#一本釣りミステリー


▼鯖 / 赤松利市 (Kindle版)

Kindle Unlimitedで発見、タイトル買いした作品。
赤松利市という作家はもちろん初めてなのだけど、高齢になってからデ
ビューした曰く付きの人物っぽい。この作品で長編デビューとのことだ
が、その当時は無職ホームレスだったとか。

醜悪な容姿にコンプレックスを持つ主人公の属する漁業船団雑賀衆
は、紀州雑賀崎発祥の一本釣り漁師たちの集まり。彼らの獲る魚、品質
は一級品だが、網を使った大量捕獲の漁には数で勝てず、漁協にも加盟
出来ない。船頭の買い上げた瀬戸内の無人島を拠点に、唯一の取引先で
ある料亭に収穫を卸し、細々と最低限の生活を余儀なくされている。
そんな彼らに、料亭の女将から大きな仕事の話が持ち込まれて・・・とい
う内容。

とにかく、時代から見放されたアウトローの集団「雑賀衆」のメンバー
が、全員恐ろしく個性的。どちらかと言えばの部分が強調されている
ので、憧れや共感を抱くことは出来ないが、その破滅的な生き方に妙な
魅力を感じる。特に痘痕顔女性恐怖症の主人公が小金を持ち、あから
さまに変わっていく様子は、やたら人間臭くて非常に良い。

残念ながらミステリーとしての構成はそれ程でも無く、結末は正直読め
てしまったのだが、ソレを補って余りあるレベルの濃密な人間ドラマ
赤松利市は他にも魅力的な煽り文の作品が多々あるので、片っ端から読
んでみようと思います。

・・・雑賀衆の持ってくるサバは美味いな、きっと。