1984年のUWF

▼1984年のUWF  / 柳澤健

プロレス関連のノンフィクション作家としては、個人的に「最高」と評価する
柳澤健「XXXX年の○○」シリーズ。今回のテーマは・・・「UWF」である。

UWFとは、1984年に旗揚げしたプロレス団体が元。その3文字はいつしか我々
にとって「概念」となり、未だにソレを引き摺りながらプロレスを観ている
人間も居る。おそらく僕も、その一人だ。

かなり束のある本で手に取った時は正直たじろいだ。今さらUWFを追求して
どうなるのか?という思いも残念ながらあった。しかし、読み始めてしまった
らもう止められない。相変わらず“凄い文章”を書く作家である。

柳澤作品にしては珍しく、“信者”と形容されたUWFファンの心情が多々描かれ
るているのが大きなポイント。ここに書いてある「ファン」とは間違い無く
僕自身のことであり、読んでいて少し心が痛くなるほど。おそらくは作者自身
そのカテゴリに居た、と自覚しているハズ。そうでなければ、こういう文章
は書けない。

「・・・結局のところ、新生UWFで新しかったのはフロントのアイデアや企画力
だけで、レスラーの技術的進歩はまったくなかった。」(本文より引用)

・・・そう言い切らなければ、我々をずっと翻弄してきたUWFという三文字
ケリが付けられない。そう感じたのではないか?と思う。この一文に、僕は
アタマをガツンと殴られた気がした。そして、その「夢」がもうとうの昔に
終わっていたことに、改めて気付いた気がする。

いわゆる暴露的な要素も含まれるが、それも含めて重要な素材。もちろん反論
する選手や関係者も居ると思うし、この本が正解かどうかを断言することは誰
も出来ない。しかし、僕の中ではちゃんと「UWF」ケリが付いた。それは凄
く悲しくて、寂しくもあったが、何十年もずっと漂っていた霧が一瞬にして晴
れていくような爽快感も共にあった。これでやっと、僕はUWFを卒業できる

UWFに何かを貰った人は、一度この本で確認すべき。自分のを。