闘魂Vスペシャル伝説

▼闘魂Vスペシャル伝説 / 小路谷秀樹・小島和宏

プロレス関係のMOOKは多々読んでいるのだが、その中でもコレは特殊
フォーカスされているのは1990年代に「VALIS」というブランドから発売
されていたセルビデオシリーズ「闘魂Vスペシャル」。著者の一人として名
を連ねている小路谷秀樹氏とは、そのVALISの社長であり、レンタル全盛時
AV業界を席巻した映像クリエイター。つまり、闘魂Vの制作当事者自らが
同シリーズの秘話を語る、という作品である。

プロレスの中でも相当にニッチな世界なハズなのだが、小路谷監督の談話に
イチイチ頷ける自分にまず驚いた。つまり、僕は闘魂Vスペシャルシリーズ
作品をかなり観ている、ということ。確かに今でもきっと部屋を探せば何本
かのVHSパッケージを発掘出来ると思う。映像メディアといえばVHSしか無
かった時代。当時の販売価格3,800円というのは衝撃だったが、正味30分尺
と考えると、決して安くは無い。当時はかなりの薄給(^^;)。にも関わらず、
こういうビデオに金を惜しまなかった気がする。

小路谷監督の語るところによると、「闘魂Vスペシャル」の素材は、会社を
畳んだ時に新日本プロレスに権利ごと売却しているらしいのだが、新日本内
行方不明になっている(^^;)とか。発掘出来れば確実に配信サービスである
新日本プロレスワールド目玉になる。ぜひ探し出して欲しい。

正直、かなり楽しめました! いい企画だな、このMOOK。

闘う君の唄を

▼闘う君の唄を / 中山七里(Kindle版)

中山七里作品。
相変わらず刺激的なタイトルで、どんな凄まじいミステリーを読ませてく
れるのか?と思いきや、なんと新卒保育教師(しかも)の熱血系お仕事
物語。周囲に合わせて「流す」ことの出来ない、しかし情熱と子どもたち
に対する愛情だけは人一倍ある、我々の世界ではちょっとだけ扱いの難し
い立場(^^;)と言わざるを得ないキャピキャピ系の女性が、モンスターペア
レンツたちに立ち向かい、徐々に信頼を得ていくお話・・・と思いきや(^^;)。

さすがはどんでん返しの帝王
終盤とは言えないとんでもない場所で、あまりに予想外のどんでん返し
仕掛けてきた。正直、中山七里の作品を読むときは、どんでん返しに備え
て伏線を取りこぼさないように注意しているのだが、今回は完全にしてや
られた。序盤で「コレだ!」と思ったエピソードが全く関係無かったのだ
から、思わず苦笑い(^^;)。氏の上を行こう、という考えが非常に甘かった。

というワケで、いつも以上に凄い中山七里の世界が読めることは保証する。
しかし、今回は敢えて「壮大な前振り」部分である熱血保育教師の活躍
注目すべき。中山七里は、ある意味こういう“普通”なお仕事を書かせても
一流であることが解ると思う。

読み応えたっぷりの快作。やられた!感を味わいたい方はぜひ!

知らなきゃよかった プロレス界の残念な伝説

▼知らなきゃよかった プロレス界の残念な伝説 / ミスター高橋

プロレス界の「超A級戦犯」とされるミスター高橋の作品。
ミスター高橋とは、自著の流血のなんちゃら(^^;)でプロレス界の内幕を
バッサリカミングアウトし、各方面に問題を投げかけた元新日本メイン
レフリー

かつての著書については僕も完全に「否定派」寄り。
内容が真実かどうかなんて正直どうでもいい。そういうのを含めて語れる
のがプロレスの良いところであり、だからこそ40年以上プロレスに魅了さ
れてきた。ミスター高橋に対する思いは「余計なことをブツブツと・・・」
といったところ。

そんな僕が何故こんな本を買ったのかというと、コレがもう魔が差した
しか言い様がない(^^;)。無理に言うなら、新日本の黄金時代に外人係とし
て数々の名選手たちと接してきた氏のキャリアだけはバカに出来ず、とい
ったところだが、それが吉と出るか凶と出るか・・・。

・・・凶でした(^^;)。
まず、エピソードが非常に薄っぺらい上に、これまで知らなかった事実が
殆ど無い、というトホホさ。コレに加え、文章があまりに稚拙で、続けて
読むのが苦痛。あれだけ話題になった本を書いておきながら、この成長の
無さが辛い(^^;)。「知らなきゃよかった」と感じるエピソードすら無い、
というのはある意味凄いけど。

そういう風に読んじゃうのは、やっぱり僕にわだかまりがあるんだろうな
ぁ、とは思う。良い意味でも悪い意味でも、プロレスと格闘技に線が引か
れるようになったのは「流血」があったから。しかし、僕は今でもプロレ
スを格闘技の上位概念として捉えている。

意味は違うかもしれないが、格闘技よりもプロレスの方がよっぽど真剣。
「技を逃げずに受ける」という怖さは、いわゆる格闘技には絶対に存在し
ないし、リング上での動き一つを間違っただけで何ヶ月も業界が低迷する
場合もある。ミスター高橋があの本を出す前に、僕は、いや、僕と同じよ
うにプロレスを観てた人たちはソレに絶対気付いていた

だからまぁ、この人に出来るのは余計なことを言うくらいなんだろうなぁ、
と思う。この辺が私利私欲に走った人の限界なんだよね、きっと。
説得力は無いのを承知で言う。買わなきゃ良かったな、この本(^^;)。

THE SUN ALSO RISES

▼日は、また昇る。 / スタン・ハンセン(Kindle版)

「ブレーキの壊れたダンプカー」ないしは「不沈艦」の異名を取り、その
キャリアの殆どを日本のリングに捧げたレジェンド、スタン・ハンセン
自伝

ハンセンの存在を認識したのは、僕が小学校4年生くらいの頃だったと思う。
ニューヨークであのブルーノ・サンマルチノの首をへし折り、鳴り物入りで
新日本プロレスに参加したハンセンは、その段階で既に驚愕だった。ファイ
トスタイルは荒削りで直線的だったのだが、凶器などの反則を殆ど使わず、
フィジカルのみ圧倒的な強さを魅せる。最初こそインサイドワークに長け
アントニオ猪木に手玉に取られたが、2回・3回と来日を重ねる度に猪木
に肉薄。ついにはNWF王座まで奪ってしまった。ちなみに、NWF王者時代
の猪木がタイトルを明け渡した選手は、ハンセンとタイガー・ジェット・シ
2人だけである

僕が最初に生で観た猪木の試合は、ハンセンとの一騎打ち。それも、NWF
王者のハンセン猪木が挑むリターンマッチ。ここでスタン・ハンセンを、
そしてウェスタンラリアートを目撃してしまった事が、僕の人生を変えた、
と言って間違い無いと思う。

そんな「最重要」な選手の自伝だから、やはり居住まいを正して読んだ
現役時代の話ももちろん興味深かったのだが、それよりも引退後、未練を
残さずにキッパリリングから去った後の姿に感銘を受けた。

プロレス界には「引退」を撤回し、何度も復帰するレスラーが多々居るし、
正直ソレを否定する気はもう失せているのだが、ハンセンの態度は本当に
立派。だからこそ僕は今でもハンセンをリスペクト出来るし、大きな大会
にウィットネスとして来日するハンセンに惜しみなく大声援を送ることが
出来る。スタン・ハンセンこそが、本物のプロレスラーである。

そんなハンセンは、来年2月19日の「ジャイアント馬場没20年追善興行」
両国国技館大会に久々に来日する。当日集まるであろう多くのプロレスフ
ァンと共に、僕も大きな「ウィー!!」を叫ぼうと思う次第。

ちなみに現在この作品はUnlimited扱い。今がチャンスだ!

フーガはユーガ

▼フーガはユーガ / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎約1年ぶりの新作。
想像するに・・・だが、この作品、伊坂センセイはいちばん最初にタイトルを
思いついたんじゃないかと(^^;)。駄洒落と言えばダジャレなのだが、発音
すると妙に語呂が良く無根拠にセンスが良い。伊坂作品としての体裁を、
タイトルの段階で印象づけしてしまうのが凄い。

閑話休題。←オマージュ。
今回の主人公は双子。最高に虐げられ、最悪とも言える人生を送ることを
余儀なくされた2人。にも関わらず、文中から彼らの悲壮感は全く読み取れ
ず、逆にクールさが際立っている。これは間違い無く新たな代表キャラ
なる、と期待したのだが・・・。

もちろん、いつもの伊坂幸太郎ワールドがこれでもか!とばかりに展開さ
れる。何かが起こる度に一喜一憂できる文章と、何気ない感じで振られる
伏線とその回収は本当に見事。今回も最後までハラハラしながら読んだの
だが、クライマックスがあまりに切ない。読み終わった段階で強烈な寂し
を感じてしまった。

ともかく、伊坂らしい破天荒で独特な世界観はもちろん健在だし、カッコ
イイとしか言えない文体も期待通り。ストーリーもアイデアもすばらしい
ので、誰が読んでも面白い作品であることは間違い無い。

そして、流行りそうな気がするな、この本の中にあるダジャレ(^^;)は。
「デッキが出来た」とか(^^;)。