シーソーモンスター

#螺旋プロジェクト


▼シーソーモンスター / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の新作は表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」
の二本立て。こないだちょっとだけ触れた「螺旋プロジェクト」の中核的
な作品。

今回も伊坂幸太郎節全開!
シニカルでやたらカッコイイ台詞回しが心地よい上に、相変わらず冴え渡
る抜群のキャラクターメイキング。特に今回は珍しく“女性”がほぼほぼで
主役を張る、という、氏にしては非常に斬新な展開。おまけにこの女性キ
ャラがやたらカッコ良いのだから、呆れるほど感心した。

螺旋プロジェクトで伊坂幸太郎が担当した時代は、昭和後期(シーソー)
と近未来(スピン)。バブルからポストバブルまでの時代を丁寧に検証し
たシーソーでちょっとした懐かしさを感じ、スピンで表現される近未来の
あまりのリアルさに感嘆する、という見事な二段構え。更にこの2本、共
通する登場人物を立てることで見事に繋がっているのが凄い。

もう、明らかにオススメ。コレを読まないと、2019年度は始まらない、
とまで思った。

・・・若干心配になるのは、同じ螺旋プロジェクトに参加している他の作家
の作品クオリティ。伊坂幸太郎と同じレベルを保てるかどうか・・・。

思い出探偵

#捜し物はなんですか? #京都大原三千里


▼思い出探偵 / 鏑木蓮(Kindle版)

某所からの推薦図書。
鏑木蓮という作家が全くピンと来なかったのでネットで著作を検索した
ところ、なんとなくでも知っている作品が一つも無し。こういう状況は
今やかえって珍しい。久々に新鮮な気持ちで読んでみた。

タイトルから容易に予測出来る通り、ミステリー作品である。
ただし、基本人は死なないし、これはあんまりだ、という残酷な展開も
無い。それもそのはず、主人公の元刑事・実相浩二郎が探偵として取り
扱う案件は「思い出」。浮気調査や身辺調査ではなく、「思い出」に纏
わる人やモノを探す、という状況なので、もちろん派手な展開は皆無。
なのだが・・・。

なんとうか、非常に暖かいお話。
仕事の性質上、長い年月を掘り返さなければならない事態が多く見られ、
その中にはもちろん重い事実もあったりするのだが、それを踏まえた上
で依頼人をハッピーにしよう、という誠実さが随所に感じられる。ハー
ドなミステリーも大好きだが、こういうしっとりした展開の作品も時に
は必要なのかも。不思議と心が洗われ、ひさびさにホンワカとした緩や
かな読後感を堪能した。

思い出探偵はシリーズ作品らしく、続編が数冊ある模様。心がくたびれ
た時、もしくはいつも読んでいるハード系の作品に疲れた時に読んでみ
よう、と思った。

しかし一つだけ、非常に苦手な部分が(^^;)。
舞台は京都であり、当然登場人物の何人かは京都弁を喋る。残念ながら
僕は文字で書かれた関西系の方言があまり好きでは無いらしく、会話の
部分で読書のテンポがちょっと狂ってしまったかも。
人が喋る京都弁は決してキライではないんだけどなぁ・・・。

プロレス界vs.別冊宝島

#宝島 #VOICE OF WONDERLAND


▼プロレス界vs.別冊宝島 スキャンダル15年戦争の全内幕 / 欠端大林

2003年から今に至るまで続いている別冊宝島のプロレス暴露本。
すれっからしのプロレスファンなら思わず手に取ってしまうムックな
のだが、この単行本はそれらの総集編。単に抜粋・編集しただけでは
なく、解説を付加した上で独立した作品に仕上がっている。

このシリーズのターゲットは、前半が圧倒的に新日本プロレス、後半
はその殆どがプロレスリング・ノア。おそらくココに書かれている事
はおおよそ「本当のこと」だが、団体運営側としては触れて欲しくな
い事だらけなハズ。そんな中で新日は劇的なV字回復を見せたのだが、
ノアに関しては思わず目を覆いたくなるような凋落ぶり。そうなった
原因の大きな部分が宝島の暴露本にあったような気がする。

新日本を心の拠り所としながらも、いつもしっかりした試合を展開す
るかつてのノアもちゃんとチェックしていた僕は、本来このシリーズ
に悪意を感じて然るべきなのだが、何故だかそこまでの否定感は無い。
長年プロレスファンをやっていると、「知らなくても良いこと」を知
ってしまった時の対応が出来るようになったらしく、この手の本を読
んでもハナで笑う程度で、心が傷つくことはなくなった。逆に、自分
にちょっと面白いプロレス裏知識が付いていくことを喜ばしくさえ思
った。

でも、もう要らないかな、別冊宝島の情報は(^^;)。
最近はムックを購入することも無くなったし、裏事情を知りたい、と
いう欲求もほぼ無くなった。おそらく宝島もその辺りはビシビシ感じ
ており、だからこそ新機軸である「●●の真実」シリーズを中心に持
ってきている気が。

読むならそっちだな、やっぱり。
取り敢えず暴露ネタの集大成としては、立派な作品だと思う。
・・・二度と読み返すことは無いと思うけど(^^;)。

あさドラ!

#浦沢直樹がまたクソヤバいマンガを描いている件


▼あさドラ! / 浦沢直樹

↑↑、コンビニで偶然目にしたレトロなデザインの単行本。
よくよく見てみれば、浦沢直樹作品。しかも「第1巻」と書いてある。
・・・速攻で購入した。

またもや感じた「なんだコレ?」というワクワクする感覚。
この人の描く作品は、どうしてこんなにも人をトキメかせるんだろう、
と思わず感嘆してしまった。

舞台は終戦直後の名古屋?
だとしたら巻頭のカラーページには何の意味があるのか?・・・な感じで
いつもの通り、1巻はおおよそで「予告編」。従ってコレを読んだだけ
では物語の全貌が全く掴めないのだが、もう僕は今後の展開が気になっ
てしょうがない。予告編でここまで人の心を掴むマンガを描ける人って、
もうこの世にこの作家しか居ない気がする。

2巻は秋だそーな(^^;)。
正直、そこまで待てる自信が全く無い。久しぶりにスピリッツを定期
購読しちゃおうかな?

コクーン

▼コクーン / 葉真中顕(Kindle版)

葉真中顕強化月間、今作はちょっと不思議なお話。
構成は連作短編集で、内容はバブル期の日本で起こったあるカルト教団の
蛮行、それに翻弄された人々の物語、という感じ。多種多様な人物が登場
してくるのだが・・・。

着想のヒントは間違い無くあの教団が起こした地下鉄サリン事件だと思う
のだが、その「事実」を巧妙に処理したファンタジー作品と言えなくも無
い。しかし、ファンタジーと言うにはひたすらに「重い」内容。

読み進めるうちに、各章を繋ぐ「線」がハッキリ色濃くなって行くタイプ。
それぞれの人生を歩いて来た筈の人たちが、過去に教団関係者と何らかの
関係を持っており、更に全員がある種のコンプレックスを抱えている、と
いうのが大きなポイント。

エピローグの書き方が本当に凄く、おそらく最後まで読んだ人たちを闇の
底に叩き落とすほどの効果。扇動的な表現はほぼ無く、淡々とした文章な
のだが、その「救いの無さ」に、どうしようもない恐怖まで感じてしまった。

強化月間は進行中だけど、一回休みを入れた方が良いかも(^^;)。
この作家の破壊力、ちょっと只事では無い感じなので。