証言 新日本プロレス「ジュニア黄金期」の真実

#僕らのライガー


▼証言 新日本プロレス「ジュニア黄金期」の真実 / V.A

順調に冊数を伸ばしている宝島「証言」シリーズの最新作は、新日ジュニア
80年代にジュニア黄金期を築き、世界中に新日ジュニアをアピールする、と
いう偉業を成し遂げ、まもなく引退する我らの獣神サンダー・ライガーに関
するインタビュー集である。

証言シリーズはある意味「歯に衣を着せない」感じの文章がウリだったと思
うのだが、今回は全くそういう雰囲気が無い前田藤原を始めとする大物
もインタビューに応えているのだが、毒舌でならす彼らからすら、ライガー
に関する「悪口」が一つも見えない。ファンだけでなく、同じプロレスラー
や業界関係者からもリスペクトされているライガー。僕らの宝物である。

もう引退まで2ヶ月とちょっと
ライガーの居ないプロレスがどんな風景になるか、今はなんとも言えないの
だが、改めて残りのライガーを最後まで見届けよう、と思った。

スーパージュニアに、そして世界の獣神に栄光あれ!

掃除屋

#THE CLEANER


▼掃除屋 プロレス始末伝 / 黒木あるじ(Kindle版)

最近Amazonのレコメンドで頻繁に表示されていた作品。
まぁ、プロレス関係の書籍をあれだけ購入していればそうなるのもしょ
うがないのだけど(^^;)。丁度読むべき本が切れていたところなので、
取り敢えず読んでみた。

関係各所・・・団体社長とか・・・からの依頼を受け、対戦相手リング上で
制裁引退・廃業ないしは長期欠場に追い込みながら、試合にはキッチ
リ負ける、という裏稼業をこなすフリーランスのベテランプロレスラー
が主人公。かつて試合中のアクシデントで親友を再起不能に追い込み、
その医療費を稼ぐために「仕事」を行う。そんな主人公に重大な疾患
発見され、最後の舞台を模索するのだが・・・という内容。

最初に言っておくべきだと思う。コレ、設定にハッキリと「無理」があ
ります、ええ(^^;)。問題のある選手をリング上で制裁する、という場面
は本当に稀に実現すると思うが、それが「商売」になる、というのは考
えづらい。もし現実にこういう事態が発生したら、該当の選手は一発で
仕事を無くす。ソレをバレないようにやっている、と言われても、関係
者に解らない人間なんて居ないような・・・。

そして最近のプロレス小説には珍しく、ケーフェイへの踏み込みが曖昧。
そこらへんでやや不満になるのは、僕があまりに擦れてしまった所為
と思うんだけど・・・。

でも!
そういう感じで難点は幾つも見つかるのだが、この小説は「熱い」
若い選手にバトンを渡す場面や、クライマックスで命のかかった危険な
試合に臨む主人公が大ピンチから脱する場面などは本当にちょっと泣い
(^^;)。この作者はきっとプロレスファンの気持ちをよく解っている

当然、黒木あるじという作家はこれまで聞いたことの無い名前。
調べてみるとホラー・怪談系の作品を多々書いている人らしい。ちょっ
と読んでみようかな、プロレスファンの描く怪談を。

背中の蜘蛛

#マジでゾッとする話


▼背中の蜘蛛 / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也待望の新作は得意の警察小説
僕の知る限り完全なる書き下ろし、全くの新シリーズ。これがとんでも
なく「恐ろしい話」だった。

いわゆる「プライバシー侵害」に関する話。それも、今や現代の必需品
とされている携帯電話の盗聴について。警察の捜査に現状違法とされる
テクノロジーをどこまで用いて良いのか?という現代的な命題が問われ
る問題作である。

怖いのは、ここで使われている各種ハイテク機器が、おそらく現存して
いる、という事実。法律が変わり、そういう機器類の使用がもし許可さ
れたら、とか考えると、マジで背筋が寒くなる。現実的にもマイナンバ
ー制度の導入でそういう土壌は完成しつつあり、完全監視社会の実現は
もうそこまで来ている。

・・・個人的にも思い当たる節が無いでも無い。そういう意味で、本当に
ゾッとする凄まじい作品

帯にある「読後、あなたはもうこれまでの日常には戻れない」にウソは
無い。誉田哲也が本領を発揮した傑作、覚悟して読むべし!

プロレスまみれ

#ケーフェイ?関係ねーよ!


▼プロレスまみれ / 井上章一

タイトルに「プロレス」と付いており、しかも宝島からのリリース。
井上章一という著者が全く知らないのだが、だとするなら一応購入して
おいた方がいい、ということで入手した新書なのだけど・・・。

井上さん、なんと京大の教授らしい(^^;)。
この偉い先生が、主に「プロレスとTVの関わり」について書いている本。
最近の出版物らしく、ケーフェイとかを全く気にしていない内容(^^;)。

とはいえ、かなり好感は持てる。
少なくともこの人はプロレスに対してかなり「愛情」を持っていること
がよく解るし、訳知り的なイヤな印象も無い。思っていることをストレ
ートに表現した、と解釈する。

でも、それが面白いかというとちょっと(^^;)。
こういうのは本で読むのでは無く、居酒屋とかで同好の士たちと語るべ
きことで、文章で読むほどのことは無い気が。さらにひらがなを多用し
た文体、きっと「狙い」なんだろうけど正直読み辛い(^^;)。

惜しかったなぁ、コレ(^^;)。
邪推流のプロレスの楽しみ方、という着眼点は良かったんだけど・・・。

COVER

#時をかける新人 #東京駅クロニクル


▼COVER 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 / 内藤了(Kindle版)

一昨日第一弾のレビューを書いたばかりの堀北恵平シリーズ、さっそく
第二弾のレビューをば。

新人女性警察官堀北恵平(ケッペー)ちゃん、新たな研修先は「鑑識」
ココで下っ端として捜査のイロハを学ぶ恵平が、またもや「体の一部を切
り取られた女性の遺体がラブホテルで発見される」という猟奇的な犯罪
遭遇。(^^;)の警官、柏村のアドバイスを仰ぎながら、先輩刑事・平野
共に捜査に乗り出すのだが・・・という内容。

犯罪の内容は相変わらずエグく、厳しい捜査現場は容易に想像出来るのだ
が、基軸が「成長する警察官」なため、強い感情移入を以て読むことが出
来る。さらにこのシリーズ、ファンタジーの要素が無理なく効果的に使わ
れているため、物語のエグさを上回るホンワカした感じが全編に溢れ、氏
の一連の作品の中ではいちばん読みやすい作品となっている気が。

正直、ミステリーとしての組み立てはそれ程でもなく、愛好家であればか
なり最初の段階で犯人を特定出来ると思うのだが、コレはそこに至るまで
「行程」を楽しむべき。ケッペーちゃんの更なる成長を、今後も見守り
たいと思います。

そして内藤了、巻末に必ず次作の冒頭をオマケしてくれるのが嬉しい。
次回作もかなりヤバそう。このシリーズ、かなり期待しています!