水族館ガール

▼水族館ガール / 木宮条太郎(Kindle版)

NHKでオンエア中のドラマ「水族館ガール」がかなり面白い状況。
良い機会なので、Kindleストアで同名の原作を購入。木宮条太郎という作家は
もちろん初めて。現在のところ、3作シリーズになっているらしいのだが、
取り敢えず1作目を購入してみた。

この原作とドラマの脚本は、思った通り細かな設定が多くの場面で違う。
“市役所の観光課に勤務する女性公務員が系列の水族館へ異動”、というシチュ
エーションの方が、ドラマの“商社勤務のOLが理不尽な陥れで水族館へ左遷”
よりも自然な流れ。さらに登場人物の設定も原作の方が“無難”なので、ドラマ
で感じられたインパクトが、原作ではかなり薄まってしまっているのが残念。

そして後半部分で展開されるラブコメ的な要素が、正直ドキドキしない(^^;)。
特に何度も登場する主人公2人が見る「夢」の描写はハッキリとしつこく
そういう部分が好きな読者に対しては、かなり逆効果な気さえするのだが・・・。

とはいえ、「水族館」という、知っているようで知らない業務を、かなり掘り
下げている部分は評価に値する。立ち位置が明確になった主人公のこの先も、
正直言えばかなり気になる(^^;)。取り敢えず、シリーズは読破しとこうかな?

ZERO

▼ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

藤堂比奈子シリーズ第五弾
今のところこの第五弾がシリーズ最終作であり、ここで一段落付けるかなぁ、
と思っていたのだけど・・・。

なんと、シリーズ初の連続モノ(^^;)。
今作内では事件は解決せず、次回作「ONE」へ繋がる構成。ラストも完全に
「続きは来週」的な仕上がり。いや、次作が既にリリースされているのなら
全く問題無いのだけど、秋まで待たなきゃいけない、ってのはちょっと(^^;)。

今回の作品ではこれまでのシリーズに登場した“稀代のヒール”が不気味な復活
を果たす。以降で「悪の首領」的な動きをするのはもう明白であり、一方的な
比奈子への因縁をどう転がしていくのかが焦点となる。そう考えるとフリにな
ったこの「ZERO」は良く言えばターニングポイントとも言えるのだが、にし
てもこの溢れ出す“ツナギ感”はさすがになぁ(^^;)。

おそらく次作の「ZERO」と併せて評価するのが良いかと。
我慢の効かない人は「ZERO」のリリースまで待った方が良いと思います。
失敗したな、実際(^^;)。

陸王

▼陸王 / 池井戸潤(Kindle版)

池井戸潤待望の新作はお得意の企業再生モノ
タイトルの「陸王」とは、埼玉県行田市老舗足袋製造メーカー「こはぜ屋」
が新規事業として参入・製作したランニングシューズの商品名。この奇抜な
シューズを軸に展開する、痛快なビジネス物語である。

ハッキリ言うが、これは「下町ロケット」の初作と全く同じタイプの話。
完全なる二番煎じであり、二匹目のドジョウを狙っているとしか思えない。
ところが、この二番煎じがメチャクチャ面白いのだから非常にタチが悪い(^^;)。

要因はいくつかあると思うのだが、まずは会社の規模感
ロケットの佃製作所も下町の中小企業ではあったのだが、いくつもの特許を所有
するハイテク系であり、従業員も数百人は居る会社。ところが、埼玉県行田市
いう微妙な地域に本社を構えるこはぜ屋は、社歴こそ100年を超える老舗ではあ
るが、従業員数はお針子のお姉様方を含んで20数名の中小にも満たない零細企業
主力商品は足袋もしくは地下足袋であり、今この時代に爆発的に売れる商品では
ない。無論、業績はジリ貧。そういう意味で言うと、佃製作所よりも我々庶民
シンパシーを感じやすい会社であるところがまず一つ。

そして、アイテムに対する親近感
ランニングシューズジョギングシューズはロケットエンジンのバルブシステム
や心臓の人工弁よりも確実に身近であり、思い入れを持ちやすい。試行錯誤を重
ねて形になっていくランニングシューズの形状を想像するのは楽しいし、実際に
は存在していない靴に妙な肩入れすら(^^;)。

つまり、下町ロケットよりも全てに於いて「等身大」な話であるところが、
最強の二番煎じを成立させている由縁。いや、やっぱりすげぇな、この作家♪

そして、内容はもちろんワンピースを彷彿とさせる「仲間たち」の物語。
終盤では「足袋屋」を小馬鹿にされると腹が立つくらいのめり込んでしまい
ましたよ、ええ。

ワンピースと言えば、タイトルの「陸王」“奇跡の王”こと、ドレスローザ
リク・ドルド三世(リク王)を連想。そう言えばあちらのリク王も庶民の英雄
だった。もしや池井戸潤、そこまで計算してたのか??
・・・もちろん、考えすぎだとは思うんだけど(^^;)。

LEAK

▼LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

藤堂比奈子シリーズ第四弾
さすがに4作目まで来るとキャラクター個性が完全に確立され、物語に入り
込みやすくなった。いわゆる「いつもの連中」感が出て来て、まるで家族の
お話を読んでいるよう。っても、内容はまたしても「猟奇犯罪」なのだが(^^;)。

今作のテーマは「義勇」で良いかと。
絶対的な犯罪者であるのに、法の網目をくぐって裁かれないままでいる「悪」
を、アメージング過ぎる義勇軍成敗するエピソード。心情にバシバシ訴えて
くる話なのだが、その手段はやっぱり猟奇(^^;)なのが凄い。

全ての死体に尋常では無い量の現金・・・硬貨・紙幣取り混ぜ・・・が詰め込まれ、
その重さで検死が難航する、という恐ろしい状況。設定の異様さは相変わらず
なのだが、前作よりもミステリーとしてきっちり落とし込んでいるのが見事。
全ての面から見て、完成度はさらに上昇。一作ごとに高いカーブで急成長して
いるシリーズで、読了した瞬間に次作が読みたくなるほど。

このシリーズ、残すところあと1作。間もなく始まるTVドラマで注目度は更に
上がると思う。なるべく長い間、続編を出し続けて欲しい。良いです、うん。

AID

▼AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 / 内藤了(Kindle版)

内藤了・藤堂比奈子シリーズ第三弾、光りの速さで読了!
「AID」と題された今作は、このシリーズのターニングポイントになりそうな
かなり“苦しくて切ない”物語である。

今回のテーマは「自殺」
腐乱自殺死体爆発事件を皮切りに、八王子西署関内で次々に起こる自殺事件
一連の事件に共通点を発見した藤堂比奈子猟奇犯罪捜査班が捜査に乗り出し
て・・・という内容。

今回も「猟奇犯罪モノ」としてのベーシックは崩れておらず、あまりにも恐ろ
しい「死」が続々と連なっている。しかし、物語のは間違い無く人間ドラマ
の部分であり、絶望的とも言える孤独に苛まれた人たちの心情を徹底的に描写。
自分に置き換えられる部分が多々あり、読んでいる時は本当に苦しかった

そしてこのシリーズには珍しく、最後まで犯人が判明し辛い構成
ラストはあまりにも悲しい展開な上、実際に過去に起こった犯罪の真相(もち
ろんフィクションだが)まで炙り出す、という重厚な流れ。ミステリーとして
のレベルは格段に上がっている。

・・・いやぁ、予想通りハマったな、このシリーズ。
残るはあと2冊なのだが、週内で完全読破しそうな勢い。こうなったらもう、
毒を食らわば皿まで。読み切るぞ、速攻で。