初恋さがし

#イヤミスの女王 #高田馬場


▼初恋さがし / 真梨幸子

真梨幸子の新作は、前作の「ツキマトウ」に続く連作短編集
高田馬場という絶妙過ぎる場所女性スタッフばかりの探偵事務所を営む女社長
と、その周辺の人たちを描いた作品。

この事務所、「あなたの初恋の人を探してみませんか?」という、よく考えてみ
ればすっごく恐ろしいキャッチコピーで客を増やしているのだが、やっぱり厄介
な問題が多々起こって・・・という、ある意味普通な内容。

こう書くとユーモアミステリー的な雰囲気も漂うのだが、この本を10ページも
読めばそんな要素は微塵も無いことに気付く筈。真梨幸子という稀代のイヤミス
メーカーの才能は相変わらず冴えており、全編が人間の醜い部分の博覧会か、っ
てくらいの悪意に満ちている。この作家が凄いのは、出世作となったフジコも、
更にはそれ以前の作品からずっとそういう作品を書いていること。普通、これだ
け続くと書く方も読む方も絶対に「飽き」が来るのだけど、各作品ごとにそれぞ
れのカラーを出してくるから、興味が途切れることは無い。当たり前のように当
たり前のモノを出すことがどんなに難しいことかを体感的に知っている僕として
は、この仕事は驚異以外の何物でも無い。

そして、今や真梨幸子のもう一つの必殺技と言って過言の無い「ミスリード」
この作品でももちろん健在。読み終わった瞬間、暗黒の中に居る自分にゾッとし
ながらもニヤニヤ出来る、という、現段階で最狂のイヤミスだと思う。

今回は珍しく電子書籍版の同時リリースが無かったので、久々にハードカバー
購入。置き場所の問題から最近は出来るだけ紙の本を買わないようにしていたの
だけど、コレに関しては全くガマン出来ませんでした(^^;)。

イヤミス最高峰の実力が如何なく発揮された快作。
サイアクの読後感をお求めの方、是非に!