プロレス界vs.別冊宝島

#宝島 #VOICE OF WONDERLAND


▼プロレス界vs.別冊宝島 スキャンダル15年戦争の全内幕 / 欠端大林

2003年から今に至るまで続いている別冊宝島プロレス暴露本
すれっからしのプロレスファンなら思わず手に取ってしまうムック
のだが、この単行本はそれらの総集編。単に抜粋・編集しただけでは
なく、解説を付加した上で独立した作品に仕上がっている。

このシリーズのターゲットは、前半が圧倒的に新日本プロレス後半
はその殆どがプロレスリング・ノア。おそらくココに書かれている事
はおおよそ「本当のこと」だが、団体運営側としては触れて欲しくな
い事だらけなハズ。そんな中で新日は劇的なV字回復を見せたのだが、
ノアに関しては思わず目を覆いたくなるような凋落ぶり。そうなった
原因の大きな部分が宝島の暴露本にあったような気がする。

新日本を心の拠り所としながらも、いつもしっかりした試合を展開す
るかつてのノアもちゃんとチェックしていた僕は、本来このシリーズ
悪意を感じて然るべきなのだが、何故だかそこまでの否定感は無い。
長年プロレスファンをやっていると、「知らなくても良いこと」を知
ってしまった時の対応が出来るようになったらしく、この手の本を読
んでもハナで笑う程度で、心が傷つくことはなくなった。逆に、自分
にちょっと面白いプロレス裏知識が付いていくことを喜ばしくさえ思
った。

でも、もう要らないかな、別冊宝島の情報は(^^;)。
最近はムックを購入することも無くなったし、裏事情を知りたい、と
いう欲求もほぼ無くなった。おそらく宝島もその辺りはビシビシ感じ
ており、だからこそ新機軸である「●●の真実」シリーズを中心に持
ってきている気が。

読むならそっちだな、やっぱり。
取り敢えず暴露ネタの集大成としては、立派な作品だと思う。
・・・二度と読み返すことは無いと思うけど(^^;)。

あさドラ!

#浦沢直樹がまたクソヤバいマンガを描いている件


▼あさドラ! / 浦沢直樹

↑↑、コンビニで偶然目にしたレトロなデザインの単行本
よくよく見てみれば、浦沢直樹作品。しかも「第1巻」と書いてある。
・・・速攻で購入した。

またもや感じた「なんだコレ?」というワクワクする感覚
この人の描く作品は、どうしてこんなにも人をトキメかせるんだろう、
と思わず感嘆してしまった。

舞台は終戦直後の名古屋?
だとしたら巻頭のカラーページには何の意味があるのか?・・・な感じで
いつもの通り、1巻はおおよそで「予告編」。従ってコレを読んだだけ
では物語の全貌が全く掴めないのだが、もう僕は今後の展開が気になっ
てしょうがない。予告編でここまで人の心を掴むマンガを描ける人って、
もうこの世にこの作家しか居ない気がする。

2巻だそーな(^^;)。
正直、そこまで待てる自信が全く無い。久しぶりにスピリッツを定期
購読しちゃおうかな?

コクーン

▼コクーン / 葉真中顕(Kindle版)

葉真中顕強化月間、今作はちょっと不思議なお話
構成は連作短編集で、内容はバブル期の日本で起こったあるカルト教団の
蛮行、それに翻弄された人々の物語、という感じ。多種多様な人物が登場
してくるのだが・・・。

着想のヒントは間違い無くあの教団が起こした地下鉄サリン事件だと思う
のだが、その「事実」巧妙に処理したファンタジー作品と言えなくも無
い。しかし、ファンタジーと言うにはひたすらに「重い」内容。

読み進めるうちに、各章を繋ぐ「線」がハッキリ色濃くなって行くタイプ。
それぞれの人生を歩いて来た筈の人たちが、過去に教団関係者と何らかの
関係を持っており、更に全員がある種のコンプレックスを抱えている、と
いうのが大きなポイント。

エピローグの書き方が本当に凄く、おそらく最後まで読んだ人たちを闇の
底に叩き落とすほどの効果。扇動的な表現はほぼ無く、淡々とした文章な
のだが、その「救いの無さ」に、どうしようもない恐怖まで感じてしまった。

強化月間は進行中だけど、一回休みを入れた方が良いかも(^^;)。
この作家の破壊力、ちょっと只事では無い感じなので。

W県警の悲劇

▼W県警の悲劇 / 葉真中顕(Kindle版)

期せずして強化月間驀進中葉真中顕作品。はやくも4作目
こちらは警察小説、全6篇から成る連作短編集。W県という架空の都市の
県警とそれに付随する各地の所轄警察署を舞台に繰り広げられるミステリ
ーで、各篇に細かくリンクが貼られており、長編小説並みの手応え。

この作家のアドバンテージは叙述トリックどんでん返し
どんでん返しの部分は、その分野の神様とされる中山七里にはやや及ば
ないが、そこに組み合わされる叙述トリックがこれまでの誰よりも優秀
今回は「欺されないぞ、暴いてやる!」という気概を以て読書に臨んだ
のだが、1〜4話までは完全にやられた。特に3話「ガサ入れの朝」に関
しては、もう反則だろ、と指摘したくなるくらいの巧妙さで、結局その
テクニックに舌を巻いた次第。

しかし、さすがに見破ったぞ、5話6話(^^;)。
ただ面白いことに、トリックが思った通りであったとしても、普段他の
作家に感じる「こんなもんかよ?」という悪態をつく気になれない
そうか、そういうことを考えるのか、というシンパシーまで生まれて来
ちゃってるらしいから、僕は本当にこの作家にハマっている

いやぁ、この強化月間はまだまだ続くなぁ、きっと。
今月中にリリース分を読み切ってしまいそうなのがちょっと怖いけど、
怯まずに進むつもり。さて次は・・・。

ロスト・ケア

▼ロスト・ケア / 葉真中顕(Kindle版)

早くも3本目となる葉真中顕作品。
「介護」を題材としたミステリー小説。犯罪者・検察官・被害者・民間
の介護企業担当がランダムに語り部を勤め、伏線の貼り方からその回収、
ストーリーの構成まで、全てに於いて非常に高いレベルでまとまってい
「傑作」、と最初に言い切っておく。

・・・凄い
いや、冗談ではなく、ここ最近で読んだ本の中では最強のインパクト
現状の社会情勢そのものを思いっきり考えさせられる内容で、あまりの
リアリティ本気の震えが来た程。この作品に凡百のホラー小説が束に
なっても叶わないくらいの「怖さ」があるのは、もしかしたらかなり近
い将来、自分がこういう世界に置かれる可能性がやたら高いから。そう
なった時に、自分がどうするか?の審判を迫られた気がする。

ここからちょっとネタバレなので注意。

何が怖かったのかと言うと、例えば自分が要介護認定となった、あるい
はなりそうな場合、やっぱりなんとかして自らの命を絶とうとしてしま
う気がすること。介護・・・いや、世話をしてくれるであろう何らかの身内
にかけてしまう迷惑を思えば、それだけで「ただ生きている」ことが
えられなくなる自信がある。

もっともっと怖いのが、自分がこの作品の真犯人と同じように、重度の
介護が必要な身内を持ってしまった時、どういう感情を持つのか?とい
うこと。この作品の冒頭から出てくるワード、「安全地帯」を確保出来
るか否か・・・。ソレを考えると・・・。

とにかく葉真中顕、完全に僕の心にを打ってくれた。
今のところ著作はそれ程多くなく、近いうちに全てを読み切ってしまう
のは確実。初めてかもしれない。「恐怖」に支配されるのは。