虎の回顧録

▼虎の回顧録 昭和プロレス暗黒秘史 / タイガー戸口(Kindle版)

“野生の虎”こと、タイガー戸口の自伝。
御年71歳にして未だ現役。この間のジャイアント馬場没20年追善興行
バトルロイヤルにも出場し、元気なところを魅せてくれた、昭和を代表す
るプロレスラーの一人。

以前から著書熱望されていた戸口さん。
その理由は、Gスピリッツ等の雑誌で時折見掛けるインタビュー面白さ
にある。とんでもない毒舌に加え、ややヤバめの話題でもポンポン口に出
してしまう暴露癖(^^;)。コレを思いっきり楽しむには、何かを一冊仕上
げてもらうのが一番。ということで、期待大のまま読み始めた。

・・・いやぁ、どうだろ(^^;)?
これまで読んだ各種のインタビューに比べると、やや大人しい感否めず。
お得意の「他レスラーへの悪口」も若干歯切れが悪いのは、自分史という
性質上、一つのことに文章量を割けなかったのが原因なのだと思う。

それでも、日本プロレス時代から今に至るまで現役を続け、そのキャリア
の半分を海外で過ごした豪傑の語る自らの半生は本当に面白い。自分の
を隠そうともしない姿は潔くてカッコイイし、馬場猪木ですら一刀両
してしまう口の悪さもある意味ですばらしい。プロレスとは如何なる物
、が見えてくる佳作。プロレスファンならぜひ!

刑事に向かない女

▼刑事に向かない女 / 山邑圭(Kindle版)

Amazonのリコメンドで購入した作品。
山邑圭という作家は初めてなで調べて見たら、ゆうきまさみの代表作で
ある「機動警察パトレイバー」のノベライズ等で活躍している人らしい。
純粋な小説としては、コレがデビュー作の模様。

就職試験を間違って不本意ながら警察官となり、さらに手柄を上げてこれ
また不本意ながら刑事になってしまった今風の女性・椎名真帆が主人公。
世田谷で起こった女性刺殺事件を捜査中、真相に近づいたかな?というと
ころで理不尽に捜査を外される。納得出来ない真帆は休暇を取り独自に捜
査を始めるのだが・・・という内容。

テンポの良いミステリーで、主人公を始めとする個性的なキャラクター陣
もおもしろい。ギミックもかなりこなれており、デビュー作とは思えない
テクニシャンぶりを見事に発揮している、とは思うのだが、全体的な印象
ちょっと軽めなのがやや残念。ラストの処理をもう少しショッキングに
すれば、違った印象を持ったのかもしれないけど・・・。

とはいえ、将来が楽しみなミステリー作家。
おそらくこの作品にも続編があるだろうし、全く新たな作品もぜひ読んで
みたい、と思わせてくれた。次回作をお楽しみに!ということで。

『週プロ』黄金期 熱狂とその正体

▼『週プロ』黄金期 熱狂とその正体 / 俺たちのプロレス編集部

サブタイトル・・・というか、そもそも最初にアナウンスされたタイトル
「活字プロレスとは何だったのか?」

「活字プロレス」とは、80〜90年代に週刊プロレスで編集長を務めてい
ターザン山本が発した言葉。それまでのプロレス雑誌の試合リポート
試合の展開を追う文字通りの「リポート」であったのに対し、週プロに於
けるソレは記者の主観が中心。悪い言葉で言えば単なる「感想文」なのだ
が、その内容は思い入れに溢れ、読者の想像をとことんまで膨らませ
てしまう。今になって考えてみれば、麻薬のような雑誌だった。

その週刊プロレスの全盛期に活躍した編集者ライター関係者証言集
・・・まず、この段階で凄いと思う(^^;)。

もちろんプロレスラーも数名出てくるが、主役は間違いなく一介の雑誌編
集者。それを読んでいる我々は、殆どの人物の名前(と下手すれば顔も)
に覚えがある。自分も含めてのことながら、プロレスファンとはかくも恐
ろしき存在、と改めて思った。

それにしても、あの頃の週プロはまさしく「狂気の沙汰」だった。
解っていながらも毎週のように週プロを欲し、週プロに書いてあることを
確認したくて会場に何度も足を運んだ。僕も間違い無く週プロの「毒」
侵され、ヤバい、という自覚を持ちながらソレを存分に楽しんでいた。
もしかしたらUWFFMWも、ユニバーサルみちのくプロレスも、週プロ
煽りが無ければ熱狂しなかったのかもしれない。

今も週刊プロレスは存在するし、相変わらず毎週読んでいる。
でも、あそこまで熱くなる事はもうきっと無い。だって、この本に出てく
る人たちの熱は本当に「異常」であり、さすがに今の週プロにそんな人材
は居ない。よく考えてみれば、それが至極当たり前(^^;)なのだけど。

週プロは僕にとって今も「憧れ」だけど、人生がやり直せたとしてもあの
中には絶対に入れない。この本に載っている人たちはみんな言えると思う。
「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我に有り」って。

ふたたび嗤う淑女

▼ふたたび嗤う淑女 / 中山七里(Kindle版)

またもや中山七里作品。
5年前に読んだ「嗤う淑女」の続編。ということは、あの悪女の中の悪女
蒲生美智留がまた降臨する、ということ。もぉ楽しみで、ゾクゾクしなが
ら読んだ。

今回も連作短編の体。
前作のラストで美智留が化けた野々宮恭子は、ライフプランナーとして登
場し、とある代議士の重要な関係者を次々とに嵌めて行く。今回のター
ゲットは女性だけでなく男性も含まれているが、全員が全員、名誉欲
にまみれたちょっとアレ系な人間ばかり。前作に比較すれば野々宮チー
ムの手法はやや拙い気がしないでも無いが、こういう人間なら引っかかる
だろう、と思わせてくれるあたりはさすがのテクニックである。

そして、氏得意の「どんでん返し」に、今回もまんまとやられた(^^;)。
実は物語の最初の段階で「こいつはアヤシイ」と思っていたのだが、話が
進むにつれ猜疑心を持っていたことを忘れてしまった。掌の上、という
言葉が非常にしっくり来る。やっぱり凄いな、この作家。

前作ほど悪意に満ちた内容では無いが、ラストの記述には思わずゾッとし、
そしてほくそ笑んだイヤミスマニアとしては上々のご馳走であった。

さすがは中山七里。
もし読むのであれば、コレだけではなく前作も一緒に読むと尚良い。
悪意に満ちた小説を読みたい人は、ぜひどうぞ!

飯塚高史引退記念大会

昨夜、後楽園ホールで行われた新日本プロレス「NEW JAPAN ROAD」
サブタイトルは“飯塚高史引退記念大会”怨念坊主こと、飯塚高史
ラストマッチである。

自らのテーマ曲で南側客席から入場した飯塚は、狂乱のまま因縁の
テレ朝・野上アナいつものように暴行。野上アナは今回も上半身裸
の実況を余儀なくされる。いつも通りに・・・。


もちろんパフォーマンスもいつも通りだったが、ちょっと違ったのは
攻防の中でビクトル式の膝十字スリーパーを魅せたこと。かつての
新日本プロレスで“ポリスマン”の役割を務めた飯塚は、この技でヤバそ
うな相手を黙らせて見せた。この段階で、僕はもう感無量。後は好き
に暴れてくれればいい、と思った。

試合終盤から号泣する天山は、ムーンサルトプレスで飯塚をフォール。
涙ながらに飯塚に握手を求め、飯塚は一瞬天山の手を握ったのだが・・・。

直後に噛みつき。でも、コレでいいんだなぁ、と思った。
かつて新日本プロレスの「強さ」を体現してくれた男の狂乱ヒール転向
には、並々ならぬ覚悟があったハズ。ここで大団円を迎えてしまったら、
飯塚の創り上げた作品がメチャクチャになる。それだけは絶対にイヤだ
ったのだろうなぁ、と。

最後は代名詞でもあるアイアンフィンガーフロムヘルで天山を一撃。
この攻撃がプロレスラー・飯塚高史の最後となった。

この後、飯塚はいつものように狂乱のまま場内を徘徊し、何も言わずに
控室に戻った。リングサイドでは盟友・鈴木みのるがゴングを乱打。
ある意味で新日本を象徴するプロレスラーは、ヒールのまま消えた
リングに残されたアイアンフィンガーが、非常に印象的だった。

あまりに見事なラストマッチ
驚いたのは、試合終了がアナウンスされたにも関わらず、客が全く帰ろ
うとせずに飯塚コールを贈っていたこと。やっぱり新日ファンは、飯塚
がどんな男だったのかを、よく解っているんだな、と思った。

飯塚高史・本名:飯塚孝之。
元IWGPタッグ王者、元GHCタッグ王者。2019年2月21日、後楽園ホー
ルに於ける記念大会にて、現役引退・・・。