テレビはプロレスから始まった

#昭和大衆史


▼テレビはプロレスから始まった / 福留崇広

プロレス関連の名著を立て続けにリリースし続けている福留崇広氏の
新作は、「プロレスのテレビ中継」、特に日本テレビで放映されてい
日本プロレス・全日本プロレスの中継にフォーカスされた作品。
サブタイトルは「全日本プロレス中継を作ったテレビマンたち」

今でも戦後復興ドキュメンタリー等を見ると、力道山シャープ兄弟
の試合を観るために街頭テレビに群がる多くの人たちの様子が確認で
きるほど、終戦後の大衆カルチャーとして認識されているプロレスの
テレビ中継。僕らの世代が虜になった怪物番組フォーマットが、ど
のような流れで構築されたのか、が、克明に記録されている。

基本新日派である僕は、あまり日本テレビのプロレス中継に思い入れ
を持っていないのだが、それでも『恩知らず』『イカ天』でインパ
クトを残した若林健治アナウンサー、『ジャストミート!』で一世を
風靡した福澤朗アナウンサーのインタビューは興味深かったし、何よ
りもストーリーテラーとなった原章プロデューサーの談話には思わず
唸るモノがあった。

福留さんの著作、いつも膨大で緻密な取材があったことが窺えるが、
それでも単なる【資料】に成り下がらず、しっかりとメッセージを感
じられるのある【作品】になっているのが凄い。今後どのようなネタ
でドキュメンタリーを作ってくれるのか、大いに期待したいと思う。

プロレスファンはもちろん、現役のテレビマン昭和カルチャーに目
の無い人にもオススメ。すっげぇおもしろいです、コレ。

クドリャフカの順番

#文化祭


▼クドリャフカの順番 / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信古典部シリーズ第三弾
三作目で古典部は遂にカンヤ祭(いわゆる文化祭)本番へ突入。
製作された文集「氷菓」もギリギリだが無事に完成、後はカンヤ祭で
販売するのみ。ところが、発注ミスが原因で絶望的な量の在庫を抱え
てしまうことに。一方、カンヤ祭では【十文字】を名乗る何物かが、
犯行声明付きの連続窃盗事件(まぁ、冗談で済むレベル)を繰り返す。
古典部のメンバーはこの犯人を突き止めることで、在庫をなんとかし
よう、と躍起になるのだが・・・という内容。

・・・うむ、凄く良い
まず、高校の文化祭という舞台設定にノスタルジックな何かを感じる
し、各種の文化系クラブが程よいバランスで躍動するのもおもしろい。
個人的に高校の文化祭は3年分をバンドに費やしてしまったので、他の
出展をしっかり観ることが出来ず、ちょっとした後悔があったりした。
ここで描かれるカンヤ祭はかなりの規模の文化祭であり、その空気感
が充分に感じられたのが妙に嬉しかったりした。

ミステリー部分はちょっと難解ではあったが、最終的に充分納得出来
る人間ドラマにしっかり昇華。正直、その後が気にならないでも無い
のだけど(^^;)。

さすが人気シリーズ、しっかり読ませてくれる。あと4冊!

愚者のエンドロール

#ピンチヒッター


▼愚者のエンドロール / 米澤穂信(Kindle版)

米澤穂信・古典部シリーズ第二弾
先月のKindleストアのキャンペーンに乗っかって7冊をまとめ買いした
古典部シリーズだが、1ヶ月も間を空けてようやく2冊目読破。こりゃ
半年はかかるな、終わるまでに(^^;)。

物語はカンヤ祭(いわゆる文化祭)の準備が佳境に差し掛かる頃。
文集「氷菓」の製作に余念の無い古典部・・・のハズが、脚本家の疾患で
中途半端になってしまった上級生のクラス出展であるミステリー映画
「結末」に関する推理を依頼されてしまう。省エネが信条の主人公だが、
上級生の一言にほだされて、映画の結末を探り出す・・・という内容。

殺人事件こそ起こるモノの、それは映像の中での出来事。なので緊迫感
や緊張感の類は殆ど感じないのだが、そんな世界をしっかりミステリー
として成立させているのが見事。純粋に「推理」を楽しめる構成、僕は
けしてキライでは無い。ラストもしっかり二段落ちになっており、読了
後は思わず「お〜!」という感嘆の声を上げてしまった。

古典部シリーズ、思った通りなかなかの手応え
まだ5冊ある、というのはちょっと幸せかも知れない。

足跡

#絶望と希望


▼足跡 / KENTA

全日本プロレスNOAHを経て、単身米国へ渡りWWE(NXT)のリング
でファイト、現在は新日本プロレスで活躍するKENTAの自伝。G1の頃
からリング上でPRに余念の無かった本(^^;)をようやく入手した次第。

NOAHで頭角を現し始めた頃のKENTAは、最高に魅力的な選手だった。
プロレスラーとしては小兵、さらにムキムキの筋肉質では無いにも関わ
らず、2mを超える高山善廣を相手にしても小さく見えない。闘争心を
剥き出しにして闘うその姿は、ある意味プロレスラーの理想。こういう
選手が新日本に居ないのが本当に悔しかった覚えがある。

この自伝ではKENTAの誕生から少年期・青年期、プロレスラーになっ
てからの各団体でのキャリアがバランス良く語られているのだが、のめ
り込んで読めたのはやっぱりWWE入団まで。米国でも大活躍を期待され
ていたのに、度重なる大怪我で欠場を繰り返す。結局はRAWにもSDにも
登場出来ないまま退団してしまったのは、やっぱり本人にとっても思い
出したくないキャリア、ある意味黒歴史だったことが伝わって来た。
あそこでプロレスラーのKENTAは、半分終わってしまった、と判断せざ
るを得ない。

だから、このタイミングでの自伝の出版はちょっと早すぎた感。
正直、今のKENTAに「あの頃」を望むのは酷、というのは解っているが、
今の新日本で明確になりつつある『新しいKENTA』というキャラクター
は化ける可能性があると思うし、それを成功させて初めてKENTA自信の
【足跡】が刻める気が。そこまで待ってからこの作品が出ていたら、も
っとハッピーな気分になった、と僕は思う。

しっかり足跡を残し、その後にぜひこの続きを。
KENTAならきっとそれが出来るし、それをやらなければならない選手
と思うので。

作家刑事毒島の嘲笑

#世界一性格の悪い男


▼作家刑事毒島の嘲笑 / 中山七里(Kindle版)

いつぞやのセールで特価になっていたので購入しておいた電子書籍は、
中山七里・作家刑事毒島の新作。この問題作、どうやらシリーズ化され
たらしく、ファンとしては嬉しい限り。

作家刑事二足のわらじを履く「最強の皮肉屋」こと毒島が、今回
タッグを組むのはなんと公安の刑事。この設定の段階でもうニヤニヤが
止まらない(^^;)。だって主人公の性格上、左とか右とかの思想に対し
ての皮肉が溢れるのは読む前から歴然。案の定、気持ちいいくらい的確
な「皮肉」・・・いや、「悪口」(^^;)が、山の様に飛び出した。

そして今回、かなり久しぶりに【どんでん返しの帝王】にやられた。
とにかくシニカルでおもしろいから、コレがミステリーだということを
途中まで完全に忘れていたのが敗因(^^;)。最初からちゃんとミステリー
として読んでいれば、勝ち目があったかもしれない。

今回の毒島、最終的にかなりカッコイイ!
完全にダークヒーロー、ミステリー界の鈴木みのるだな、毒島。