一九六一 東京ハウス

#イヤミスの教祖 #ミスリードメーカー


▼一九六一 東京ハウス / 真梨幸子(Kindle版)

半年ぶりの真梨幸子新作。
まずは2021年もしっかり3作品を読ませてくれたことに感謝。この絶妙な
スケジュール感、ファンとして非常に助かります!

そして感想なのだが・・・。
まずこの作品、過去の真梨幸子作品の中でも3本の指に入るほどの傑作
気が。とにかく衝撃が凄まじく、コレは他の誰かにも是非読んで欲しいの
で、極力ネタバレしないよう心がけるので念の為。

ちょっと前まで大流行していたTVプログラム【リアリティショー】
制作過程と、そこで起きる予想外の事件を描いたモノ。とにかく登場人物
の全員が一癖も二癖もある人ばかりで、もちろんそれらに留意し、「騙さ
れないぞ!」という気持ちで読んでいたのだが、全く考えの及ばない恐ろ
しいラスト。読後に思わず口をついて出た言葉が「すげぇ・・・」
ハッキリ言って天才の所業

もちろん真梨幸子作品なので、全編に悪意、そして最低な欲望が渦巻く。
ここまでキャリアを重ねた作家なら、テイストの違う作品を出しても良い
と思うのだけど、相変わらず『ブレていない』。とにかく読者が真梨幸子
に求めているモノをしっかり把握した上で、ミステリーとしての完成度
極限まで高めている。

もう一度言うが、コレは絶対に読むべき
2021年最後の最後に傑作に出会えた事実と、僕が個人的に忌み嫌ってい
【リアリティショー】に楔を打ってくれたことに感謝。
・・・もきっと、報われる。

日本懐かしラジオ大全

#ビバヤング


▼日本懐かしラジオ大全 / 川野将一

久しぶりのタツミムック・懐かしシリーズ、今回のネタは“ラジオ”
ハードウェアとしてのラジオではなく、昭和期に放送されていたラジオ番組
いわゆる「深夜放送」と呼ばれたプログラムに焦点を当てたモノ。

ザッと読んでみて思ったのだが、僕は思った以上にラジオを聴いて居なかっ
、という事実にクラッと(^^;)。この本に載っている番組で定期的に聴い
ていたのはニッポン放送・ビートたけしのオールナイトニッポンくらいで、
あとはもう少し早い時間、21時〜22時台の番組が中心。確か雑誌の付録に
付いて来たゲルマニウムラジオイヤホンを使っていた気がする。

しかし、ラジオ番組から派生した書籍は凄く読んでいたような・・・。
思いつく限りで言うと『谷村新司の天才・秀才・バカ』とか『鶴光の新か
やくごはん』とか。当時数多く出版されていた文庫サイズのこの手の本は、
あの頃の絶好の会話ネタ。ラジオより書籍だったんだなぁ、やっぱり。

それでも、ズラリと並んだパーソナリティは豪華の一言。
局アナから有名どころの芸能人まで、ありとあらゆる人たちが力を入れま
くっていたラジオ全盛の時代をしっかり思い起こすことが出来たのに感謝。
・・・今回がラジオなら、次はやっぱりアレだ!

『FMステーション』とエアチェックの80年代

#番組表2週間分


▼『FMステーション』とエアチェックの80年代 / 恩藏茂(Kindle版)

表紙見覚えのあるデザインに惹かれ、思わず購入したノンフィクション。
著者の恩藏茂氏は、伝説のFM雑誌「FMステーション」元編集長

僕らの世代には確実に響く【FM雑誌】【エアチェック】というワード。
好きにレコードを買うのが贅沢過ぎた時代、楽曲を手元にとどめておく
はラジオやテレビを『カセットテープに録音』、つまりエアチェックする
のが唯一の手段。特にFM放送はナレーションを被せずに1曲を通してかけ
てくれることが多かったから、当然ヘビーに聴くようになる。そして今で
は信じられないかもしれないが、数誌刊行されていたFM雑誌の番組表には、
たっぷり2週間分、番組でかかる曲のタイトルやアーティスト名まで掲載。
故に、FM雑誌とは“なくてはならない雑誌”だったことになる。

そんなFM雑誌全盛期、後発なのに驚異の売上を誇った「FMステーション」
その編集長が語る80年代懐かしい上に魅力に溢れており、この時代を
体感出来たことは凄く“貴重”だと思った。

・・・というのは、この本を読んでいることを10歳下の後輩に話したところ、
全くピンと来ていなかった(^^;)から。生まれた時期がたった10年違った
だけで、FM雑誌の存在意義が理解出来ない、ってのは、ちょっとショック
でもあった。

この作品にはFM・エアチェック時代が終焉を迎えた原因が幾つか書いてあ
るのだが、個人的にトドメを刺したのは良くも悪くもJ-WAVEが原因かと。
バイリンガルなナレーションクロスフェードはそれまでのFMを破壊し、
録音しよう!、という気を根こそぎ削いだ。まぁ、どうしても録音したく
なるプログラムが無かった、というのもあると思うのだが。

ちなみに、僕は『FMレコパル』派(^^;)。
マンガがあったのが良かったんだよなぁ、実は(^^;)。

絶対正義

#クソみたいな正義


▼絶対正義 / 秋吉理香子 (Kindle版)

こないだ読んだ「婚活中毒」の流れを受け、Unlimitedにあった秋吉理香子
作品を続けて読むことに。これがまた・・・。

高校時代の仲良し5人組女子のうち、一人は「正義の子」。正しいことしか
せず、「悪いこと」に関しては徹底的に糾弾。普通なら煙たがられる存在だ
が、そのおかげで救われた他4人は彼女を尊敬せざるを得ない。時は大きく
流れ、同窓会で再会した5人は・・・という内容。

・・・なんかねぇ、非常にとんでもない作品(^^;)。
とにかく主人公のキャラのウザさが群を抜いており、読んでいるだけでマジ
で不快になるくらいだから凄い。そういう意味では【イヤミス】に分類して
も良いのかもしれないが、イヤミスを愛する者として、なんとなくそういう
カテゴライズをしたくない感じ。

僕の好きなイヤミスは「絶対的な悪意」。であるからこそゾッと出来るし、
突き抜けた何かを感じることが出来るのだけど、この作品のメインアイテム
「正義」。それもクソみたいな正義(^^;)だから、タチが悪い。

おそらくここで語られる正義が【法律に則ったモノ】であり、そこに抵触し
なければOK、という偏ったモノなのが原因。実際にこんなヤツが存在する
ワケは無いし、違和感こそ感じるモノの、共感なんて絶対に出来ない。読了
まで、本気で気分が悪かった(^^;)。ソレが狙いだと思うので、確実に成果
を上げているとは思うのだけど・・・。

しばらく読みたくないなぁ、この人の作品(^^;)。
おそらく相性の問題なんだろうけど、残念ながらこの世界観を僕は求めない
ちょっと間を取らないと厳しいな、この作家・・・。

婚活中毒

#Marriage Black


▼婚活中毒 / 秋吉理香子 (Kindle版)

前からちょっと引っかかりを覚えていたタイトルの本。
僕のリコメンドの表示頻度が高い、ということは、やっぱりイヤミスの流れ
を汲んでいる、と思われますが、さて・・・。

全四編短編集で、共通するのはもちろん「婚活」
いろいろなカタチで【結婚】を切望する男女を題材としたサスペンスなのだ
が、四編全ての状況がバラエティに富んでいるところがポイント。

やはり女性目線で描かれているからなのか、どの篇も最終的にかなりヘビー
なドロドロさを醸し出しているのは見事。それなりに伏線も用意されており、
コンパクトなミステリーにまとめているのも好感が持てる。秋吉理香子とい
う作家の作品を読むのは初めてだが、この「読みやすさ」は大きなアドバン
テージ。コレは他の作品も読んじゃいそう。

・・・しかし、婚活って必要な行為なのかねぇ?とか思う(^^;)。
好きな人とするのが結婚だと思うし、そういう人が居ないのに結婚はしたい、
と思う感覚が全く理解出来ない、というのが正直なところ。その辺りを改め
て考えるきっかけにはなったかもしれない。

ちなみに、イヤミスの香りこそするものの、この作品はそのジャンルに該当
しない気がするので念の為。今度はそっち系の別作品を読んでみようかな?