#ブルータス光秀
糖尿病が原因で片足切断を余儀なくされたプロレスラー、谷津嘉章
の初の著書。実はこの本、リリースを知らされた時からちょっと期
待していた作品。最近のプロレス関係の諸誌で読む谷津のコメント
が非常に興味深く面白いものばかりなのがその原因なのだが・・・。
根本的なことを言うと、谷津嘉章というレスラーには全く思い入れ
を持っていない。日本アマレスヘビー級最強とまで称された男だか
ら、強いことは間違い無いし、プロレス自体も決して下手では無い。
ただ、本書で本人も述懐している通り、その印象はいつも中途半端。
その証拠に、これだけ長い間プロレスを観ているのに、谷津の試合
で「名勝負」と感じた試合がただの1試合も無いのだから。
正直、この本の構成にもその「中途半端さ」を感じた(^^;)。
例えばWJに関する件についてはもっと突っ込んで喋って欲しかっ
たし、谷津ほどのボキャブラリーがあればソレが出来た気がする。
だけど・・・。
谷津嘉章。
とにかく「気の毒」としか言い様の無いアマレス・プロレス人生。
メダル確実と言われたオリンピックは国がボイコットするし、プ
ロレスデビュー戦ではあり得ないくらいボロボロにされるし、凱
旋帰国したと思ったら維新軍に組み込まれるし、総合格闘技に出
る頃には年取ってるし、と一事が万事でそんな状況。コレに加え
てWJの歴史的な大失敗、さらには後に起こした事業の失敗に加え、
壮年を過ぎてからの片足切断。これがもし自分だったら、と考え
ると、本人には申し訳無いが「死にたくなる」と思う。
それでも全てを受け入れ、今も必死に生きている事実はリスペク
トに値する。これまでは好きでも嫌いでもないプロレスラーだっ
たのだが、この本を読んだ後はけっしてキライでは無いところま
で心が変わった。谷津嘉章の今後に、光があることを切に願う。
・・・あ、印象に残っている試合が1つだけ。
正規軍vs維新軍の5vs5勝ち抜けマッチ、高田伸彦戦。後に延彦
と名前を変える高田の出世はここから始まった。おそらくこの時
の高田の対戦相手が谷津でなかったら、その後の高田は無かった
気がする。良かった、1試合でも見つかって(^^;)。