裏家電

#量販店


▼裏家電 / 嶋戸悠祐(Kindle版)

Kindle Unlimited × 講談社フェア作品からのチョイス。
三才ブックスとか晋遊社とかから出てるちょっと怪しいMOOKと勘違い
しそうなタイトルだが、なんとコレはミステリー小説嶋戸悠祐という
作家は当然初めて。

舞台は地方によくありがちな大規模家電量販店
地域密着型『街の電器屋さん』の一人娘、事故で仕事の出来なくなった
父親の店を再開するため、高校卒業後に量販店での修行を決意。業界で
No.1のカスタマーサービスを謳う量販に入社したが、実際の店の方向性
は真逆の利益至上主義上司係長と真っ向から対立しながらも、顧客
第一主義を貫こうとする。一方、その係長の方にも大きな問題があって
・・・という内容。

まず、量販という難しいを素材でちゃんとミステリーを組み上げた技術
は素直に凄い、と思う。冒頭で主役だと思われたキャラが早々に脱落し
たのには唖然としたが、店舗運営の実態が明らかになって行くに連れて
緊張感が溢れてくる。トリック荒唐無稽ではあるのだが、納得出来な
い程では無い。はぁ、そう来たか!と思わず感心してしまった。

ただまぁ・・・。
2022年リリースの作品と考えると、さすがに状況設定リアリティが
無い気がする。僕は『街の電器屋さん』を否定しないし、今も時折お世
話になっているのだが、おおよそは“工事”が絡む時。例えば照明のスイ
ッチがバカになった、とか、コンセントから火花が吹いて使えなくなっ
た、とか。通常の家電商品は量販やネットでとにかく価格が安く、自分
の希望にあった機能があるモノを自らチョイスする。当然、販売店に対
してサポートは殆ど求めない

この状況は最近に始まった事ではなく、30年以上前からそうしている。
ここ最近は小売りを中心とした『街の電器屋さん』を殆ど見掛けないこ
とを考えると、状況設定にちょっと無理があった気がする。

単純に、風変わりなミステリーとして楽しむのが
心情描写は見事なレベルなので、機会があれば他の作品も読んでみたい。
他の著作を調べると、どうやら得意なのはイヤミスらしいんだけど・・・。

講談社×Unlimited

#Kindle


新刊書籍及びマンガ、そしてプロレス本を数冊読み終わってしまったので、
いつものようにKindle Unlimited繋ぎを探そうとしていたら、ちょっと
興味深いフェアの開催を発見。

『講談社の小説・ラノベ1,300点以上読み放題』
取り敢えず信頼の講談社、最近ではUnlimited扱いの書籍類にも有名作家
作品が増えてきたので、コレはかなりのチャンス。とにかく1,300冊のうち、
前半1/3程度までを確認し、10冊くらいを選んでみた。

最近は多少だがラノベへの耐性も出来てきたので、面白そうなタイトル
モノがあれば読んでみてもいいかも。まぁ、今のところ無いんだけど(^^;)。

新日本プロレス50年物語③

#奇跡


▼新日本プロレス50年物語 第3巻 V字回復期 /  岡本佑介

新日本プロレス50周年記念本3冊目・最終巻
現役東スポ記者にして帝国の広報官(^^;)、の岡本記者の執筆となる。
タイムラインは2009年から2022年。つい最近までの記録、なのだが。

・・・もしかすると、僕はこの時代の新日本プロレスがいちばん好きなのか
もしれない、と思った。暗黒のゼロ年代、K-1やPRIDEなどの格闘技興行
に押され、極一部の選手を除いてそういう場で「新日本の強さ」を証明す
ることも出来ない。プロレス内部に目を向けてみても、当時のファンから
絶大な支持を受けていた三沢率いるNOAHに煮え湯を呑まされ続ける。
ああ、もう新日本は終わるんだな、とか思っていたのだけど・・・。

新日本には、棚橋弘至中邑真輔が居た。
特に全方位でひたむきに頑張る棚橋の姿はあまりにも印象的。少ない観客
を前に全力ファイトを魅せ、どんなに辛くとも笑顔を絶やさない。そんな
絶望的とも言える勝負から逃げない棚橋が気になり、僕はまた会場に足を
運ぶようになった。そこから表題通り、奇跡のV字回復を成し遂げてしま
った新日本プロレス。もし、この時期に棚橋弘至という存在が無かったら、
僕はプロレス自体から離れていた可能性すらある。もの凄く失礼な言い方
かもしれないが、棚橋の出現で「強さ」を必要としないプロレスも全然ア
リになった。

僕にとってこの3巻は、非常に優秀で努力を怠らない誇るべき「息子」
ちの成功譚棚橋・中邑・真壁の3選手には、僕をプロレスに留めてくれ
てありがとう、と心からお礼を言いたい。後藤はまぁ・・・。

そして、岡本記者表現力にも脱帽。
こんなドラマチックな文章、書け!と言われて書けるモノでは無い、と
思う。読後感はちょっとした長編小説。それも、傑作のレベルである。

全三巻、それぞれ読み応えタップリでした。
何年かしたら読み返しちゃうだろうなぁ、きっと。

物語の種

#コロナ短編


▼物語の種 / 有川ひろ

前作から約2年、ようやく発売された有川ひろ新作は、なんとコンセ
プト短編集。読者・関係者から物語の「種」となる投稿を募り、ソレを
元に短編を一つ書く、という形式。ボリュームはそこそこ、全10篇

僕が最初に有川に触れたのはやはり短編集の『阪急電車』。あの時は
ベタ甘な恋愛小説がここまで心に刺さるのか、という新鮮な衝撃を受け
たのだが・・・。

何篇か引っかかる話はあった。
全ての篇で共通しているのが“コロナ禍”であり、コレを生かした物語と
してはかなり秀逸、だとは思う。さらに幾つかでフィーチャーされてお
り、なんとなく今作のテーマにもなっていしまっているちょっと苦手な
『宝塚』に関しても、特に嫌悪感は無い。しかし、阪急電車の時に感じ
凄まじい熱量があったのかと言うと・・・。

・・・でも!
中盤の一篇「ゴールデンパイナップル」だけで、僕の中の“有川ひろ”
いう特別な作家のスタンスはしっかり保たれたのだから凄い。あまりに
響いたので、下記に一部引用。

・・・修学旅行や学校行事の機会も同じだ。仮につまらなかったとしても、
つまらなかったと言えるのはそれを経験したから言えることだ。小説や
漫画、映画やドラマ、エンタメ作品の中で当たり前の様にアイコンとし
て登場するそれらの行事を「知らない」世代が既にいるのだ。そして、
その損失は永遠に取り返しがつかない・・・

この部分を読んだだけで、本当に胸が詰まった
コロナ禍をここまで端的に表現して魅せた作家は他にちょっと覚えが無
い上に、実際に起こったいろいろなことがフラッシュバックしてしまう。
展開に派手さの無い短編集、と思っていたけど、しっかり心を抉って
れた有川ひろに、心から感謝したい。

さてそうなると、次は『長編』でしょ?
2年は待ちたくないぞ、今度は(^^;)。

神仏

#尊敬出来ない老人たち


週刊少年ジャンプ・28号
ONE PIECEはいろいろあって今回の1086話を以て4週間の長期休載に入る。
そういう意味で重要な回なのだけど、よりによって・・・。

今回はちょっと気をつけてみたけど、やっぱりいつものようにネタバレしちゃ
う可能性ありなので、コミック派とかアニメ派の人たちはここから先を読まな
いでくださいませ。

▼週刊少年ジャンプ(28) 2023年 6/26号

タイトル『五老星』
ONE PIECEファンの世界では主に「無能」、ないしは「老害」と表現される
ことの多い五老星全員のフルネームが判明すると同時に、これまで謎でしか
なかったイム様の正体までうっすら(^^;)と判明。今週も喋ったイム様だが、
その言葉には本気で殺意を覚えた(–X)。このくだらないヤツラスボスなの
かなぁ・・・。ちょっとイヤなんですけど(–X)。

ラスト付近ではREDでキーワードとなったフィガーランド家の人物が登場し
たりしたのだが、個人的にいちばん驚いたのは新たに登場したセラフィム
ドフラミンゴモリア、そしてクロコダイルのセラフィムが登場したワケ
だが、やっぱりクロコダイルのセラフィムが・・・。

こんなところで休載に入ってしまうとは、あまりに厳しい(^^;)。
さすがに気になっちゃうなぁ、先が。四週間はキツいぞ、本当に(^^;)。