お電話かわりました名探偵です

#変則安楽椅子探偵


▼お電話かわりました名探偵です / 佐藤青南(Kindle版)

お久しぶりの佐藤青南作品。
非常に印象深い日本語のタイトルで、ここから想像できる通りの内容だが、
一捻りがあるところが非常に佐藤青南らしい。

いわゆる【安楽椅子探偵モノ】なのだが、登場するのは普通に警察官(^^;)。
ただし、通信指令センターという110番通報に対応する部署の警察官である。
この部署には一般からの通報内容のみで事件を解決してしまう凄腕のオペレ
ーターが。その異名『万里眼』

・・・というすばらしい設定
まぁ、お決まりと言えばお決まりなのだが、万里眼は幼さの残るカワイイ
系の女性で、語り部はその部下である冴えない男性警官(ただしイケボ)。
超有能な上司に対し、始終あたふたする様が非常にコミカルな上に、その
慌てっぷりでしっかりミスリードを誘っているところがポイント。

ミステリーとしてもかなりしっかりしており、ハードなマニアもきっと満
足出来ると思う。だからこそ、取って付けたような恋愛要素が正直ジャマ
だった。その辺りの真相は、是非続編で明らかにしてもらいたい。

まぁとにかく、かなりオススメ出来る良作。
この作家、個人的にかなり評価してますよ、本当に。

マンガ万歳

#唯一無二


▼マンガ万歳 画業50年への軌跡 / 矢口高雄

昨年他界されたマンガ家・矢口高雄氏の追悼書籍
秋田魁新報で連載されていた「シリーズ時代を語る」をまとめたものだが、
テイストはエッセイ。どうやら矢口先生が逝く直前まで、ご本人を含めた
編纂が行われていた模様。

幼少期や青年期の思い出話はもちろん、を患い72歳創作活動を停止
た時期のことまでがしっかりと描かれている。文章量はけして多く無いが、
エピソードのチョイスに過不足を一切感じない。

圧巻なのは表紙と巻頭のカラーグラフ
表紙の「鮎の群れの中で微笑む三平」というあまりにも有名なデザインは
もちろん、マンガという枠で括ることすら躊躇してしまうあまりに美しい
原画の数々は永久保存版。これ一冊で「美術作品」としての価値がある。

つくづく残念なのは、釣りキチ三平「天沼の鱗剥ぎ」が世に出ず、幻の作
品となってしまったこと。この本にはその原画の一部と、ストーリーが記
されているのだが、それがあまりに魅力的。もし先生に悔いがあるとすれ
ば、この作品を完成させることが出来なかったこと、だと思う。

鱗剥ぎに関しては完成版をあちらで読みたい。どうかあちらでも、精力的
唯一無二「矢口高雄マンガ」を描き続けてください・・・。

ONE PIECE magazine Vol.11

#ONEPIECE1000LOGS


▼ONE PIECE magazine Vol.11

ONE PIECE 98巻の発売に合わせ、ONE PIECE magazineも最新号発売。
11冊目のテーマは「言葉のチカラ」。この特集にかなりやられた

著名人がこれまでのワンピースの中から印象的な「セリフ」をチョイスし、
それを解説する、という内容。コレにイチイチ反応してしまう自分がいた。

おそらくワンピース、僕にとってこの世の全ての出版物の中で【最重要】
と断言出来る物語。故に、20年以上続いた連載の重要な部分は明確に覚え
ており、言葉が一つ出てくるだけで細かいディテールまで明確に蘇る。
そうなるとどうなるのかというと・・・涙が溢れるんだ、コレが(^^;)。

年を取って明確に「ヤバイ」と感じていることが3つある。
1つ目は『人の名前が覚えられなくなったこと』、2つ目は『目がすぐに
霞むようになったこと』、そして3つ目が『すぐにウルッとくること』
最初の2つに比べれば、涙腺が弱くなったのは大したことでは無い、と思
っていたが、ワンピースマガジンを読んでるだけで号泣、というのはさす
がにちょっと(^^;)。

大泣きするのはルフィカイドウを倒すまで我慢しよう、今後は(^^;)。

週休3日宣言(上)

#どうで荘


▼週休3日宣言 / 嬉野雅道・藤村忠寿

どうでしょう班ディレクター陣嬉野雅道藤村忠寿の新作。
どうやら規模の大きな自費出版で、サブタイトルは「水曜どうでしょうハウ
スにこもって考えたこと」

昨年の緊急事態宣言発令の後、YouTubeチャンネル『藤やんうれしーの水
曜どうでそうTV』にて突如配信が始まった「水曜どうでしょうハウスで野鳥
観察の刑」。我々がステイホームを余儀なくされた時期、自らの番組企画で
建設された北海道・赤平のツリーハウスに巣ごもった藤村Dと、それを見守っ
嬉野D。彼らの【緊急事態宣言】に対するスタンスと、これから変貌せざる
を得ない【働き方】に対する考え方が記載されている。

誤解を恐れずに言えばある種の自己啓発書。降って湧いたような危機を逆手
に取り、働き方に対する考え方を新たにすべき、もともと仕事は「量」より
「能率」が重要で、少ない労働時間で大きな「成果」を上げるのが大事。
テレワークの導入でそれがもっと顕著になる筈だ、という感じか。

単純に、すげぇ人たちだなぁ、と思う。
逆にこういう考え方が出来なければ「水曜どうでしょう」をとんでもないレ
ベルのオバケ番組にすることは出来なかったし、会社員をやりながら好き勝
手ができる、という最高の立場を手に入れることは出来なかった筈。

本来僕ははこういう類の本は斜めに構えてしか読めないのだが、さすがに今
回はいろいろ共感したし、今後のヒントになる言葉をたくさん貰った。どう
やら今年中に【下巻】が出る模様。それも絶対に買い逃がさない、と心に決
めた次第。

だけど一つだけ、僕は彼らよりも先に気付き、それを上回るカタチで実行し
ていることがあった。僕の場合、「3日働いたら4日休め!」(^^;)。もちろん
完全に実践出来ているワケでは無いが、独立後はコレを心がけることで精神
が病むことは少なくなった気がする。
上回っている点は1日休みが多いこと(^^;)。勝ったな、コレは(^^;)。

巨星を継ぐもの

#はぐれ王道


▼巨星を継ぐもの / 秋山準(Kindle版)

3年前にリリースされたプロレスラー・秋山準の著作。
タイムライン的には秋山が“仕方無く”全日本プロレスの社長に就任し、よう
やく経営を軌道に乗せた頃。秋山自身がインタビューに応えるカタチで、そ
こまでの自分のプロレス人生を語る・・・という内容。

残念ながら僕は秋山準というプロレスラーを実力者と認めてはいるが、過度
な思い入れは特に無い。根っからの新日派であり、故に全日本プロレスとい
うブランドにもほぼほぼ興味が無い。であるからこそ、この本で秋山がどん
底にあった全日本プロレスを立て直して行く様を、冷静に確認することがで
きた。

でもねぇ・・・。
この本で秋山は「これからの全日本」についての目標あるべき姿を語って
いる。そのこと自体にきっと嘘は無いし、この本以降で秋山が頑張ったこと
もちゃんと知っている。ただ、全日本プロレスという組織打っても全く響
かなかった、というのが大問題なのかと。

今現在、全日本に秋山準というプロレスラーは居ない
以外の誰が辞めても全く問題は無いが、いちばん引き留めなければならな
い存在をかんたんに手放した全日本プロレスは、存在こそしているものの、
全く僕の琴線に触れない団体に成り下がった。宮原諏訪魔・石川ジェイ
などの才能のある選手は、早めに次のステージを考えるべきだと思う。

たった3年前、あれだけ前向きだった男の記録。
秋山のことを思うと、そんな記録が残っていること自体が可哀想だ・・・。