オイディプスの檻

#PSYCHOPATH


▼オイディプスの檻 犯罪心理分析班 / 佐藤青南(Kindle版)

佐藤青南もう一つの警察シリーズ「犯罪心理分析班・八木小春」
の1作目。楯岡絵麻シリーズが面白かったので、ある意味鉄板と判断
し、ハナからシリーズ全読するつもりで読み始めた。

最近のミステリーでは定番になりつつある「プロファイリング」
主題に於いた物語。発達障害を抱える空気の読めない天才プロファイ
ラーと、自らをサイコパスと認める警察官2名からなる犯罪心理分析
。この特異な集団に一般人である捜査一課の女刑事・八木小春が巻
き込まれて行く、という内容。

正直、楯岡シリーズを最初に読んだ時ほどの衝撃は感じなかったし、
ミステリーとしての組み立てもややありきたりな感はあるのだけど、
「これから続いていくシリーズ」導入としては満点サイコパス
シリアルキラーという今後の中核を成して行くと思われる用語の解説
完璧で、早く次回が読みたい、と思わせてくれる。さらに楯岡シリ
ーズとのクロスオーバーもあり、ファンには嬉しい構成でもある。

もちろん現在続編を鋭意読書中。
年始の暇な時間は全部このシリーズに集中しそうだな、実際。

ONE PIECE magazine vol.8

#vol.1行方不明


▼ONE PIECE magazine vol.8

季刊「ONE PIECE magazine」8冊目
これまでの発売では特集すべきイベント(ワノ国篇突入とか映画とか)
が多々あったのだが、今回はおそらく編集側からの企画。さすがに若干の
ネタ切れ感を感じざるを得ない(^^;)。

とはいえ、やっぱり今回も隅々まで読んでしまったのだから、原作の力は
やっぱり凄い。タイミング的に単行本の95巻発売にほぼ合わせた発売だっ
た、というのも良かった気がする。

ところで、全冊購入しているハズのOPM、何故だかVol.1が見当たらない。
絶対どこかにあるハズなんだけど、置き場がねぇ・・・。多分2Fの倉庫なん
だけど、どこに入れたか・・・。処分したいなぁ、クソ邪魔な物件。

プロレスラーは観客に何を見せているのか

#日本製丸鋸


▼プロレスラーは観客に何を見せているのか / TAJIRI

WWEスーパースターTHE JAPANESE BUZZSAW」ことTAJIRI
書いた本。これまで何冊か著作があり、その文章力には以前から定評
があったプロレスラー。

今回はTAJIRIによる「プロレス論」
プロレスとはこういうモノ、であるが故にこうした方が良い、的な
指南書、と言って良い。本気でプロレスラーを目指している人は一読
しておいた方がいい。

・・・何故に読んでおくべきなのか?だが。
基本、プロレスはやる方観る方も本来は自由なハズ。僕もTAJIRIの
語る理論が正直正しいとは思わないし、彼が思うプロレスよりも好き
なプロレスのスタイルがある。だからコレは全否定されてもしょうが
ない本でもあるのだが・・・。

大きいのは、コレを書いている人が今現在でいちばんWWEで活躍した
日本人プロレスラーであること。カブキやムタのような「見た目」の
ギミックにほぼ頼らず、英語を全く使わず、等身大の日本人として自
らのキャラクターを確立した。これは他の誰も文句の言えない実績
あり、だからこそ「教科書」になり得る、と判断すべき。

そしてプロレスをやる気の無い僕にも興味深い内容となっており、読
み応えはかなりのモノ。相変わらず面白い文章を書くプロレスラーで
す、この人は。

そんなTAJIRIもそろそろキャリア末期。今後どういう方向に行くのか、
ちょっと注目しておきたいと思います!

倒れるときは前のめり ふたたび

#ひらがな


▼倒れるときは前のめり ふたたび / 有川ひろ

エッセイ集
内容云々の前に、この本が出版されたこと自体が結構なニュースにな
るべきなのだが、僕は出版の事実をわりと長い間知らなかった。それ
には理由があるのだが・・・。

少なくとも、僕にとって「有川浩」という作家は特別の中でも特別
存在だった。友人に勧められるがままに読んだ一遍は、とんでもなく
「ベタ甘」恋愛小説。それまでの僕なら完読すら難しかった種類の
小説を最後まで読ませ、さらに虜にした。以降はありとあらゆる著作
を読みまくり、全てを制覇した後は新刊を心待ちにするようになった。
「フリーター家を買う」「県庁おもてなし課」、そして「空飛ぶ広報
室」。ハードカバーで購入した何冊もの本は、いつも期待以上。そし
「旅猫リポート」は、読中から僕の五感を刺激しまくり、文字を読
みながら号泣する、という人生初の体験をもたらしてくれた。そんな
小説家は、今まで有川浩一人だけしか居ない。

そんな有川浩が、2016年を最後に一切の作品を発表しなくなった。
それまでの最終作「アンマーとぼくら」は、正直納得のいく内容では
なく、それについて否定的なレビューを書いた記憶がある。この評価
はどうやら僕だけでは無かったらしく、氏の著書にしては賛否が入り
乱れる状況。その段階で「有川浩」の名前は出版界から消えた。

ネットでは憶測で溢れる。編集者への虐待、大手出版社への反旗、メ
ンタルがメチャクチャ、干された、etc。そういう記述を目にする度に
悲しくなったし、もしかしたらもう二度と有川浩の作品は読めないか
もしれない、と覚悟すらした。

それでも、東野圭吾・伊坂幸太郎・湊かなえ・誉田哲也・真梨幸子・
池井戸潤らと共に、必ず有川浩を新刊検索する毎日。だとすればヒッ
トして当然なのに、発売から長い時間が過ぎるまでこの本の存在を知
ることが出来なかったのは、作家名が違っていたから。まさか名し
ていたとは、夢にも思わなかった。

有川浩は「有川ひろ」として復活。その第一弾が、拾い集め感の強い
エッセイ集なのはちょっとだけ残念だったけど、アイドリングにはち
ょうど良かったのかも。歯に衣を着せない有川節は健在であり、賛否
はともかくとして少なくともストレートにこちらに切り込んでくる
あ、来たな!と素直に感じた。

トドメはやはり巻末に掲載された2篇短編恋愛小説
この手の小説はきっと他の作家でも書けるが、少なくとも僕の心に響
く恋愛小説は有川浩・・・いや、有川ひろにしか書けない、と思う。

急ぐ必要は無い。もし有川ひろが新作小説を手掛けるのであるとすれ
ば、僕はそれを確実に読むし、内容に納得がいかなかったとしても、
満足出来る小説が届くまでずっと待ち続ける覚悟は当然ある。一度好
きになった作家を嫌うのは、最高に難しい行為でもあるので。

さぁ、準備をしようぜ!
そしてまた前のめりになって最高の仕事をして、僕を泣かせてくれ!
それが出来るのは、きっと有川ひろだけだと思うので。

セブンス・サイン

#エンマ様


▼セブンス・サイン / 佐藤青南(Kindle版)

佐藤青南行動心理捜査官・楯岡絵麻シリーズ第7弾にして、今のと
ころの最終作品。このシリーズ、ちょっと早く読み過ぎたかもしれな
い(^^;)。やや反省。

今回の標的は「宗教」
カルト教団とか尊師様とか、そういう具体的なモノではなくて、宗教
という「概念」に対してアプローチしているところがまず面白い。

人がどうして宗教に走るのか、そして宗教はどうやって人を取り込む
のか、が理路整然と解る構成。「信じるもの」は本当に人それぞれだ
けど、それがどの線を越えたら「異常」とされるのか、改めて考えて
しまった。

根本的に僕は徹底した無神論者であり、全ての神々をカンタンに否定
出来ると思うのだが、生き神であるアントニオ猪木にだけは絶対に逆
らえない自信もある(^^;)。人それぞれなんだよね、こういうのって。

とにかく、宗教団体を舞台にした秀逸なミステリー。そして、愛すべ
きキャラであるミスターフリーこと西野に大きな変化が訪れるので、
ファンなら必読。

そういえばこのシリーズ、BSドラマになっていたとか。
教えて欲しかったなぁ、そういうことは(^^;)。