昭和プロレステーマ曲大事典

#GATE MUSIC


▼昭和プロレステーマ曲大事典 / コブラ

もの凄くニッチなテーマのムック。いや、僕にとっては学術資料的な書籍。
著者のコブラ氏は僕がほぼ定期購読している「昭和プロレスマガジン」にて
毎号昭和プロレスの「入場テーマ曲」に関する記事を書いている人。この分
野では筋金入りの方。

プロレスラー名前で使っていたテーマ曲の検索が出来る、という辞書形式
1曲毎に深い内容の解説が記されており、年代ごとに違うテーマ曲を使用して
いる場合は複数曲がちゃんと掲載されている。

今はもう当たり前だが、「選手入場時に音楽を流す」ことが普通で無かった
時代があり、僕もその頃の記憶がしっかりある。アントニオ猪木「炎のフ
ァイター」で入場するのを初めて観た時は、身体に電流が走った覚えが(^^;)。
コレを思いついた・・・と言うより、「テーマミュージックに乗って入場」とい
うよりプロレスらしい風景を当たり前にしてくれた人に、本当に感謝したい。

しかし昔のプロレス界、「著作権」への配慮が全く無いのがある意味凄い。
今はしっかりオリジナル曲が作られるようになったが、こういう無法地帯も
それはそれで心地よい気も。

まとめてくれたコブラ氏に心からのリスペクトを。
この本のおかげでまたCDを数枚注文することになったのはナイショで。

Fake Fiction

#復讐


▼フェイクフィクション / 誉田哲也

誉田哲也の新作は、久しぶりにストレートミステリー
これまでの有名キャストが一切登場しないピュアな警察小説であり、残虐な
殺人事件が連発する氏お得意の展開。

メインの語り部は二人で、一人は殺人事件の捜査をする刑事、もう一人は現
役を引退して和菓子工場で働く元キックボクサー。この二人の視点が交互に
繰り返される構成なのだが、その様子に大きなギャップがあるのがポイント。
もちろん全く違うストーリーラインに居た筈の二人が、ある人物を媒介にリ
ンクして行く。

絶対悪として登場するのが新興宗教団体、いわゆるカルト教団であり、誉田
哲也の宗教観が垣間見えるのが非常に興味深い。誉田哲也の見解は僕にとっ
て「そうそう!」と思わずヒザを叩く程の共感度。こういうことを物語の流
れの中にサラッと入れてくるところがカッコイイ。

殺人状況のグロさ、ドロドロな人間模様、展開の激しさ、意外な真実など、
誉田哲也のエッセンスが一冊の本に凝縮されている感。もしかしたらこの作
品、誉田哲也の入門編として最適かも。

非常にオススメ。
それはそれとして、姫川シリーズの続編もなるべく早くお願いします!

能面検事の奮迅

#無表情


▼能面検事の奮迅 / 中山七里(Kindle版)

中山七里「能面検事」続編
シリーズ化を望んでいて作品だが、4年近くも空けられるとさすがに前作の
内容があやふや(^^;)。コレを読む前にざっと読み返しました、前作(^^;)。

大阪地検エースにして「能面」の異名を取る一級検事不破俊太郎が今回
挑むのは、森友・加計問題をモチーフにした収賄疑惑。リアルな事件の方は
底が丸見えの底無し沼だったが、コチラは悲しい人間ドラマを絡めた見事な
ミステリー。お得意の「どんでん返し」が、やたらに大きなスケールで迫っ
て来たのだから凄い。

検事が主役のストーリーと言えば、代表的なのはTVドラマ「HERO」
アチラは基本ファニーな空気に包まれているが、コチラはストイックでクー
ルなイメージ。しかし、【真実の追究】を一義に考えているところは共通し
ており、そこに痛快さ清涼感がある気がする。

・・・で、考えてみた
もし、正義感のカケラも無いザ・悪徳天才検事が主人公の作品があった
ら、それは大層魅力的なのではないか?と。そういう作品が書けるとすれば、
それはもう中山七里を於いて他に居ない気がする。やってくんないかなぁ、
そういうの♪

嗤う淑女 二人

#最狂タッグ


▼嗤う淑女 二人 / 中山七里(Kindle版)

中山七里「嗤う淑女」シリーズ第三弾
基本、僕のブックレビューはなるべくネタバレしないように書いているつ
もりなのだが、さすがにコレは少々ネタバレしないと書けないレビュー。
気になる人はココで読むのを止めて欲しい(^^;)。

『悪女王』こと蒲生美智留がまたもや降臨。今回は単独行動ではなく、と
んでもないタッグパートナーを伴って現れた。なんと有働さゆり(!)。
カエル男であの古手川刑事をボコボコにした殺人マシーンが、よりにもよ
って美智留の側に。二人のサイコパスが、とんでもないレベルの連続殺人
を淡々と実行する・・・。

・・・いや、さすがにちょっと怖すぎ(^^;)。
全5篇連作短編だが、巻き起こる殺人事件はどれも凶悪グロく、ちょ
っと吐き気を催すほど。何よりも怖いのが、どの犯罪も下手すれば実行可
能なのでは?と思わせるほどのディテールの深さ。もし自分がその場に居
合わせたら、とか考えると、本当にゾッとする。

お得意の「どんでん返し」もしっかり健在。各話で必ずどんでん返しを用
いたオチが用意されているし、ラストに関しては本気で唸った。今後続い
て行かざるを得ない物語が、既に楽しみでしょうがない状態。

好きだなぁ、このシリーズ。早い段階で続編が出るといいんだけど。

林檎の樹の下で

#Macintosh


▼林檎の樹の下で / 斎藤由多加

1996年の作品だから、今から四半世紀前のモノ。
コンピューター関連書籍は普通1年も経過すると何の役にも立たなくな
るのが常だが、この作品はソレに当てはまらない。なぜなら、ここで描
かれる物語の時系列はApple Computer設立からMacintosh誕生、そし
て創業者であるスティーブ・ジョブスの更迭までの期間。黎明期のアッ
プルに、日本人がどう関わったのか?を描いた人間ドラマだからである。

作者の斎藤由多加氏は、この作品の後に「Tower」というシミュレーシ
ョンゲームを世界的にヒットさせ、その後ドリキャスで「シーマン」
リリースしたIT偉人週刊SPAで連載されていたコレが、僕は毎週本当
に楽しみだった。

登場してくるマシンは、Apple IILISA、そして初代Macintosh
この時代はおそらくMacintosh Classic初の廉価Macとして発売された
頃で、アップルは当時ようやくパソコンに興味を持ち始めていた僕の憧
れのメーカーだった。そこにかなりの“問題”があった事が非常によく解る。

コレは僕の本棚の隅から発掘された古書
今現在は絶版なようだが、Amazonでは古本も販売されているようなの
で、日本vsアメリカ熾烈なビジネス闘争をぜひ味わって欲しい。

そういえば、昔貰ったApple IIがまだ実家にあるハズなんだけどなぁ・・・。
さすがにもう捨てられちゃってるかな?