さよなら、プロレス

#幸せなリタイヤメント


▼さよなら、プロレス / 瑞佐富郎(Kindle版)

愛のプロレス作家、瑞佐富郎氏の作品。
サブタイは『伝説の23人のレスラー、その引退の<真実>と最後の<言葉>』
前回読んだ「プロレス鎮魂歌」は、「死」によってリングを去ったプロレス
ラーの物語だったが、今回はしっかり「引退」することの出来た、ある意味
で幸せなプロレスラーたちの物語。

ここで描かれている23の引退のうち、記憶に無いものは一つとして無い。
しっかり調べてみると、うち7つの引退興行を生観戦しているのだから、僕
のプロレスファン歴も相当長くなった。スーパーセレモニーとなったアント
ニオ猪木天龍源一郎、近くは獣神サンダー・ライガーの引退興行はすぐに
でも詳細を思い出せるのだが、そこに瑞氏の言葉が入ると目頭が熱くなる
相変わらず泣かせてくれる、すばらしい作家だと思う。

印象に残ったのは、現在新日本プロレス広報として活躍する井上亘のトピ
ック。けして上手くは無いし、対抗戦など大事な場面でコロコロ負けた井上。
コレが原因で現役時代は盛大にイライラさせられた(^^;)のだけど、引退セレ
モニーでは文字通り号泣した僕(^^;)。派手な戦績は残せなかったけど、いつ
も一生懸命な井上亘は「プロレス」にとって必要な選手だった、と引退式の
時に感じた。

瑞氏の作品は、そういうプロレスの良さをいつも再確認させてくれる。
この名著もUnlimited扱いなので、興味のある人は是非ご一読を。

Cursed “IWGP WORLD” Too…

#呪われたIWGP


新日本プロレス『WRESTLE GRAND SLAM in TOKYO DOME』
今回はガッチリ仕事だったので、残念ながらしっかり観てはいないのだ
が、少しばかり考えさせられた。

IWGPはその成り立ちからずっと【呪われた】と表現されてきた。
猪木vsホーガンの[舌出し失神][長州乱入→蔵前暴動]の二つの事件は
ファンにトラウマとして残っている。この悪い流れを藤波辰爾ビッグ
バン・ベイダー闘魂三銃士、そして中邑・棚橋が必死に払拭して今が
あるのだが、IWGPに“世界”が付いた今、また悪い連鎖が・・・。

東京ドームのメインは、王者の鷹木信悟棚橋弘至が挑むIWGP世界戦
そもそも鷹木に挑戦するのは飯伏幸太だったのだが、突発性の疾患で
飯伏が欠場。棚橋の挑戦が決定したのは前日のことだった。

初代王者の飯伏は一度も防衛出来ず、二代目のオスプレイもケガでタイ
トル返上。三代目王者の鷹木は頑張っているが、悲惨なことに「暫定」
感が半端ない。この状態であの棚橋の挑戦を受けさせるのは、ちょっと
気の毒であった。

まだしっかり試合を観ていないので寸評は避けるが、評価は「大熱戦」
鷹木の評価はもっと上がって欲しいし、棚橋にはIWGP世界のベルトを
一度は腰に巻いてもらいたいところ。

この試合が、今後に繋がるといいんだけど・・・。

証言初代タイガーマスク

#黄金の虎


▼証言初代タイガーマスク 40年目の真実 / V.A

お馴染みの宝島「証言」シリーズ
なんだかんだで証言シリーズは全て読んじゃっているのだが、今回の題
材は他で散々いじくり回された感のある“初代タイガーマスク”。宝島が
コレをどう処理するか、注目していたのだけど・・・。

証言者は佐山聡本人の他に、高田延彦、藤原喜明、新間寿、グラン浜田、
藤波辰爾、山崎一夫、藤原敏男、佐山聖斗8人。いわゆる「佐山本」
の常連は藤原・新間・山崎の3名くらいで、高田、浜田、そして藤波の
語る佐山の話は非常に新鮮。特に自分で「佐山に喰われた」と語る藤波
の談話は、実に興味深い「証言」となっているように思う。

惜しむらくは、各人の語る内容がやはり【新日本プロレス】の時代に偏
っていること。第一次UWF修斗UFOあたりの佐山についての証言が
もう少しあれば、証言シリーズ屈指の傑作になったかもしれない。

現在、健康状態がけして良くなさそうな佐山聡だが、やって欲しいこと
がまだまだある。プロレス・格闘技史上最高の『天才』は、絶対に長生
きしなければならないし、もう一度リングに立つ必要もあると思う。

タイガーマスクに人生を変えられた人は、たくさん居るんですよ、ええ。

GLEAT ver.1

#UWF


かつてNOAHオーナー企業だったリデット・エンターテインメントが、
新たにプロレス団体を旗揚げ。名称は『GLEAT』

・・・おそらくグレートRリデットLに置き換えたんだと思うけど、正直
スペリングミスの感否めず(^^;)。ただし、団体の方向性は珍しくコンセプ
チュアルで、【G-PRO WRESTLING】【LIDET UWF】の二本立て。ちょっ
と気になる試合が組まれていたので、YouTube Liveで生観戦してみた。

気になったのはメイン、LIDET UWFルールの試合。LIDET UWFのエース
指名された元W-1伊藤貴則が、新日本プロレスSHOと闘う。

GLEAT云々では無く、観たかったのはこのルールでのSHO
柔術やMMAのトレーニングをずっと続けている、ということはファンの間
ではわりと有名。案の定、主導権を握り続けたのは、伊藤に体格で劣って
いたSHOだった。やはりこの選手、只者では無い。

意外だったのは、伊藤が噛ませ犬のままで終わらなかったこと。
空手仕込みの重い打撃で反撃し、一時はポイントで優位に立つほど善戦
真摯にUWFルールに取り組む姿にも好感を持った。実力的には正直まだ
まだだが、かなり近いうちに大物食いを魅せてくれる可能性があるかも。

しかし、このルールでも鬼のように強いSHOの牙城は崩れず。
最後は完璧な三角締めを極めてTKO勝ち。ある意味で「新日本」を体現
して魅せたのだから凄い。

全体を通して観れば、かなり良い内容の旗揚げ戦だった気が。
伊藤は早急に成長する必要があるし、ソレが出来る選手だと思う。そし
て久しぶりのUWFルールがかなり新鮮。もしかしたら、かなりおもしろ
い団体になるかもしれない。

・・・あとはG-プロレスの方向性かな?こっちも悪くは無いんだけど。

伝説のパッチギ王

#原爆頭突き


▼自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 / 大木金太郎(著)太刀川正樹(訳)

大木金太郎に関する書籍、2冊目は大木自身の筆による自伝。
韓国日刊スポーツという新聞で連載されていた記事をまとめたモノで、
その日本語訳がコチラ。韓国版を見ていないのでなんとも言えないが、
おそらく装丁などは日本オリジナルだと思われる。

誤解を恐れずに書くのなら、この作品には【間違い】が多々ある。
例えば、力道山没時に奪取した、とされるWWA世界タッグタイトルに関
しては、まだ世界王座になる前のUSタッグ選手権であるし、米国で当時
NWA王者のルー・テーズに善戦の上惜敗した、というのも嘘。実際には
テーズにボコボコにされてレフェリーストップとなった、というのが本
当のところらしい。

その他の試合記録や時系列もかなりあやふやだし、師匠の力道山を必要
以上に美化されていたりするのだが、韓国での大木の立場を考えると、
話に多少の尾ひれが付くのもしょうがないかと。全盛期の大木は正に
「韓国の力道山」であり、国民的英雄。その頃の大木を知る韓国のオー
ルドファンに、やや血生臭い真実を無理に知らせる必要は無い気がする。

ただ、『キム・イル 大木金太郎』というイチプロレスラーの自伝で、
第二次大戦後の韓国の歩みが、ある程度把握できてしまうのは凄いこと。
少なくとも僕の中の大木金太郎は、アントニオ猪木とプロレス史に残る
死闘を展開してくれた名選手であり、その事実に対するリスペクトは、
今後一生消えない。

しかし、大木の他にはストロングマシン2号の力抜山くらしか知ってい
る選手が居ないのに、黎明期の韓国プロレス史は本当に興味深い。
取り敢えず予習は完璧。今後続いていく昭和プロレスマガジンの連載記
事、心の底から楽しめそう。