有田哲平のプロレス哲学

#「プロレスと生きる」ということ


▼純度100%!有田哲平のプロレス哲学 / 有田哲平

くりーむしちゅー・有田哲平【プロレス】に関するエッセイ集
有田は最高のお笑い芸人であると同時に、Amazonプライムで『有田と週
刊プロレスと』を全4シーズン、その後に同じ枠で『有田プロレスインタ
ーナショナル』、そして現在ではYouTubeで『有田哲平のプロレス噺・
お前有田だろ!』というバラエティ番組を展開中。その膨大な知識芯の
通った考え方は、今現在のプロレスファン界(?)に於いて、一番の論客
と言える人だと思う。

そんな有田が、全4章に渡って“プロレスから発生する哲学”を語る一冊。
単純に凄いのは、高度な文章力および応用力。僕はいわゆるすれっからし
のプロレスファンで、多少専門的なことが書いてあっても普通に付いて行
けるのだが、おそらくこれまでプロレスを観たことが無い人でも普通にの
めりこめる内容。地頭が良くないと、こういう文章は書けない気が。

そして驚いたことに、全ての項目が日常生活に応用出来る、という事実。
特に『裏切り』の部分が秀逸。裏切り行為を「EVILタイプ」「ブロディ
タイプ」に分類し、その使い分けが重要、との記述は、正に目から鱗
大袈裟でなく生きる上で役に立つ言葉が、この本には溢れている。

こういう人とプロレスの話をしながら呑んだら、きっと楽しいだろうなぁ、
と。近いうちにYouTubeのメンバーシップLiveにも参加してみようかな・・・。

ハヤブサ消防団

#田舎暮らしミステリー


▼ハヤブサ消防団 / 池井戸潤(Kindle版)

およそ10ヶ月ぶりの池井戸潤新作。
池井戸潤と言えばビジネス系小説の第一人者、というイメージがあるのだが、
今回はその『括り』から完全に外れた異色作

ひょんなことから亡き父の故郷に移住することになった中堅ミステリ作家
自然に恵まれ、景観も良い土地への引っ越しは功を奏し、執筆活動も好調。
田舎ならではの慣習にもしっかり順応し、自治会にも参加、遂には消防団
への入団も果たし、田舎暮らしは大成功。しかし、その平和な土地に連続
放火事件が起こり・・・という内容。

これまで、どんな作品でも必ず【お仕事】がフィーチャーされ、ソレがす
ばらしいスパイスになる、というのが池井戸作品の真骨頂。だが、この作
品はそういう要素がほぼ排除され、純度の高いピュア・ミステリーが展開
されている。この事実に、本当に舌を巻いた

そして、今このタイミングで「新興宗教」を素材に出来た、という強運
この作品の連載時はもちろんまだあの事件は起こっていないハズなので、
計算されたモノ、という事はまず無い。こんな偶然を当然のように起こせ
るほど『持っている』作家なんだろうなぁ、きっと。

文章量は多く、ちゃんとした長編だけど、読み応えはバッチリ。
ミステリーに振り切った池井戸潤もカッコいいぞ、マジで!

この音とまれ!㉗

#熱血琴マンガ


▼この音とまれ!㉗ / アミュー

今年の5月にアニメの第一期を完全視聴した後、周回すること約50回(^^;)。
結局、遂に全国大会進出を果たした時瀬高校箏曲部その後が気になり過ぎ
て、14巻以降の電子書籍まとめ買いする始末(^^;)。

・・・で、ついこないだ最新の27巻がリリースされたワケだが。
本当にいろいろあった時瀬の面々が、ようやく総文祭(全国大会)の行われ
北海道へ上陸。殆どの参加校から敵視されながら(24-26巻参照)、とに
かく開会式に参加する、というところまでを描いた、多分クライマックス
なるエピソードのオープニング

正直言うと、この後の展開が若干読めない。
いちばんハッピーなのはもちろん全国制覇だけど、それだと少し出来すぎ
気が。だからと言って、他校が優勝する、というのも違和感が有りすぎる。
完全に時瀬に魅了されちゃっている僕は、当然全力で応援するのは間違い無
いのだが、【勝つ→連載終了】or【負ける→主要メンツ2人欠いてリベンジ】
の2択を迫られているようで、ちょっとキツい・・・。

しかしまぁ、単行本の冊数を単純計算すれば、28巻が出ればアニメの二期が
見えてくる。おそらく全40巻近くの大作になるのは間違い無いと思うので、
気長に二期を待とうかと。・・・全国の内容も超気になるけど♪

引きこもりでポンコツだった私が女子プロレスのアイコンになるまで

#「成長」の見本


▼引きこもりでポンコツだった私が女子プロレスのアイコンになるまで
/ 岩谷麻優(Kindle版)

スターダム所属の「女子プロレスのアイコン」岩谷麻優自叙伝
何故だかKindle Unlimitedになっていたので、せっかくだから読んでみよう、
ということで。

岩谷はスターダムの一期生であり、旗揚げから同団体に所属し続けているの
はもう彼女一人。デビュー当時の岩谷、控えめに言ってもかなり酷い(^^;)。
いや、極端な話、良いところを探す作業すら難しく、無理に言えば「スタイ
ルが良い」くらい。こりゃあ長続きしないだろうなぁ、という選手だった。

ところが、宝城カイリ・紫雷イオと並び、『スリーダム』と呼ばれるように
なってから様子が変わってくる。対戦相手の技は全て受け、その上で逆転
て魅せる。攻めはハッキリと厳しく、単純な打撃技なのにやたら痛そう(^^;)。
気が付いたら、しっかり団体のエースが勤まる選手になっていた。

重要なのは、その頃から「容姿」も数段グレードアップして来たこと。
髪型やメイクもあると思うが、何よりもプロレスに対する”自信”が彼女を
キレイにしたんじゃないかと。カイリもイオもスターダムから去って行った
が、「麻優さえいればいい!」というファンもたくさん出来た。

そんな麻優の自叙伝は、『等身大の岩谷麻優』がギッシリ詰まった一冊。
内容的にはファンブックの域を出ていないが、さすがに麻優ファン以外の人
がこの本を読むとも思えない(^^;)ので、この構成で正解だと思う。

誤解を恐れずに言うと、文体からも溢れ出る素直さ・バカっぽさ(^^;)こそ
岩谷麻優の魅力。なるべく長く、現役を続けて欲しいなぁ・・・。
・・・あと、タイトル長ぇ(^^;)。

天職は、声優。

#「始まり」を創った人


▼天職は、声優。 / 日高のり子(Kindle版)

レジェンド声優日高のり子さんの自叙伝
通常、作家さんやアーティスト、プロレスラーなど、僕はリスペクトする人
たちについて書くときは、あえて敬称を付けないのだけど、今回だけはちょ
っと勘弁していただきたいので最初に宣言。

子役でデビューした後、アイドル歌手を経て、自らが「天職」と言う”声優”
に辿り着いた日高さん。大袈裟で無く日高さんは、今現在の声優という仕事
の構造自体を変革した偉人。声優という業界は【日高のり子以前・以降】
分断されている、と僕は思っている。

日高さんが『タッチ』朝倉南を演じ、そのクオリティを示した日から、
声優は皆の憧れの仕事になった。今なら確実に動員の見込める声優イベント
ショーとして成立させたのは、日高さんがアイドル時代からの経験をしっ
かり応用したからであり、彼女はその方法論を惜しげも無く他の声優さんた
ちに伝授した。この行動が無かったら、おそらく声優という仕事は、今でも
職人たちの世界のママだった気さえする。

この本での日高さんは、自らのアイドル時代をかなり卑下して書いているが、
それだけはとんでもない間違い、と否定させていただく。あの頃から日高さ
んの笑顔は、同時期に活躍したアイドルたち・・・松田聖子・河合奈保子・坂上
とし恵・浜田朱里など・・・としっかり肩を並べており、歌唱力という点では
彼女らを上回る部分が確実にあった。残念ながら爆発的に売れることは無か
ったけど、それは単なる「運」。日高さんは、ちゃんとしたアイドルだった。

そんな彼女の半生が、彼女の優しさ・大らかさの滲み出る文章で綴られた、
とてもステキな一冊。こういう作品を世に出すことで、まだまだ日高さんの
ファンは増えていく、と思います。

・・・そしてあの時から、僕はず〜っと日高のり子信奉者(^^;)。
大物なのにけして気取らず、誰に対しても笑顔を向けてくれる日高さんを、
僕は心の底からリスペクトしています!

↓↓ちなみに日高さんのセリフでいちばん好きなもの!何度も泣いた!