虚の王

#渋谷ノワール


▼虚の王 / 馳星周(Kindle版)

読むべき本がまもなくリリース、というタイミングで、繋ぎとしてチョイ
スしたのは定番・馳星周作品。これまで読んだ多くの馳作品と同様、善人
が一人も出てこないザ・ノワール

舞台は渋谷。主人公はかつて伝説のチーマーとして渋谷に君臨しながら、
現在は末端のヤクザでシャブの売人に身を落とした男。渋谷で高校生の集
団が売春を組織化していることに気付き、コレを乗っ取ろうとするのだが、
そこには得体の知れないリーダーが居て・・・という内容。

いわゆるネオ・ブランク・ジェネレーション世代の恐ろしさを描くのが狙
いなのだと思う。渋谷を根城にしている連中は昔からヤバいヤツが多かっ
たが、その「ヤバさ」極限まで誇張した内容。自分さえ良ければ平気で
仲間を裏切り、なんならカンタンに人を殺すのに、心にダメージを一切受
けない、という、完全なるサイコパスが登場してくるのが凄い。

例えば代表作の「不夜城」にも恐ろしい連中が多々登場するが、彼らは確
実に【理由】があって悪に染まっていた。しかし、この作品の「暗」を担
っているキャラには明確な理由がほぼ見えない。それ故に、底の知れない
恐ろしさが溢れ、連続して読むことが出来なかった。

馳作品の読後感の悪さは定評があるが、コレは更に一段階上の極悪作品
こういうのが大好物の僕でもちょっと引いたので、さすがに万人にオスス
メというワケには行かないかなぁ・・・。

ギラギラ幸福論 黒の章

#世界一性格の悪い男


▼ギラギラ幸福論 黒の章 / 鈴木みのる(Kindle版)

【白の章】から続く鈴木みのるインタビュー集
2019年から先の話題かと思いきや、これまでの書籍でカバーしきれなか
った「KAMINOGE」のインタビューをまとめたモノらしい。従って年代は
多岐に渡っている。

続きモノを期待していたのでちょっと残念ではあったのだが、新生UWF
藤原組パンクラス時代の話が出てくるところがポイント。昔のことをあ
まり喋らない鈴木だが、ただ懐かしさに訴えるのではなく、しっかり近年
の動きと絡めたエピソードにしていることに思わず感心してしまった。

ここ2〜3年の新日本プロレスは、しっかりと新陳代謝が進んでおり、僕と
同年代の選手は皆「窓際」に追いやられている。功労者と言って過言の無
永田・天山・小島あたりも基本は前座であり、それがやや寂しかったり
するのだが、鈴木だけは違う。今もしっかりタイトル戦線に絡むし、一度
は外されたG1クライマックスにも再び出場している。こうなったら鈴木が
どこまで第一線で活躍出来るか、最後まで見届けたいと思う。

諦めちゃいけないんだよな、本当は・・・。解ってはいるんだけど・・・。

ギラギラ幸福論 白の章

#世界一性格の悪い男


▼ギラギラ幸福論 白の章 / 鈴木みのる(Kindle版)

名著「プロレスで〈自由〉になる方法」続編
こちらも雑誌「KAMINOGE」の連載をまとめたモノで、時期的には著者の
鈴木みのるがNOAHのリングを去って新日本に戻って来た2018年頃の話題
が中心となっている。

鈴木みのるの口調は明らかに皮肉に満ちており、普通の人が読んだ場合は
けして気持ちの良い表現では無い気がする。誤解を恐れずに言うと、多く
の人が「お前何様?」的な感覚を持つと思うのだが、鈴木みのるという男
をずっと観て来た我々は全く文句が言えない。いや、もちろん鼻に付く発
言は多々あるのだけど、それでもそれらを完全に否定することが出来ない。

とにかく鈴木みのる、本人はけして周囲にそう言われたくないだろうけど、
間違い無く「頑張っている」。この世には僕を含めてこの単純なことが全
く出来ないヤツが殆ど。それが解るからこそ、鈴木の発言には「説得力」
が溢れる。ぐうの音も出ない程に。

コレは紛うこと無きプロレス本。でも、「現状維持を目指したら緩やかに
落ちて行くだけ」とか、「世界一になるのを諦めることを止めた」とか、
誰かの人生に影響を与えそうな言葉を幾つも発見出来る。もし可能ならば、
僕も鈴木みのると同じような気持ちで残りの人生を過ごしたいのだが・・・。

この本は上下巻であり、まだ【黒の章】を残している。
次を読み終わった時、もしかしたら啓発されている可能性アリ。
やっぱ鈴木ってすげぇわ・・・。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人

#This is the Mystery!


▼ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 / 東野圭吾

11月末日に発売されていた東野圭吾新作
実は発売日近くに買い、その日から読んではいたのだが、ギターの練習(^^;)
に時間を取られ、珍しくロングラン読書になってしまった次第。

久しぶりに「王道」と言えるミステリー
絶対的な【探偵】役が存在し、ソレに翻弄されながらも一生懸命に動きつつ、
語り部をこなす【助手】役が居る。誤解を恐れずに言えば、シャーロック・
ホームズ的、非常にトラディショナルなミステリー構成なのだが、それらを
現代的なアイテムに見事にアダプト。この手法は正に「絶妙」、怪しい人間
が何人も出てくるのだが、僕のスキルでは最後まで全く犯人が解らない
久しぶりに「ミステリー」を堪能させていただいた。

何よりも主人公が魅力的。
設定「ラスベガスでも評判を呼んだ元マジシャン」で、ケレン味たっぷり
のいかがわしくもクレバーな男。捜査過程で時折マジックを仕掛けるのだが、
その描写はまるで目の前でマジックを見ているかのような臨場感。もしかし
たら、東野センセには今マジックブームが来ているのかもしれない、とか思
った。

ある意味で東野圭吾の最も魅力的な部分が詰まった【ザ・ミステリー】
気合いの入ったミステリーが読みたい人は、是非ご一読いただきたい。

・・・シリーズ化、あるかも。
この一作で終わらせるには勿体ないキャラクターが少なくとも1人は居るし。

U.W.F.外伝

#さまよえる格闘家 #リアル範馬刃牙


▼U.W.F.外伝 / 平直行(Kindle版)

名作「グラップラー刃牙」の主人公、範馬刃牙モデルとなった格闘家、
平直行自伝。タイトルに「UWF」の3文字があるが、平はUWFに在籍した
時期は無い。これは売れ行きのためにUWFが付いたんだ、と勘ぐっていたの
だが・・・。

僕は一貫して「さまよえる格闘家」と呼ばれた平直行のファンだった。
シュートボクシング格闘技オリンピックRINGS実験リーグなどの主要な
試合はもちろん、バトラーツプロレスをする姿もこの目で観た。どんなル
ールの試合に出ても、必ず独創的ヒリヒリした試合を魅せてくれる、あの
当時では珍しい「プロフェッショナル」な格闘家であった。

あの平直行がプロレス、それもUWF大ファンであった、というのは、正直
この本を読んで初めて知った。しかし、当時をよく考えてみれば、平は公の
場でプロレスを腐すような発言を一切しなかったし、プロレスラーとしてリ
ングに上がっているときも一朝一夕では絶対に出来ないキレイな「受け身」
を見せていた。僕のようなプロレスを入口に格闘技観戦に入った人たちを惹
き付けたのは当たり前だった、ということ。

タイトルに「UWF」の三文字のある本を何冊も読んできたが、お世辞抜きに
それらの中でいちばんおもしろかった。紛れもなく平直行にしか書くことが
出来ない「外伝」であり、タイトルにこの3文字は絶対に必要である

創世記の「格闘技」に興味のある人は是非。すばらしいです、コレ。