まんが トキワ荘物語

#椎名町の奇跡


▼まんが トキワ荘物語 / V.A

Amazonで何かの買い物のついでに購入したペーパーバッグ
おそらくこないだ椎名町に行った(^^;)のが原因。定期的に来るんだよなぁ、
トキワ荘関連書籍が読みたくなる時期が・・・。

トキワ荘に居住したことのある12人のレジェンド作家(※)が、トキワ荘
に関する短編を1篇ずつ執筆。コレに巻末の座談会を併せて一冊になってい
るのだが、まぁ面子が凄い。

手塚治虫・藤子不二雄Ⓐ・寺田ヒロオ・鈴木伸一・赤塚不二夫・水野英子・
つのだじろう・永田竹丸・森安なおや・よこたとくお・長谷邦夫・石ノ森
章太郎。羅列するだけでも神々しさすら感じる人たちが、同じ建物に住ん
でいた、という事実が凄い。

大きなポイントとして「寺さん」こと寺田ヒロオ先生「大人向け」作品
が読めること。生涯一貫して少年スポーツマンガしか書かなかった、とさ
れる寺田ヒロオの、唯一の例外である短編が収録されているのは貴重なの
で是非ご一読を。

しかし読み終わってから確信したのだけど、おそらく僕はこの本を所持し
ている(^^;)。装丁はきっとペーパーバッグでは無いが、どこか探せばきっ
と発掘出来る気がする。まぁ、良い作品だから2冊あっても問題無いけど。

※つのだじろう・永田竹丸の両氏は非居住者なので注意!

落日

#それでも、生きて行く


▼落日 / 湊かなえ

湊かなえの新作。
今回の主役はいきなり売れた女性映画監督と、鳴かず飛ばずのままここま
で来た女性脚本家。キーワードはおそらく「イジメ」「トラウマ」

主役の2人は幼少期に大きなトラウマを抱え、2人で一つの作品を手掛ける
ことでそれらを払拭していく、という話なのだが、そこに女史特有の極め
の細かいミステリー要素が絡み、目の離せない展開となる。見事な仕事で
あることは間違い無いのだが・・・。

やっぱり「重い」作品。しかし、これまでの湊かなえ作品のソレとは若干
テイストが違い、悪意とかそのあたりの明快な重さではなく、もっとジワ
ッとした重さ。物語全体がその感覚に包まれている所為か、読後感はやた
どんより。こういう感覚、これまでの湊作品では味わった覚えが無い。

もちろん水準以上の満足感はあるのだが、どうも湊かなえを読んだ、とい
う充足感に欠ける感。どうなんだろうなぁ、コレ・・・。

月人壮士

#螺旋プロジェクト


▼月人壮士 / 澤田瞳子(Kindle版)

螺旋プロジェクト第四弾その2
・・・このプロジェクト自体に非常に興味があり、慣れない作家・慣れない
ジャンルの作品を頑張って読んできた。で、ここまでは思ったより辛い
モノは無かったのだが・・・。

・・・いやぁ、今回非常に辛かった(^^;)。読了まですげぇ時間かかったし。
時代小説自体苦手なのに、さらに苦手な飛鳥〜奈良時代が舞台。登場人物
皇族その周辺の人たち。さらに言えばフリガナ代わりのローマ字が無
かったらタイトルも、そして澤田瞳子という作家名すら読めなかった
鬼門だったな、第四弾にして(^^;)。

もちろんこの作品でも海vs山の対立は生きているのだが、その辺りがどう
もハッキリ区別出来ず。おそらく口語表現で書かれている文章が読みにく
い、という根本的な問題が原因なのだが、それにしても内容が全く入って
こなかった。こういう本を読む才能無いんだろうなぁ、きっと・・・。

しかし、螺旋プロジェクト的にはちょっとだけ面白い事態に。
「決して交わることは無い」とされているが、日本史の序盤でいき
なり物理的に融合している、という事実。背景を考えるとそういう状況に
ならなければその後の対立は成り立たない。そういう意味では、プロジェ
クトの状況説明として必要な作品だったのだ、とは思う。

・・・でも、やっぱ苦手(^^;)。
次から第五弾に入り、さらにディープな「原始時代」が舞台となる作品が
待っている。まぁ、飛鳥よりは幾らかマシかな、原始の方が(^^;)。

三匹の子豚

#イヤミス #狼は誰だ?


▼三匹の子豚 / 真梨幸子(Kindle版)

真梨幸子2019年3作目にして令和最初の作品。
もう鉄板。誰もが期待する通りの「完璧なるイヤミス」。ドロドロで異臭
まで漂いそうな真梨幸子ワールドを、今回もぶちかましてくれた。

モチーフはもちろん童話「三匹の子豚」ザ・童話と言えるくらい有名
な話であり、まぁ普通の人なら誰もが知っている。それを絶妙にアレンジ
しつつ、最高の悪意を混ぜた上でオトナがゾクゾクするような作品に仕上
げている。しかし、あの物語をどう解釈したらこんな話を思いつくのか?
相変わらず凄いセンスだと思う。

今回、真梨幸子作品がもう一つ進化を見せた気が。
最近はイヤミスの“ミステリー”の部分で「ミスリード」という必殺技を
駆使し、物語に深みを加えていたのだが、今回は特にミスリードを誘うよ
うな記述は見受けられない。代わりに物語が循環しつつも展開し、読み進
めるうちに謎がゆっくり解けて行く、という王道系。以前の作品でもソレ
に挑戦し、複雑になりすぎてしまったモノがあったのだが、今回はそうい
難解さは皆無。今なら普通のミステリーを書いてもヒット作が出せる気
がする。

と言いつつも、だ。
海外にこういうジャンルがあるかどうかは知らないが、真梨幸子こそおそ
らく世界最強のイヤミスメーカー。イヤミスしか書かない、という姿勢は
もうストイックと表現してもおかしくない。ブレず、コンスタントに作品
をリリースし、どれもが最高にして最悪
僕が尊敬して止まないイヤミスの教祖は、こんなにもカッコイイ

これは映像で観たいなぁ・・・。
すっごくWOWOW・連続ドラマW向きな気がするけど。

プロレスが死んだ日。

#相容れず


▼プロレスが死んだ日。 / 近藤隆夫

元ゴング格闘技編集長にしてKRS体制の初期PRIDEでパンフレット編集等
を行っていた近藤隆夫の作品。タイトルの「プロレスが死んだ日」とは、
1997年10月11日のこと。東京ドームで高田延彦ヒクソン・グレイシー
完膚なきまで叩きのめされたあの日の試合を中心に、ヒクソンや高田
へのインタビューを交えたドキュメントタッチな一冊となっている。

最初に言っておくが、僕はこの近藤隆夫という男にハッキリとした嫌悪感
を持っている。僕の評価は「目の前で起きていることを正しく認識する能
力に欠けるダメ専門家」アレクサンダー大塚マルコ・ファスにほぼ何
もさせずに完勝した試合で、始終素っ頓狂な解説を展開。自分が必死に取
材した対象に多大に肩入れし、事前に予想した展開と異なる状況になって
も「いや、これは違う」と言い張る。解りやすく言うと、心霊現象を目
の当たりにし、事実としてソレが起こっているのを自分の目で見ているに
も関わらず、「こんなことはありえない」と言っちゃう科学者みたいなモ
ン。個人的にいちばんカッコ悪いタイプの人間だと思っている。

そんな人の著書を何故手に取ったのかと言うと・・・。
あれから20年以上が経過し、高田×ヒクソンを振り返る作品を幾つか読ん
だのだが、どれも高田の側からの検証ばかり。やはりヒクソン側の状況
知っておくのがフェアである、と考えたから。それでも発刊から2年以上が
経過しているのだから、僕がこの著者をどれだけ嫌いか解ると思う。

おおよそ予想通りの内容だったのだが、悔しくも1点だけ著者に同調した。
それは、高田「タップ」についての記述。あの時の高田はプロレス界の
みならず、全てのプロレスファンの思いを背負って試合をする、と思って
いた僕は、腕ひしぎが決まった瞬間当然のように即タップした高田に猛烈
に失望した。あれさえ無ければ「負け」という事実があっても、あんなに
落ち込むことは無かった、とハッキリ断言出来る。その部分を自らの柔道
体験になぞらえて解りやすく説明する文章だけは評価せねばならない。

ただ、ハッキリ否定しなければならないこともある。
プロレスは、絶対に死んでいない。PRIDEでの一連の桜庭や、ドン・フラ
との壮絶な殴り合いの上に散った高山の活躍などで、PRIDEの場に於い
ても間違い無くプロレスは息を吹き返した。

さらにその後、PRIDEやK-1はどんどん衰退していったが、プロレスは客の
入らない時期はあってもずっと存在し続け、今は新日本プロレスを中心に
大復活の時代に到達している。一方、格闘技はプレーヤーを中心に細々と
盛り上がっているだけ。今周囲に「格闘技」「観ている」人がいったい
何人居るのか、数えてみればいいと思う。

・・・やっぱり辛辣になっちゃうなぁ、この人に関しては(^^;)。
まぁ、文章が上手いことだけは認めます。他はやっぱり一切認められない
けど(^^;)。