#一本釣りミステリー
Kindle Unlimitedで発見、タイトル買いした作品。
赤松利市という作家はもちろん初めてなのだけど、高齢になってからデ
ビューした曰く付きの人物っぽい。この作品で長編デビューとのことだ
が、その当時は無職のホームレスだったとか。
醜悪な容姿にコンプレックスを持つ主人公の属する漁業船団「雑賀衆」
は、紀州雑賀崎発祥の一本釣り漁師たちの集まり。彼らの獲る魚、品質
は一級品だが、網を使った大量捕獲の漁には数で勝てず、漁協にも加盟
出来ない。船頭の買い上げた瀬戸内の無人島を拠点に、唯一の取引先で
ある料亭に収穫を卸し、細々と最低限の生活を余儀なくされている。
そんな彼らに、料亭の女将から大きな仕事の話が持ち込まれて・・・とい
う内容。
とにかく、時代から見放されたアウトローの集団「雑賀衆」のメンバー
が、全員恐ろしく個性的。どちらかと言えば負の部分が強調されている
ので、憧れや共感を抱くことは出来ないが、その破滅的な生き方に妙な
魅力を感じる。特に痘痕顔で女性恐怖症の主人公が小金を持ち、あから
さまに変わっていく様子は、やたら人間臭くて非常に良い。
残念ながらミステリーとしての構成はそれ程でも無く、結末は正直読め
てしまったのだが、ソレを補って余りあるレベルの濃密な人間ドラマ。
赤松利市は他にも魅力的な煽り文の作品が多々あるので、片っ端から読
んでみようと思います。
・・・雑賀衆の持ってくるサバは美味いな、きっと。