長いインターバルを経て、ようやくリリー
スされた待望の一冊タイトルからしてもう刺激的、読む前から大好物の
予感がヒシヒシあったのだが・・・。

・・・凄い
これはもう、真梨幸子の集大成、という意欲作かと。
お得意のイヤミステイストを全編に溢れさせている上に、都市伝説・新興
宗教・YouTuber・バラバラ殺人・同窓会不倫など、諸々の要素をバランス
良く見事にブレンド。その上で、語り部を複数人用意した上でミスリード
を誘う、という最強の展開。薄気味悪くなるくらいのレベルのイヤミスなの
にも関わらず、メチャクチャ「ミステリーを読んだ!」という気分になる。

「日本人ほど神を信じたがる国民はいません」は、核心を突いた名言
幸子サマの作品で語られることで、説得力さえ増すのだから・・・。

でもまぁ、僕は大丈夫だと思う。
何故って?だってもう、神はこの世に居ないんだから。

Ms.Ruth Stiles Gannett

#エルマー


米国の児童文学作家ルース・スタイルス・ガネットさんが今月11日に
逝去した模様。享年100

名著『エルマーのぼうけん』三部作は、おそらく僕が最初に読んだ本
だから、僕のドラゴンの最初のイメージは、水色と黄色のストライプに、
丸っこい顔赤いツノと手、だった。

もし最初がこの作品でなかったら、今のようなファンタジー好きの僕
居ない、と断言できる。それくらい、エルマーの世界にはワクワクさせ
て貰った。

こんなに長い間、生きていてくれてどうもありがとうございます。
アチラではどうか、唯一無二の素敵なイラストを描いていただいたお母様
にもお礼をお伝えいただければ。

エルマーとりゅうは、きっとこれから先何百年も、たくさんの子どもたち
を魅了すると思います。その様子を、楽しく観ていてください。
また必ず、どこかで。

ストラングラー 死刑囚の逆転

#冤罪証明


ストラングラー 死刑囚の逆転 / 佐藤青南(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐藤青南・ストラングラーシリーズ第四弾
一応こちらがシリーズ最終作であり、これで物語は完結する。4冊、という
のはある意味で丁度良い分量決着の付け方は・・・。

前作のラスト、「幻覚が見える」という精神疾患の中、衝動的に性犯罪者を
殺してしまった刑事・簑島。自らの罪を認め、簑島たちとのコンタクトを絶
っていた死刑囚・明石も、簑島のピンチにチームメンバーとの面会を再開。
罪を犯したまま逃亡中の簑島の居場所を、またもや鋭く推理して魅せる。
一方、オリジナル・ストラングラーの正体を絞り込んだ捜査一課の二人の刑
は、犯人とおぼしき男を追い詰める。とかろが・・・という展開。

さすがに最終巻だけあり、簑島の逃亡劇にのみフォーカスした構成。正義感
の強い簑島が逃亡した理由やその居所を推理する明石の名探偵ぶりは鮮やか
な上に理がかなっており、思わず唸ってしまったほど。

そして、ストラングラー事件の真相についても目からウロコ。どんでん返し
と言うよりも、「何故ソレに気付かなかった?」という悔しさを覚えるトリ
ックで、納得せざるを得ない。ミステリーとしての完成度は高く、シリーズ
としても読み応え満点のすばらしい内容だった。

このシリーズ、オススメ。
ちょっと歯ごたえのある本格ミステリーが好きな人、サクッと4冊読めてし
まうと思うので是非!

ストラングラー 死刑囚の悔恨

#冤罪証明


ストラングラー 死刑囚の悔恨 / 佐藤青南(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐藤青南・ストラングラーシリーズ第三弾
取り敢えずセール中に購入したのはこの第三弾まで。どうやら次巻でクライ
マックスを迎える模様。思った通り、今作で大きな展開が・・・。

前作で死刑囚・明石秘密・・・死刑判決を受けた件は冤罪っぽいが、それと
は別件で殺人を犯していた・・・を知ってしまった刑事・簑島。簑島は明石と
距離を置き、明石も自分のを意識、後悔の念を抱き始める。そんな折、
ストラングラーの仕業と思われるデリヘル嬢殺人事件が。簑島は捜査線上
に浮かんだ男のアリバイを確認、この事件では“シロ”とされた容疑者だが、
コイツがとんでもない男で・・・という感じでストーリーは展開する。

完全に心が壊れた刑事・簑島が、元同僚の幻影に惑わされ、遂に大きな罪
を犯してしまう第三巻。シリーズは全四作とのことだが、一冊ごとにしっ
かり『起・承・転・結』を盛り込んで来るところがニクい。シリーズ最終
作で罪を犯した簑島はどう動くのか、そして明石擁護チームと全てを知っ
てしまった捜査一課の2名がどう対応するのか、非常に気になる。
・・・まぁ買いました最終巻(^^;)。

ただ・・・。
大きなストーリーの流れ満点だが、この巻で起こる事件に関してはもう
薄ら寒いを通り越して気持ちが悪くなるくらい劣悪。あまりのグロさで一
瞬読むのを中断してしまった程。耐性の無い人には厳しいかもしれない。

取り敢えずここまで来てしまえば後はクライマックスまで付き合う他無い。
そして1人、どう考えても怪しい人物が居るのだが・・・。
あんまり酷い事件が起こらないといいなぁ、マジで(^^;)。