教室が、ひとりになるまで

#ファンタジー変則活用


▼教室が、ひとりになるまで / 浅倉秋成 (Kindle版)

新刊も落ち着き、読むべき本が今のところ無いので、久々にUnlimitedより。
書店表紙タイトルに惹かれた作品があったのだが、コレはその作者が書
いた本。買う前に、こちらを読んで判断しよう、ということ。

・・・なので、浅倉秋成作品はもちろん初。
読書前にちょっと調べてみたところ、ミステリー系・ヒューマン系に幾つか
の著作を持つ若手作家で、マンガの原作もこなしている模様。コレは期待で
きる、と踏んで読み始めたところ・・・。

誤解を恐れずに言えばファンタジー系のミステリー。凄くかんたんに言うと、
自殺者が頻発するクラスに所属する高校生が、ひょんなことから特殊な能力
を所持。幾つもの自殺が「連続殺人」ではないか?と考え、真相に迫ってい
く、という感じ。

とにかく唸ったのは、『ファンタジー』の使い方
能力者系が痛快に活躍するファンタジーは腐るほどあるが、この作品の能力
者たちからは殆ど「闇」しか感じない。この感覚がドロッとした心情が浮き
彫りになるような世界線にピタリとハマり、おかげでミスリードも多発、ラ
ストはほぼ絶望的どんでん返し。こういう手法もあるんだ、と思わず感心
した。

僕にとって問題なのは、文体があまりに「今風」であること(^^;)。
ラノベのソレとは全然違うのだが、表現の仕方や登場するアイテム等の描写
新しすぎて理解が遅れる。速読を自負している僕が、読了までにかなりの
時間を要してしまった。

これは完全に年齢の問題だと思うし、今後を考えれば克服すべきこと
この作家、才能はかなりのモノだと思うので、練習するつもりで他作品も読
んでみようと思う。あと少しで大好きになれそうなんだよなぁ・・・。

お電話かわりました名探偵です リダイヤル

#変則安楽椅子探偵


▼お電話かわりました名探偵です リダイヤル / 佐藤青南(Kindle版)

佐藤青南『お電話かわりました名探偵です』シリーズ化した模様。
ちょうど1年前に読んだ【安楽椅子探偵モノ】続編、副題は「リダイヤル」

110番通報に対応する通信指令センター凄腕オペレーター万里眼こと
君野いぶきのロジカルかつ鮮やかな推理は本作でも健在。思わず唸ってし
まうレベルの謎解き劇は単純におもしろく、最後まで興味が切れずに読む
ことができたのだが・・・。

問題は前作でもちょっと触れた恋愛要素(^^;)。
ヒロイン・いぶきさんが魅力的なことは十二分に伝わるが、残念ながら主人
公である童貞イケボオペレーター・早乙女廉くんに圧倒的に華が無い
残念ながら以前感じた取って付けた感は払拭出来ず・・・。

せっかくシリーズになったのだから、次はぜひ早乙女くんがカッコ良く見
えるシーンを。そうでないといぶきさんが報われないので。

ROAD of the DRAGON

#炎の飛龍


▼藤波辰爾自伝 ROAD of the DRAGON / 藤波辰爾

デビュー50周年を迎えた藤波辰爾自伝。サブタイトルは「プロレス50年、
旅の途上で 」。藤波さんの自伝はこれまでも何冊かリリースされているが、
今作はそれらの集大成と言って良い内容。とにかく束が厚く、ボリュームが
凄い。

僕のプロレス観戦人生は、藤波辰爾のプロレスラー人生同義である。
アントニオ猪木は別格として、藤波さんほど僕の人生に影響を与えてくれた
プロレスラーは居ない、と断言できる。この人がいなかったら、これだけ長
い間プロレスを観続けることはなかった、と自信を持って言える。

藤波辰爾の功績は数えられないほどあるが、中でも賞賛されるべきは3つ

  1. 容姿端麗・女性人気の高いカッコイイレスラー像の構築
  2. ジュニアヘビー級という現代プロレスに必要不可欠な概念
  3. 相手の技を全て受ける試合スタイル

今現在のプロレス界を見返してみれば解ると思う。
今人気のあるプロレスラーの殆どはイケメンでカッコイイし、相手の技を受
けた上で逆転する力が無ければファンの支持は得られない。そして藤波さん
がジュニアという概念を持ち込まなければ、プロレスラーにすらなっていな
い選手が多々居たハズ。

同世代のジャンボ鶴田天龍源一郎長州力らと比較するとやや地味な感は
あるが、個人的には彼らより藤波辰爾の方が明らかにすばらしいプロレスラ
ーである、と思う。

そんな思い入れたっぷりのプロレスラー・藤波辰爾の自伝だから、ここに書
かれている内容のほぼ全てを「知っている」。内容に過不足は無く、押さえ
るべきポイントは全て押さえてある重要な書籍。これがすぐに理解できるく
らい、長く深く藤波辰爾を追い続けた自分を、誇っても良いような気がする。

そして、今も現役でリングに上がり、シングル王座二冠を保持する炎の飛龍
藤波辰爾。少しでも長く、リング上で活躍する姿を魅せ続けて欲しい。

・・・ちなみに、現役プロレスラーのことを書くときは極力敬称略にするのだ
が、藤波さんだけは勘弁して欲しい(^^;)。尊敬度合が凄すぎるので(^^;)。

アクトレス

#その後


▼アクトレス / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也の新作は、4年前にリリースされた「ボーダレス」その後を描い
たモノ。全員が社会人女性となり、それぞれの世界で生活しているのだが、
ある事件がまた皆を結びつけて・・・という内容。

・・・まず、前作の「ボーダレス」を読むことを強くオススメする。
主人公の女性たちの今の「職業」、やはりあの時のあの件が大きく作用して
いることが解るし、彼女らの言動に微妙な説得力とユーモアを感じることが
できる筈。コレを単体で読むと、凄くサラッとしたミステリーになってしま
うのが非常に勿体ないので。

彼女らのキャラを解った上で読んでいるので、前作のような「意外性」を感
じることはできないが、語り部が次々と変わっていくスタイルは健在。伏線
の貼り方は今回も絶妙で、ミステリーとしての読み応えは十二分にある。

そして、ちょっと変わった女性たちの「お仕事小説」として読むのもアリ。
ラストあたりで感じる妙な清涼感は女性受けすると思うんだけど。

日本懐かしテレビ大全

#今週のスポットライト


▼日本懐かしテレビ大全 / V.A

昨年暮れ、レビューを書いた「日本懐かしラジオ大全」と一緒に書店で購入
したタツミムック・懐かしシリーズの一冊。ラジオの次はやっぱり“テレビ”
ということになる。

1970〜80年代に放映されていた各種のテレビ番組を、【バラエティ・音楽
・ドラマ・子ども】4ジャンルに分けて紹介する作品。ブラウン管を搭載
したテレビ『一家に一台』の時代に入り、同時にオンエアされる番組の内
容が大きく広がった頃。誤解を恐れずに言えば、テレビがいちばん面白かっ
た時代をまとめた本である。

「ラジオ」には正直聴いていなかったプログラムもあったが、ここで紹介さ
れているテレビ番組はほぼ全てに覚えがある。僕らの世代がいわゆる「テレ
ビっ子」の始まりであり、隙があればテレビを観ていたハズ。共感度に関し
ては、ラジオの非ではない。

印象に残ったのは、音楽番組の章。
今ではめっきり数の減った王道の音楽番組は、あの頃毎日必ず1本はオンエア
されており、子どもたちが音楽に出会う機会はほぼテレビだった。黒柳徹子
久米宏「ザ・ベストテン」に関しては、かなり長い間オリコンビルボード
以上の権威を持った番組だった。もっとも、後になってこの番組の【点数】
相当いい加減だった、という事実を知ることになるのだが(^^;)。

もちろん他の章も懐かしさ満載で楽しめるのだが、惜しむらくはもう一つの
重要なジャンル『スポーツ中継』が抜けていること。かつては視聴率を稼ぎ
まくったキックボクシングローラーゲーム、もちろんプロレス中継などの
コラムも読みたかった気がする。

しかし、同年代に日本で暮らした輩であれば楽しめること請け合い。
・・・ねるとん紅鯨団だけは絶対に認められない(^^;)けど。