#四天王プロレス #超世代軍
元週刊プロレス編集者・市瀬英俊による、全盛期の全日本プロレスの回顧録。
主要登場人物は三沢光晴・川田利明・田上明・小橋建太、いわゆる全日四天王
の4名に加え、G馬場・J鶴田・天龍源一郎・菊池毅・秋山準・Sハンセン他。
天龍革命後期から三沢のNOAH設立までの時期、週プロで全日本を担当しなが
ら、編集長のターザン山本と共に影のマッチメイカーを勤めた、とされる作者
の、強大な思い入れが詰まった作品。
あの頃の全日本に対する僕の思いは、非常に複雑なモノがある。
生まれてから今に至るまで、基本猪木信者である僕にとって、全日本プロレス
とは目の上のたんこぶ。三銃士の時代を迎えていた新日本プロレスに対し、そ
の試合の激しさで真っ向から対抗した全日本は、正直やたらウザかった。
が、一度でも試合を観てしまうとそういう感情は引っ込めざるを得ない。
何故なら四天王の繰り広げたプロレスはその説得力が尋常では無かったから。
相手の技をけして避けず、首だろうが腰だろうが、ほぼどんな部位でも対戦相
手に無防備に差し出す。そればかりが、投げ技を本当に「脳天」から落とすの
だから、そういう試合を魅せてくれる選手たちに文句などある筈が無い。対極
に居た筈の新日ファンさえ黙らせたのだから凄い。
・・・四天王全員が(事実上)リングを去っている今、「四天王プロレス」の是非
を問う論争が各所で起こっている。論調は「やはりやり過ぎ」「選手も客も異
常だった」、そして「今のプロレスをダメにした」など、正直肯定的な意見は
殆ど出ない。本来これは我々ファンの側が論じて良い内容でないことは明白。
なぜなら、我々が「求め」なければ、彼らは「実行」しなかった筈なのだから。
だから。
誤解を恐れずに、そして失礼を承知で書くのだが、市瀬英俊にこんな作品を書
いて欲しくなかった、というのが本音。あの頃の週プロは間違い無く今起こっ
ている事態の主犯であり、我々も間違い無く共犯者である。あの時代で麻薬の
ような高揚感を味わった我々が今できる「贖罪」とは、人間を破壊してしまう、
もっと言えば人の命を奪ってしまうような「過剰さ」を、プロレスに出来るだ
け求めないことなんじゃないか、と僕は思っている。
市瀬さんはこの本を書くことでどうしたいのか?が、正直見えてこない。
今後のプロレス界に警鐘を鳴らすことが目的なのか、それとも単に「あの頃は
凄かった」なのか。臨場感はたっぷりだし、文章にもさすがの迫力がある。
それだけに、目的を曖昧にしたまま終わってしまった感のある構成はちょっと
残念。あの頃の署名原稿のような、一刀両断さが欲しかったなぁ・・・。