蝶狩り

#Blank Generation


▼蝶狩り / 五條瑛(Kindle版)

Unlimitedタイトルチョイスした中の一冊。
五條瑛という珍しい作家名に覚えがあったのだが、ちょっと前に読んだ
「赤い羊は肉を喰う」の作者。ならばかなり期待出来る、ということで。

主人公は個人経営の雇われ調査員、つまり探偵。仕事は浮気調査や人捜し
といったつまらないものが殆どな上、新宿の安キャバクラで知り合った娘
くらいの年齢のオンナに入れあげる。こう書くとやたら“冴えない”感じが
するのだが、どっこいかなりのハードボイルド人間関係の希薄さを見事
に逆手に取った、上質な人間ドラマが繰り広げられている。

・・・のだが!
いくらなんでも、というラスト(^^;)。ネタバレを恐れずに言ってしまう
と、物語がクライマックスを迎えたところで突然の終焉。まるで打ち切り
にあったかのような、ブツっとした終わり方は正直納得が行かない。

払拭するには、一刻も早く続編を。そうでないといろいろ気になってしょ
うがないので。

運転者

#ポイントカード


▼運転者 未来を変える過去からの使者 / 喜多川泰(Kindle版)

読むべき本が尽きてしまったので、Unlimitedタイトルチョイス。故に、
喜多川泰という作家は当然初めてとなる。

イメージ的に交通系、例えば事故を起こしたトラックドライバーとか、
んでもない失敗をやらかしたタクシー運転手の話かと思いきや、限りなく
自己啓発に近い内容。まぁ、タクシードライバーは出てくるのだが(^^;)。

タイトルの意味は、「運を転換する者」
なんでオレばっかりこんな目にあうんだ、と現状を嘆く妻子持ちの中年
焦り、絶望する男の前に突然現れたタクシーとその運転手が、男の心を
前向きに変えていく・・・という内容。

通常、こういう「上から系」の本は絶対に読まないし、仮に読んだとして
捻くれた感情しか沸かないのだが、この本はちょっと“読ませて”くれた。
文章が明快イヤミが無いのがその要因だと思う。

そして「運は良い・悪いでなく、溜めるモノ」という考え方は、悔しいこ
とに腑に落ちるし、「溜めたポイントは他の誰かに与えることが出来る」
という概念は実践すべき。電車の中で読了したのだが、帰り道で既に影響
を受けている自分に気づき、思わず苦笑してしまった。

悪く無い・・・どころか、なかなか興味深い内容の本。
Unlimitedにしとくのは、ちょっと勿体ない気がするなぁ、うん。

リングの記憶 第三世代

#Blank Generation


▼リングの記憶 第三世代 / 天山広吉・小島聡・永田裕志・中西学(Kindle版)

新日本プロレス「第三世代」と呼ばれる4人共著。各人へのインタビ
ューで構成されており、おそらく中西学引退を機に発売された作品。彼
らとは完璧に同年代なのだけど、残念ながら思い入れは皆無(^^;)。
Unlimitedでなければ読むことも無かった気がするのだが・・・。

そういう状態で読み始めたので、内容に全く期待などしていなかったのだ
が、驚いたことにコレがなかなか面白い。特にこれまであまり語られるこ
との無かった天山&小島、略してテンコジの章が秀逸で、それぞれの性格
が如実に表れる内容。一度新日本を離れた小島の微妙な嫌われぶり(^^;)
すら微笑ましい。

これに対し、あまりインパクトが無かったのが永田のインタビュー(^^;)。
どこかで読んだような焼き直し感満載のコメントに終始するのだが、それ
もある意味で永田らしいのかもしれない。

中西のインタビューは・・・。
基本的に笑えるのだが、頸椎損傷からカムバック、引退までの流れの部分
は読んでいて切なくなった。特にキャリア終盤、思うように動かぬ身体で
納得のいかない闘いを繰り広げざるを得なかった中西の心境を思うと、思
わず涙が。もっと評価されても良いレスラーだったかも・・・。

コレ、もしかしたら紙の本で買い直す可能性あり。
今後、各人が引退した場合、それぞれに著書を出しそうな気はするが、こ
の4人での共著はおそらく最後。保存版にするべき内容、と評価します。

とはいえ、残りの3人には出来るだけ長く現役を続けて欲しいなぁ・・・。

縄紋

#イヤミスの教祖 #新境地


▼縄紋 / 真梨幸子

真梨幸子の新作。遅れて販売される予定の電子書籍が待ちきれず、ソフ
トカバーの単行本を購入。手にするとかなりの。読むのに何日かかる
のか、と思いきや・・・。

・・・コレが正解かどうかは解らないが、なんと歴史ミステリー
それも、日本史の始まりとされる縄文時代にフォーカスしてきたところ
でまず度肝を抜かれた。縄文、そもそも中学以降の授業でも殆ど触れら
れない時代であり、知っていることと言えば土器竪穴式住居くらい。
普通は興味が持続出来ない題材だと思う。

が、読み進めるウチにその壮大なテーマから目が離せなくなってしまっ
たのだから凄い。この作品の中では「神社」が重要なアイテムとなって
おり、現存するモノも多数登場するのだが、それらに関する取材の細か
さが半端でない。思わず「ハァ〜・・・」と唸ってしまうような情報が多々
出てくる。女史の作品でこういう気分になったのは初めてかもしれない。
タイトルの「紋」の文字にも当然意味があるので念のため。

そして、最近更に研ぎ澄まされているミステリー要素、今回は凄まじい
までのどんでん返しが披露される。終盤で全体像が見えた段階で不覚に
息を呑んだ。結果、約2日で読破。この作家、やっぱり只者では無い。

もちろん教祖としての立場も忘れず、全編に渡って細々したイヤミス
展開される。熱狂的な真梨幸子信者の皆様の期待も全く裏切っていない
ので、同朋の皆様もどうぞご心配なく。真梨幸子ワールドでいちばんと
言っても良い壮大な作品、どうぞお楽しみあれ。オススメです!

妖の掟

#オカルティック・マジェスティ


▼妖の掟 / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也の新刊は、なんと「妖の華」続編
400年以上生きる和製吸血鬼「闇神」紅鈴が、相棒の欣治と共に闘う物語。

今回は気まぐれでヤクザの手先をしていた青年を助けてしまった二人が、ハ
ードな暴力団抗争に巻き込まれていく話。ヤクザ警察、そして驚いたこと
敵対する闇神の集団まで出現し、事態は混沌を極めていく・・・という内容。

もっとあって良さそうな感じはあるが、誉田哲也作品で真っ当に「ホラー」
なのはこの「妖の掟」と、前作にしてデビュー作である「妖の華」のみ。
おそらく紅鈴というキャラクターに勝るオカルトキャラを創るのが難しいの
ではないか?と思われる。今回は紅鈴のエロくてカッコよく、そしてコミカ
なキャラが際だっており、新たなシリーズの主役になりそうな予感がした。

この数週間で幾つかの作品を読んでいるが、やっぱり誉田哲也作品の惹きは
強いようで、まぁあっという間に読了。これだけ早いと若干損した気分にな
るのは、ちょっと悔しい(^^;)のだけど。