まりも日記

#猫生


▼まりも日記 / 真梨幸子(Kindle版)

何故だかリリースを知らなかった真梨幸子の新作。
これまで各所で発表された短編を集めた一冊で、こういうのはおおよそ
の場合で寄せ集め感がいっぱいのお手軽本になりがちなのだが、この作
品はやっぱりちょっと・・・いや、全然違った。

全6篇から成るエピソードの共通アイテムは「猫」と「猫バカ」。
それぞれが基本独立した短編なのだが、合間に【閑話】を書き下ろすこ
とでしっかり統一感を出しているのが凄い。

リアル世界の幸子サマが、まりもさん・モナミさんという名前の2匹の
ブリティッシュショートヘアを溺愛しているのはマニアの間では有名な
話であり、それにまつわるエッセイも一冊刊行されている。そんな幸子
サマだから「猫」の話はお手のモノ。イヤミス全開の猫話はどれも秀逸
で、相変わらずコチラを奈落の底に叩き落としてくれる。

・・・正直、最初は猫エッセイ第二弾かと思って読んでいたのだが、途中
でそうでないことに気付いて驚愕。そして最近お得意の【リピート記述】
が非常に効果的。前半で読んだモノと寸分違わぬ文章がもう一度登場し
てきた時は、盛大にニヤニヤさせていただいた。

よろしければ幸子サマのブログでマリモナミの姿をチェックして欲しい。
あの美麗な2匹から、こんな凶悪な物語を思いつく才能、心の底から凄い
と思いますよ、ええ。

毒島刑事最後の事件

#世界一性格の悪い男


▼毒島刑事最後の事件 / 中山七里(Kindle版)

以前レビューした中山七里「作家刑事毒島」の前日譚。
検挙率No.1だけど、性格に著しく難のある刑事・毒島が、作家に転身す
る直前、最後に扱った事件に関するエピソード。

超の付く「皮肉屋」である毒島だが、刑事時代もソレは全く変わらず。
被疑者を追い詰め、最速で自供を取ってしまうテクニックは読んでいる
だけで薄ら寒くなるくらい恐ろしい話術であることが解る。

おもしろいのは、刑事時代には若干の【正義感】が垣間見えること。
本当に起こったら問題になりそうなラストも、毒島なりの正義感が見え
隠れするため、それなりに共感度が高い。

そして今回の被疑者全員に共通するワードが『勘違い』(^^;)。
いわゆる「オレはまだ本気出してないだけ」の典型のような人たちが多
々登場するのがおもしろい。ただし、自分に置き換えるのは避けました。
そうすると情けなくて死にたくなってくる(^^;)ので。

・・・やっぱり孤高の存在なんだなぁ、毒島さん(^^;)。
絶対に友だち居ないよ、この人(^^;)。

証言初代タイガーマスク

#黄金の虎


▼証言初代タイガーマスク 40年目の真実 / V.A

お馴染みの宝島「証言」シリーズ。
なんだかんだで証言シリーズは全て読んじゃっているのだが、今回の題
材は他で散々いじくり回された感のある“初代タイガーマスク”。宝島が
コレをどう処理するか、注目していたのだけど・・・。

証言者は佐山聡本人の他に、高田延彦、藤原喜明、新間寿、グラン浜田、
藤波辰爾、山崎一夫、藤原敏男、佐山聖斗の8人。いわゆる「佐山本」
の常連は藤原・新間・山崎の3名くらいで、高田、浜田、そして藤波の
語る佐山の話は非常に新鮮。特に自分で「佐山に喰われた」と語る藤波
の談話は、実に興味深い「証言」となっているように思う。

惜しむらくは、各人の語る内容がやはり【新日本プロレス】の時代に偏
っていること。第一次UWFや修斗、UFOあたりの佐山についての証言が
もう少しあれば、証言シリーズ屈指の傑作になったかもしれない。

現在、健康状態がけして良くなさそうな佐山聡だが、やって欲しいこと
がまだまだある。プロレス・格闘技史上最高の『天才』は、絶対に長生
きしなければならないし、もう一度リングに立つ必要もあると思う。

タイガーマスクに人生を変えられた人は、たくさん居るんですよ、ええ。

ヒポクラテスの悔恨

#法医学


▼ヒポクラテスの悔恨 / 中山七里(Kindle版)

昨年初の長編がリリースされた中山七里・ヒポクラテスシリーズ。
今回はかなり短いスパンでの新作。これまでのシリーズ作品と同様に、連作
短編形式に戻っている。

中山七里と言えば、どんでん返しの帝王とされる作家だが、今回は正にソレ
の真骨頂。全5篇の短編は、どれも確実にどんでん返しが盛り込まれ、一篇
を読み終わる度に「ああ、中山七里を読んでるなぁ」と感じる。こういう部
分で快感を演出できるのは、おそらくこの帝王以外に居ないと思う。

今回はメインキャストの2人、女性法医学者の栂野真琴と、埼玉県警捜査一
課の刑事、古手川和也が息の合った名コンビぶりを披露。早く付き合っちゃ
えばいいのに、と思っているのは、キャシー先生だけでは無いと思う(^^;)。

ちなみに、冒頭で貼られた伏線は最後の篇でしっかり回収されるのだけど、
そこの部分で盛大にニヤリと出来るのがこの作品最大のポイントかと。
WOWOWの実写ドラマも、コレを原案に新作を作ってくれるといいんだけ
どなぁ・・・。

伝説のパッチギ王

#原爆頭突き


▼自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 / 大木金太郎(著)太刀川正樹(訳)

大木金太郎に関する書籍、2冊目は大木自身の筆による自伝。
韓国日刊スポーツという新聞で連載されていた記事をまとめたモノで、
その日本語訳がコチラ。韓国版を見ていないのでなんとも言えないが、
おそらく装丁などは日本オリジナルだと思われる。

誤解を恐れずに書くのなら、この作品には【間違い】が多々ある。
例えば、力道山没時に奪取した、とされるWWA世界タッグタイトルに関
しては、まだ世界王座になる前のUSタッグ選手権であるし、米国で当時
NWA王者のルー・テーズに善戦の上惜敗した、というのも嘘。実際には
テーズにボコボコにされてレフェリーストップとなった、というのが本
当のところらしい。

その他の試合記録や時系列もかなりあやふやだし、師匠の力道山を必要
以上に美化されていたりするのだが、韓国での大木の立場を考えると、
話に多少の尾ひれが付くのもしょうがないかと。全盛期の大木は正に
「韓国の力道山」であり、国民的英雄。その頃の大木を知る韓国のオー
ルドファンに、やや血生臭い真実を無理に知らせる必要は無い気がする。

ただ、『キム・イル 大木金太郎』というイチプロレスラーの自伝で、
第二次大戦後の韓国の歩みが、ある程度把握できてしまうのは凄いこと。
少なくとも僕の中の大木金太郎は、アントニオ猪木とプロレス史に残る
死闘を展開してくれた名選手であり、その事実に対するリスペクトは、
今後一生消えない。

しかし、大木の他にはストロングマシン2号の力抜山くらしか知ってい
る選手が居ないのに、黎明期の韓国プロレス史は本当に興味深い。
取り敢えず予習は完璧。今後続いていく昭和プロレスマガジンの連載記
事、心の底から楽しめそう。