足跡

#絶望と希望


▼足跡 / KENTA

全日本プロレスNOAHを経て、単身米国へ渡りWWE(NXT)のリング
でファイト、現在は新日本プロレスで活躍するKENTAの自伝。G1の頃
からリング上でPRに余念の無かった本(^^;)をようやく入手した次第。

NOAHで頭角を現し始めた頃のKENTAは、最高に魅力的な選手だった。
プロレスラーとしては小兵、さらにムキムキの筋肉質では無いにも関わ
らず、2mを超える高山善廣を相手にしても小さく見えない。闘争心を
剥き出しにして闘うその姿は、ある意味プロレスラーの理想。こういう
選手が新日本に居ないのが本当に悔しかった覚えがある。

この自伝ではKENTAの誕生から少年期・青年期、プロレスラーになっ
てからの各団体でのキャリアがバランス良く語られているのだが、のめ
り込んで読めたのはやっぱりWWE入団まで。米国でも大活躍を期待され
ていたのに、度重なる大怪我で欠場を繰り返す。結局はRAWにもSDにも
登場出来ないまま退団してしまったのは、やっぱり本人にとっても思い
出したくないキャリア、ある意味黒歴史だったことが伝わって来た。
あそこでプロレスラーのKENTAは、半分終わってしまった、と判断せざ
るを得ない。

だから、このタイミングでの自伝の出版はちょっと早すぎた感。
正直、今のKENTAに「あの頃」を望むのは酷、というのは解っているが、
今の新日本で明確になりつつある『新しいKENTA』というキャラクター
は化ける可能性があると思うし、それを成功させて初めてKENTA自信の
【足跡】が刻める気が。そこまで待ってからこの作品が出ていたら、も
っとハッピーな気分になった、と僕は思う。

しっかり足跡を残し、その後にぜひこの続きを。
KENTAならきっとそれが出来るし、それをやらなければならない選手
と思うので。

作家刑事毒島の嘲笑

#世界一性格の悪い男


▼作家刑事毒島の嘲笑 / 中山七里(Kindle版)

いつぞやのセールで特価になっていたので購入しておいた電子書籍は、
中山七里・作家刑事毒島の新作。この問題作、どうやらシリーズ化され
たらしく、ファンとしては嬉しい限り。

作家刑事二足のわらじを履く「最強の皮肉屋」こと毒島が、今回
タッグを組むのはなんと公安の刑事。この設定の段階でもうニヤニヤが
止まらない(^^;)。だって主人公の性格上、左とか右とかの思想に対し
ての皮肉が溢れるのは読む前から歴然。案の定、気持ちいいくらい的確
な「皮肉」・・・いや、「悪口」(^^;)が、山の様に飛び出した。

そして今回、かなり久しぶりに【どんでん返しの帝王】にやられた。
とにかくシニカルでおもしろいから、コレがミステリーだということを
途中まで完全に忘れていたのが敗因(^^;)。最初からちゃんとミステリー
として読んでいれば、勝ち目があったかもしれない。

今回の毒島、最終的にかなりカッコイイ!
完全にダークヒーロー、ミステリー界の鈴木みのるだな、毒島。

日本昭和トンデモVHS大全

#ウェアハウス


▼日本昭和トンデモVHS大全 / V.A

久しぶりのタツミムック・懐かし大全シリーズのテーマは『VHS』
昭和期、誰もが所持していた映像機器であるVHSビデオデッキで観ることの
できる【ビデオソフト】を特集した本。

ブルーレイはもちろん、DVDも無かった時代、家庭で映画を観ようと思った
ら、VHSのビデオをレンタル店から借りて観る、の一択。当時はビデオソフ
トを「買う」なんて、価格的にとんでもない話で、それでもいろんな映像が
観たい、という欲は抑えられず(^^;)、だから、一時期は10店舗近くのレンタ
ルビデオ屋会員カードを所持していた覚えが。

この本では、レンタルビデオ全盛期のソフトを特集しているのだが、その中
「大作」と呼ばれるモノは一切無い(^^;)。劇場公開なんて絶対にされて
いないB級・C級「ビデオ専用作品」ばかりが網羅され、そのボリュームに
圧倒された。

僕は自分のことを相当の映像マニアだと思っていたが、この本に載っている
作品を一切観たことが無いのにビックリ(^^;)。ただし、タイトルジャケッ
には妙に覚えがあるから、よっぽど店先で目立ってたんだろうなぁ、と。

さすがに今は観れないんだろうなぁ、ビデオ専用作品。
「血の終末 暴獣のいけにえ」「レディ・ニンジャ セクシー武芸帳」とか、
観られるモンなら観たいんですけど(^^;)。

小説・すずめの戸締まり

#先読み


▼すずめの戸締まり / 新海誠(Kindle版)

11月公開の映画「すずめの戸締まり」のノベライズ版。
新海誠作品劇場鑑賞の前に小説を読む、というのが定番になりつつあるの
だが、今回は小説のリリースがかなり早い感。

映画公開前なので、ここから先はちょっとだけネタバレ注意で。

・・・今回の作品に関しては、ちょっと順番を間違えたかな、と思う。
新海作品では珍しいのだが、この小説の世界で起こることがいつもに比べて
非常に「観念的」。つまり想像が追いつかず、どのような事が起こっている
のかを思い浮かべることがちょっと困難。おかげで、いつものように速読が
出来ず、最終的な印象も少し薄いママでいる。

そして、題材にもやや問題があるような・・・。
終盤で、実際に起こった“あの事件”がこの物語のコアであることが解るのだ
が、残念ながら僕はまだあの件から癒えきっていないらしい。クライマック
ス前の部分は正直読むのが辛く、ある部分は流し読みになってしまった。

一応、映画はしっかり観ようと思っているのだけど、さすがにちょっと構え
てしまう。大丈夫かな、コレ観て・・・。

新日本プロレス50年物語①

#マニアという生き方


▼新日本プロレス50年物語 第1巻 昭和黄金期 / 流智美

新日本プロレス50周年を記念し、週刊プロレス編集した特集本。
『第1巻』とあるように、今後2巻『平成繁栄期』3巻『V字回復期』
続刊が予定されている。おもしろいのは、それぞれで【著者】が違うこと。

新日本の旗揚げから、昭和64年までを担当したのは、プロレス史家にして、
長い間ルー・テーズの個人マネージャーを務めていた流智美氏。この期間
を書く人としては適任、と思っていたが、良い意味で様子が違った

この本、新日本プロレスの時系列に併せた「流智美自伝」的なモノ。
この構成は正直賛否両論あると思うのだが、個人的にはいろいろなところ
で懐古されている凡百の周年本を読むよりも、よっぽど興味が持てた。

おそらく、【プロレスマニア】としての「生き方」の提示、が魅力
僕は流氏のように聡明でもストイックでも無く、持続力も無いが、例えば
駅のスタンドで毎日東スポを買う、とか、テレビ中継を何よりも優先する
とか、共感出来る部分がやたら多い。そういう意味で、非常に読み応えの
深い「作品」であると思う。

ちなみに2巻の著者は元東スポ高木記者
流氏のソレとは構成もテイストも違ってくると思うけど、それはそれで
ちょっと楽しみでもある。秋発売らしいから、そろそろかな?