6月31日の同窓会

▼6月31日の同窓会 / 真梨幸子

名実共にイヤミス教祖の位置まで上り詰めた、真梨幸子サマの新作。
タイトルからして何かある、と思わずにいられない「6月31日の同窓会」

あるお嬢様系女子高に在籍したOGたちが、続々と不審死を遂げて行く話。
死ぬ人・殺す人・死なない人と、登場人物は多様だが、基本的にほぼ全員
がこの学校のOG。お嬢様学校にもかかわらず、全員に深すぎる。まぁ、
とにかくゾクゾク来ます、この設定は。

ちょっとだけ残念だったのは、その登場人物の多さから来る混乱。
ミステリーとして実に秀逸な展開なのは間違い無いが、コレがアレでソレ
がダレ、とか確認しながら読んでいてもちょっとカオスになる部分が。
もちろんラストで徹底的なオチを付けてくれるから、チャラで良いのだが。

相変わらず、人の悪意の描写があまりに凄い。
おそらくこの分野では最高峰に居る、と言っても全く過言が無い。
最近、フジコジュンコの映像化でかなり人気が高まっているが、根本の
スタンスを変えずに作品を発表し続ける姿勢がすばらしい。

以降も最悪のイヤミスを書き続けて欲しいな、幸子サマ!

ミャンマーの柳生一族

▼ミャンマーの柳生一族 / 高野秀行(Kindle版)

Kindleストアの日替わりセールになっていた作品。
とにかくもう表紙のインパクトがもの凄い、高野秀行のノンフィクション。

直木賞作家船戸与一「河畔に標なく」を書くために訪れたミャンマー
軍事政権下の国で彼が通訳として雇ったのが、早稲田大学探検部の後輩で
同じく作家の高野秀行。この二人の取材旅行の紀行文でありながら、ミャ
ンマーという謎の国の実態に鋭く踏み込んだ、それでいて抱腹絶倒間違い
無しの、あまりにアバンギャルドな作品である。

当時のミャンマーの情勢を江戸幕府になぞらえ、解りやすく的確に説明。
読んでいるうちにミャンマーが日本のどこかと勘違いしてしまうくらいの
ハマり具合。独裁政権・検閲・麻薬・裏取引など、扱っている話題はひた
すら重い筈なのに、どこか痛快な風が吹いているかのよう。

従ってノンフィクションとしては邪道中の邪道だが、笑いの中にキッチリ
ミャンマーの本質が入っているところが憎い。いや、すばらしいと思いま
す、マジで。

ミャンマーのことで僕が知っていることと言えば、昔はビルマと呼ばれて
おり、水島という名の日本兵竪琴と共に永住した、という有名な物語が
あることと、素手のムエタイと呼ばれる恐怖の格闘技、ムエカッチューア
が盛んなことくらい。やっぱりそれだけじゃないな、ミャンマー。

死神

▼死神 / 篠田節子(Kindle版)

取り敢えず篠田節子強化月間。
今回のチョイスはタイトルがあまりにストレートな連作短編集で、舞台は
東京都下・ある市の福祉事務所。こちらに勤務するケースワーカーたちが
各章の主人公となり、呆れるほど現実離れしながらも妙に生々しい相談者
たちと対峙して行く物語。

存在を知りながら、個人的には長らく謎だったケースワーカーという職業
の一端が垣間見られる作品。そして、福祉事務所というのは、わりと最悪
の状態になった人たちを結構助けてくれるもんなんだなぁ、と感心した。

そして当然のようにドロドロした人間ドラマの中にちょっとした恋愛モノ
心霊モノの要素を入れてくるあたりに作者のセンスを感じる。それでな
くとも重たい素材を、重たいだけの話に終わらせないのはさすがである。

篠田節子、Kindle版で著作まだまだ多数の著作アリ。
しばらく退屈しないで済みそう。

女たちの殺意

▼女たちの殺意 / 松村比呂美(Kindle版)

Kindleストアのリコメンドに出て来た作品を何も考えずに購入。
こちらもタイトル通りのドロドロ系短編集。全5話に共通しているのは、
“基本普通の女性が誰かに殺意を抱き、殺人を実行する”までの心模様が
かなり詳細に描き込まれていること。従って負のオーラ満載・情念の渦
巻く作品集ながら、かなり読みやすいタイプ。

そして、どの話もアイデアが実に秀逸
特に2話目「茶箱」。語り部は被害者であり、読者が徐々に理解出来る
ように結末へと向かう。しかし最後には仰天する、という見事な構成。
松村比呂美、もちろん初めてだが、篠田節子とはまた一味違う読ませる
タイプの作家さんの模様。

これはどこかで他の作品も読まなければ・・・。
読書に関しては勘が冴えてるな、最近。

家鳴り

▼家鳴り / 篠田節子(Kindle版)

さっそく篠田節子短編集2冊目。
「家鳴り」は、「やなり」と読む。こないだの「コミュニティ」より
ちょっと新しい作品で、タイトルロールを含む全7篇のホラー短編集

こちらもとにかく怖い話ばかりなのだが、ドロドロの人間ドラマから
ファンタジーの香りのするものまで、振り幅はかなり広い。だからと言っ
て本質の怖さは全く損なわれておらず、どの作品もレベルが非常に高い。

印象に残ったのは、残酷な事情である施設に送られた少年の不思議な顛末
を描いた「青らむ空のうつろのなかに」と、もしかしたら自分もそうなっ
てしまうかもしれない要素満載のタイトル作「家鳴り」
ただし、他のエピソード全ても総じて面白く、一冊の中にハズレは無い。

こうなってくると気になるのは長編。誰かこの作家に詳しい人、推薦して
くれないもんだろうか?