クドリャフカの順番

#文化祭


▼クドリャフカの順番 / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信古典部シリーズ第三弾
三作目で古典部は遂にカンヤ祭(いわゆる文化祭)本番へ突入。
製作された文集「氷菓」もギリギリだが無事に完成、後はカンヤ祭で
販売するのみ。ところが、発注ミスが原因で絶望的な量の在庫を抱え
てしまうことに。一方、カンヤ祭では【十文字】を名乗る何物かが、
犯行声明付きの連続窃盗事件(まぁ、冗談で済むレベル)を繰り返す。
古典部のメンバーはこの犯人を突き止めることで、在庫をなんとかし
よう、と躍起になるのだが・・・という内容。

・・・うむ、凄く良い
まず、高校の文化祭という舞台設定にノスタルジックな何かを感じる
し、各種の文化系クラブが程よいバランスで躍動するのもおもしろい。
個人的に高校の文化祭は3年分をバンドに費やしてしまったので、他の
出展をしっかり観ることが出来ず、ちょっとした後悔があったりした。
ここで描かれるカンヤ祭はかなりの規模の文化祭であり、その空気感
が充分に感じられたのが妙に嬉しかったりした。

ミステリー部分はちょっと難解ではあったが、最終的に充分納得出来
る人間ドラマにしっかり昇華。正直、その後が気にならないでも無い
のだけど(^^;)。

さすが人気シリーズ、しっかり読ませてくれる。あと4冊!

愚者のエンドロール

#ピンチヒッター


▼愚者のエンドロール / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信・古典部シリーズ第二弾
先月のKindleストアのキャンペーンに乗っかって7冊をまとめ買いした
古典部シリーズだが、1ヶ月も間を空けてようやく2冊目読破。こりゃ
半年はかかるな、終わるまでに(^^;)。

物語はカンヤ祭(いわゆる文化祭)の準備が佳境に差し掛かる頃。
文集「氷菓」の製作に余念の無い古典部・・・のハズが、脚本家の疾患で
中途半端になってしまった上級生のクラス出展であるミステリー映画
「結末」に関する推理を依頼されてしまう。省エネが信条の主人公だが、
上級生の一言にほだされて、映画の結末を探り出す・・・という内容。

殺人事件こそ起こるモノの、それは映像の中での出来事。なので緊迫感
や緊張感の類は殆ど感じないのだが、そんな世界をしっかりミステリー
として成立させているのが見事。純粋に「推理」を楽しめる構成、僕は
けしてキライでは無い。ラストもしっかり二段落ちになっており、読了
後は思わず「お〜!」という感嘆の声を上げてしまった。

古典部シリーズ、思った通りなかなかの手応え
まだ5冊ある、というのはちょっと幸せかも知れない。

足跡

#絶望と希望


▼足跡 / KENTA

全日本プロレスNOAHを経て、単身米国へ渡りWWE(NXT)のリング
でファイト、現在は新日本プロレスで活躍するKENTAの自伝。G1の頃
からリング上でPRに余念の無かった本(^^;)をようやく入手した次第。

NOAHで頭角を現し始めた頃のKENTAは、最高に魅力的な選手だった。
プロレスラーとしては小兵、さらにムキムキの筋肉質では無いにも関わ
らず、2mを超える高山善廣を相手にしても小さく見えない。闘争心を
剥き出しにして闘うその姿は、ある意味プロレスラーの理想。こういう
選手が新日本に居ないのが本当に悔しかった覚えがある。

この自伝ではKENTAの誕生から少年期・青年期、プロレスラーになっ
てからの各団体でのキャリアがバランス良く語られているのだが、のめ
り込んで読めたのはやっぱりWWE入団まで。米国でも大活躍を期待され
ていたのに、度重なる大怪我で欠場を繰り返す。結局はRAWにもSDにも
登場出来ないまま退団してしまったのは、やっぱり本人にとっても思い
出したくないキャリア、ある意味黒歴史だったことが伝わって来た。
あそこでプロレスラーのKENTAは、半分終わってしまった、と判断せざ
るを得ない。

だから、このタイミングでの自伝の出版はちょっと早すぎた感。
正直、今のKENTAに「あの頃」を望むのは酷、というのは解っているが、
今の新日本で明確になりつつある『新しいKENTA』というキャラクター
は化ける可能性があると思うし、それを成功させて初めてKENTA自信の
【足跡】が刻める気が。そこまで待ってからこの作品が出ていたら、も
っとハッピーな気分になった、と僕は思う。

しっかり足跡を残し、その後にぜひこの続きを。
KENTAならきっとそれが出来るし、それをやらなければならない選手
と思うので。

作家刑事毒島の嘲笑

#世界一性格の悪い男


▼作家刑事毒島の嘲笑 / 中山七里(Kindle版)

いつぞやのセールで特価になっていたので購入しておいた電子書籍は、
中山七里・作家刑事毒島の新作。この問題作、どうやらシリーズ化され
たらしく、ファンとしては嬉しい限り。

作家刑事二足のわらじを履く「最強の皮肉屋」こと毒島が、今回
タッグを組むのはなんと公安の刑事。この設定の段階でもうニヤニヤが
止まらない(^^;)。だって主人公の性格上、左とか右とかの思想に対し
ての皮肉が溢れるのは読む前から歴然。案の定、気持ちいいくらい的確
な「皮肉」・・・いや、「悪口」(^^;)が、山の様に飛び出した。

そして今回、かなり久しぶりに【どんでん返しの帝王】にやられた。
とにかくシニカルでおもしろいから、コレがミステリーだということを
途中まで完全に忘れていたのが敗因(^^;)。最初からちゃんとミステリー
として読んでいれば、勝ち目があったかもしれない。

今回の毒島、最終的にかなりカッコイイ!
完全にダークヒーロー、ミステリー界の鈴木みのるだな、毒島。

日本昭和トンデモVHS大全

#ウェアハウス


▼日本昭和トンデモVHS大全 / V.A

久しぶりのタツミムック・懐かし大全シリーズのテーマは『VHS』
昭和期、誰もが所持していた映像機器であるVHSビデオデッキで観ることの
できる【ビデオソフト】を特集した本。

ブルーレイはもちろん、DVDも無かった時代、家庭で映画を観ようと思った
ら、VHSのビデオをレンタル店から借りて観る、の一択。当時はビデオソフ
トを「買う」なんて、価格的にとんでもない話で、それでもいろんな映像が
観たい、という欲は抑えられず(^^;)、だから、一時期は10店舗近くのレンタ
ルビデオ屋会員カードを所持していた覚えが。

この本では、レンタルビデオ全盛期のソフトを特集しているのだが、その中
「大作」と呼ばれるモノは一切無い(^^;)。劇場公開なんて絶対にされて
いないB級・C級「ビデオ専用作品」ばかりが網羅され、そのボリュームに
圧倒された。

僕は自分のことを相当の映像マニアだと思っていたが、この本に載っている
作品を一切観たことが無いのにビックリ(^^;)。ただし、タイトルジャケッ
には妙に覚えがあるから、よっぽど店先で目立ってたんだろうなぁ、と。

さすがに今は観れないんだろうなぁ、ビデオ専用作品。
「血の終末 暴獣のいけにえ」「レディ・ニンジャ セクシー武芸帳」とか、
観られるモンなら観たいんですけど(^^;)。