#量販店
Kindle Unlimited × 講談社のフェア作品からのチョイス。
三才ブックスとか晋遊社とかから出てるちょっと怪しいMOOKと勘違い
しそうなタイトルだが、なんとコレはミステリー小説。嶋戸悠祐という
作家は当然初めて。
舞台は地方によくありがちな大規模家電量販店。
地域密着型『街の電器屋さん』の一人娘、事故で仕事の出来なくなった
父親の店を再開するため、高校卒業後に量販店での修行を決意。業界で
No.1のカスタマーサービスを謳う量販に入社したが、実際の店の方向性
は真逆の利益至上主義。上司の係長と真っ向から対立しながらも、顧客
第一主義を貫こうとする。一方、その係長の方にも大きな問題があって
・・・という内容。
まず、量販という難しいを素材でちゃんとミステリーを組み上げた技術
は素直に凄い、と思う。冒頭で主役だと思われたキャラが早々に脱落し
たのには唖然としたが、店舗運営の実態が明らかになって行くに連れて
緊張感が溢れてくる。トリックは荒唐無稽ではあるのだが、納得出来な
い程では無い。はぁ、そう来たか!と思わず感心してしまった。
ただまぁ・・・。
2022年リリースの作品と考えると、さすがに状況設定にリアリティが
無い気がする。僕は『街の電器屋さん』を否定しないし、今も時折お世
話になっているのだが、おおよそは“工事”が絡む時。例えば照明のスイ
ッチがバカになった、とか、コンセントから火花が吹いて使えなくなっ
た、とか。通常の家電商品は量販やネットでとにかく価格が安く、自分
の希望にあった機能があるモノを自らチョイスする。当然、販売店に対
してサポートは殆ど求めない。
この状況は最近に始まった事ではなく、30年以上前からそうしている。
ここ最近は小売りを中心とした『街の電器屋さん』を殆ど見掛けないこ
とを考えると、状況設定にちょっと無理があった気がする。
単純に、風変わりなミステリーとして楽しむのが吉。
心情描写は見事なレベルなので、機会があれば他の作品も読んでみたい。
他の著作を調べると、どうやら得意なのはイヤミスらしいんだけど・・・。