坂の上の赤い屋根

#イヤミスの教祖


▼坂の上の赤い屋根 / 真梨幸子(Kindle版)

ずっと楽しみにしていた真梨幸子の新作。
タイトルをモチーフにした赤い薔薇の表紙が非常に印象的。帯のキャッ
チコピーは「わたしが人殺しになったのはこの街のせい。」

今回標的になっているのは東京都文京区周辺の「街」と、その界隈に
住むハイソと言われる人々。その名の通りの「教育の街」で起こった
18年前の陰惨な事件、ソレをモチーフとした小説が週刊誌に連載され
る・・・というところから物語は始まる。

・・・いやぁ、相変わらずのイヤミスクオリティ
なにより凄いのは、またしても登場人物に「善人」に値する人がただ
の一人も存在しないこと。序盤から各者の「悪意の展開」が凄まじく、
ストーリーに大きな核を作っている。その流れに乗って読んでいるか
ら、各章の終盤で「マジか!」を連発。結構長い作品なのに、またも
や1日で読み切ってしまった。

この人が世界一のイヤミスメーカーであることはもう間違い無いと思
うが、ミステリー小説を書くテクニックにも注目すべき。この構成は
もう「新型の叙述トリック」であり、読者を目くらませさせる技術に
ついても当代一流。大好きなミステリー作家は多々居るが、今の僕は
真梨幸子をNo.1に挙げる。

しかし、しっかりツボを突いてくるなぁ、幸子サマ。
文京区に全く恨みは無いが、いけ好かねぇ!と感じることが無いワケ
では無い僕(^^;)。茗荷谷に住んでいる人にはとんでもない迷惑だろう
けど(^^;)。

ブクログ躍進!

#目指せ登録1,000冊


読書情報共有サービス「ブクログ」が、かなりアクティブになってきた。

最初に登録したのが2011年1月だから、まもなく9年が経過する計算。
当初はなにかの仕事の関係で登録を余儀なくされた(^^;)気がするのだ
が、現状はここで書いたブックレビュー(マンガ以外)をアチラでまと
めている状況。自分のことをかなりの読書家だと思っていたが、9年で
1,000冊読んでいないのだからそう名乗るワケにも行かない。

で、最近書いたレビューに「いいね」が頻繁に付くようになった。
これはもうユーザーが着実に増えているのが原因で、人気の無い頃から
今までずっとサービスを継続してくれた株式会社ブクログさんのおかげ。

こういう特化型のサイト、非常に好感が持てます。
とにかく僕の登録書数が1,000を超えるまで、なんとか継続して欲しい。
ちなみにフォローはご自由に。僕の本棚は→右に表示されています。

インサイド・フェイス

#エンマ様


▼インサイド・フェイス / 佐藤青南(Kindle版)

2014年第2弾を読んだ佐藤青南行動心理捜査官・楯岡絵麻シリー
だが、この5年で続刊が多々リリースされていた模様。Amazonさん
はこういうのこそリコメンドで出して欲しいのだけど(^^;)。

美人過ぎる取調担当捜査官・楯岡絵麻が、得意の行動心理学を武器に
「自供させずに真実を曝く」物語。態度や言動から確実に嘘を見抜い
た上に、一切の自白無しで証拠を突き止めてしまう、という特異な技
を持つ女性捜査官は今回も大活躍。実際にこんな人が存在するとし
たら、一切の関係を持たない、と予想されるのだが、小説で読むとや
たらに魅力的。そういう5年前の感覚があっという間に蘇った。

今回は連作短編の体で、小さな事件(それでも殺人事件なのだが)が
最終章でやたら不気味で恐ろしい大事件に繋がっていく。その道程に
無理が全く無く、あっという間にのめり込んでしまった。

主人公のキャラ的な魅力ももちろん、ミステリーとしての題材選択、
構成など、このシリーズは全ての面で平均して面白い。現在のところ
全7冊、ということはあと4冊分楽しめる。一気だな、きっと。

猪木伝説の真相

#人の人生をカンタンに変える男


▼猪木伝説の真相 天才レスラーの生涯 / V.A.

僕が何十冊か所持している「猪木本」に、また新しい一冊が加わった。
宝島から出る猪木本だから、もちろん証言シリーズの形式を踏襲。
「不世出」と表現される史上最高のプロレスラーアントニオ猪木
ついて、その周辺に居たプロレスラーや関係者へのインタビューをま
とめたモノ。驚くべきは、猪木本人もインタビューに応えていること。

物心がついた頃から今に至るまでアントニオ猪木は僕の「神」である。
猪木が黒と言えば白いものでも黒だし、猪木が右に行けば当然自分も
その方向に進む。「猪木信者」というのは本当によくできた言葉で、
同じような感情を抱き続けて今に至っている同士がウジャウジャ居る。

アントニオ猪木はプロレスを「たかがプロレス」にしなかった人
僕はテレビで猪木の大一番を見る度にどんどん魅了され、取り返しの
付かないところまで来てしまった。総合格闘技やボクシングにも印象
的な試合は幾つもあるが、それよりも真剣に見ていたのが一連の異種
格闘技戦大木、シン、ハンセン、ラッシャー木村らとの闘いで、今
になっても一連の流れを思い出せる。たかがファンである僕がそうな
のだから、同業者であるプロレスラーたちの猪木へのリスペクトは相
当なもの。どのインタビューを読んでも、それを強く感じた。

そんな猪木だが、さすがに残された時間はそれ程多くない気がする。
もし猪木に何かあった場合、僕がどんな精神状態になるのか皆目見当
が付かない。ずっと大好きだったプロレスから離れるとしたら、その
時なのかなぁ、という気もするが、果たして・・・。

この本を読んでも、いわゆる「謎」は解明されない。しかし、僕と同
じくアントニオ猪木に人生を変えられた人たちは読まずには居られな
い筈。特に佐山聡、前田日明、藤原喜明のインタビューは必読。
かなりイケます、この本。

パンクライナーノート

#Punks Not Dead


▼パンクライナーノート / 森脇美貴夫

このところオリジナルパンクの楽曲を多々聴いているのだが、その途中
フッと思い出した本が↑↑コレ。若かりし頃に熟読した本で、今でも
どこかにある筈なのだけど、探索は困難(^^;)なので古本を当たってみた。

懐かしきJICC出版(現宝島社)から発売された音楽本。
著者の森脇美貴夫とは、音楽評論家にして雑誌「DOLL」の編集長。そし
てインディレーベル「City Rocker」の主宰者であった人。今現在、存命
なのかどうかもハッキリ知らないのだが・・・。

昔はこの本に載っているレコードが全て欲しかったことを思い出す。
あの頃、この手のジャンルのレコードは当然レンタル屋には存在しなか
ったし、FMラジオでオンエアされる機会もほぼ無かった。従って普通
に購入するしか聴く方法は無かったのだが、その頃には既に廃盤だった
りするからタチが悪い(^^;)。新宿の中古レコード屋で見掛けても、法外
なプレミアが付いてたりしたから、指を咥えるしか無かった。

じゃあ、今ならどうか?と言うと・・・。
Apple MusicSpotifyAmazon Musicでは、オールドな音源がかなり
の確率で発見出来る。ピストルズダムドジャムも、なんならDEVO
ゲイリー・ニューマン定額普通に聴ける価値観の問題はともか
くとして、なんとすばらしい時代になったことか。

ただ、この本に載っているアルバムはおおよそ聴いていたことも判明。
音楽にある程度お金を使えるようになってからも僕の音楽的な趣向は殆
ど変わらず、知らぬ間にパンクライナーノートをなぞっていたらしい。
それが確認出来ただけで、ちょっとした満足感が。

Punks Not Dead.
この言葉、もしかしたら今の世では死語なのかもしれないが、おそらく
僕はずっと引き摺ったまま最後を迎えると思う。そりゃあパンクは死な
ない。何故なら僕は、きっと死ぬまでパンクを聞き続けるのだから。