ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人

#This is the Mystery!


▼ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 / 東野圭吾

11月末日に発売されていた東野圭吾新作
実は発売日近くに買い、その日から読んではいたのだが、ギターの練習(^^;)
に時間を取られ、珍しくロングラン読書になってしまった次第。

久しぶりに「王道」と言えるミステリー
絶対的な【探偵】役が存在し、ソレに翻弄されながらも一生懸命に動きつつ、
語り部をこなす【助手】役が居る。誤解を恐れずに言えば、シャーロック・
ホームズ的、非常にトラディショナルなミステリー構成なのだが、それらを
現代的なアイテムに見事にアダプト。この手法は正に「絶妙」、怪しい人間
が何人も出てくるのだが、僕のスキルでは最後まで全く犯人が解らない
久しぶりに「ミステリー」を堪能させていただいた。

何よりも主人公が魅力的。
設定「ラスベガスでも評判を呼んだ元マジシャン」で、ケレン味たっぷり
のいかがわしくもクレバーな男。捜査過程で時折マジックを仕掛けるのだが、
その描写はまるで目の前でマジックを見ているかのような臨場感。もしかし
たら、東野センセには今マジックブームが来ているのかもしれない、とか思
った。

ある意味で東野圭吾の最も魅力的な部分が詰まった【ザ・ミステリー】
気合いの入ったミステリーが読みたい人は、是非ご一読いただきたい。

・・・シリーズ化、あるかも。
この一作で終わらせるには勿体ないキャラクターが少なくとも1人は居るし。

U.W.F.外伝

#さまよえる格闘家 #リアル範馬刃牙


▼U.W.F.外伝 / 平直行(Kindle版)

名作「グラップラー刃牙」の主人公、範馬刃牙モデルとなった格闘家、
平直行自伝。タイトルに「UWF」の3文字があるが、平はUWFに在籍した
時期は無い。これは売れ行きのためにUWFが付いたんだ、と勘ぐっていたの
だが・・・。

僕は一貫して「さまよえる格闘家」と呼ばれた平直行のファンだった。
シュートボクシング格闘技オリンピックRINGS実験リーグなどの主要な
試合はもちろん、バトラーツプロレスをする姿もこの目で観た。どんなル
ールの試合に出ても、必ず独創的ヒリヒリした試合を魅せてくれる、あの
当時では珍しい「プロフェッショナル」な格闘家であった。

あの平直行がプロレス、それもUWF大ファンであった、というのは、正直
この本を読んで初めて知った。しかし、当時をよく考えてみれば、平は公の
場でプロレスを腐すような発言を一切しなかったし、プロレスラーとしてリ
ングに上がっているときも一朝一夕では絶対に出来ないキレイな「受け身」
を見せていた。僕のようなプロレスを入口に格闘技観戦に入った人たちを惹
き付けたのは当たり前だった、ということ。

タイトルに「UWF」の三文字のある本を何冊も読んできたが、お世辞抜きに
それらの中でいちばんおもしろかった。紛れもなく平直行にしか書くことが
出来ない「外伝」であり、タイトルにこの3文字は絶対に必要である

創世記の「格闘技」に興味のある人は是非。すばらしいです、コレ。

昭和プロレスを語ろう!

#昭和プロレス


▼昭和プロレスを語ろう! / 小佐野影浩・二宮清純

ブックレビューはしばらくプロレス本が続くかもしれません(^^;)。
品川駅構内の本屋にフラッと立ち寄った時に見つけた新書小佐野影浩とは
ご存じ週刊ゴング元編集長の小佐野さんで、二宮清純とは気合いの入った
スポーツライターとして有名な二宮さん。そんな2人が、昭和プロレスをネタ
に対談。こりゃあおもしろそう!ということで。

・・・いや、2人ともちょっと肩の力が抜けすぎかも(^^;)。
時代は力道山時代からリアルな昭和の終わりまでを網羅しているのだが、特
に目新しい真実も無ければ暴露も無い、下手すればちょっと残念な内容
ただ、そんな2人のリズム妙に心地よく、知っている話でも気分良く読めて
しまったのが不思議。

個人的に小佐野さんの上田馬之助への評価がそれほど高くなかったのが意外。
後は懐かしいガイジンレスラーたちのエピソードにほっこりさせて貰った。

この2人には、どうせなら「平成前半のプロレス」も語って欲しいところ。
新日本の暗黒期くらいまでの時代なら、両名とも語れる何かがありそうな気
がするので。

聖女か悪女

#イヤミスの教祖


▼聖女か悪女 / 真梨幸子(Kindle版)

真梨幸子の新作。
前作の「縄文」から約半年、相変わらずリリースのペースがコンスタント

カリスマブロガーが結婚パーティーの最中に倒れ、植物状態に。同じ頃、
四谷の高級マンションで8体の惨殺死体が発見される。2つの事件の発生
と共に、過去のある事件との関連性が浮かび上がり・・・という内容。

・・・このところ新境地の続いていた幸子サマだが、今作ではピュアなイヤ
ミスに見事に帰還。いや、イヤミスに「ピュア」があるかどうかは定かで
無い(^^;)のだが、コレは真梨幸子らしい悪意に満ち溢れた、ある意味スト
レートな作品。真梨幸子中毒者としては、非常に嬉しい内容だった。

こういうご時世だから、変わらぬ信念を突きつけてくれる作品には本当に
救われる。真梨幸子が変わらないでいてくれる事実に感謝したい。

ちなみにこの作品、禁書となっているマルキ・ド・サド「美徳の不幸」
へのオマージュらしい。現代イヤミスの教祖に影響を与えた作品であるの
なら、ぜひ読んでみたいのだが、選集全4冊は厳しいかなぁ(^^;)。

忘れじの外国人レスラー伝

#DECADE


▼忘れじの外国人レスラー伝 / 斎藤文彦

フミ・サイトーこと、斎藤文彦の新刊ノンフィクション。
新書でリリースされるプロレス本、というのは最近ではあまり無かった気
がする。書店で見掛けたのではなく、Amazonのリコメンドで購入。

登場するのは10人ガイジンプロレスラー。羅列すると、
“神様”カール・ゴッチ、“白覆面の魔王”ザ・デストロイヤー、“大巨人”
ンドレ・ザ・ジャイアント、“人間風車”ビル・ロビンソン、“爆弾小僧”
イナマイト・キッド、“人間魚雷”テリー・ゴディ、“殺人医師”スティーブ
・ウィリアムス、“刺青獣”クラッシャー・バンバン・ビガロ、“皇帝戦士”
ビッグバン・ベイダー、“暴走戦士”ホーク・ウォリアー。
10人の共通項は「故人である」ということ。

この10人にはそれぞれ大いなる思い入れがある。であるからこそ、淡々と
描かれる各人の「終わりと始まり」は、びっくりするくらいスッとコチラ
に入ってくる。彼らがリングで闘う姿は今も鮮明。フミさんが書いている
通り、ファンが思いを馳せているウチはずっと彼らは生きている、と僕も
思う。

極めて冷静な文体だが、行間から滲み出る愛情を誰もが感じる筈。
プロレスとかそういうのは関係無く、フミ・サイトーのような文章は僕の
理想。こういう文章を書ける人になりたいなぁ・・・。