最後の告白

▼長州力 最後の告白 /  長州 力・水道橋博士

・・・まぁ、普通だったら買わないんだよね、この人の本って(^^;)。
しかし今回は「聞き手」があの水道橋博士であり、信用している某サイトでの
評判も上々だったから、取り敢えず購入してみたのだけど・・・。

・・・いや博士、もっと突っ込むべきだった(^^;)。
各章のインタビューは非常に歯切れが悪く、どれも「告白」というレベルに達
していない気が。おそらく博士が知らぬ間に気を遣っちゃってハイスパート
持って行けなかったんじゃないか?と思われるのだが、おかげでもうスッカス
カの内容。う〜ん・・・。

残念ながら、これまでに出ている長州関連本およびその記事劣化再編集版
しか評価出来ない。僕を含むプロレスファンには信頼されている水道橋博士だ
が、この本はハッキリと失敗だった、としとく。

無駄だったなぁ、やっぱり。
相性悪いんだよなぁ、ど真ん中とは(^^;)。

町中華とはなんだ

▼町中華とはなんだ / 町中華探検隊(Kindle版)

Kindleのリコメンドに出てきた作品。
まず著者の「町中華探検隊」とは、サブカルの世界では高名なライターである
北尾トロ・下関マグロの両者が結成し、その後薔薇族編集長の龍超などを巻き
込んで巨大化している食べ歩き愛好団体の名称と説明しておく。現在何人の隊
員がいるのか、正確な数は・・・まぁ解らない(^^;)。

日本全国、ほぼどこの町にもだいたい存在する「中華屋」
昭和以前開店し、大資本のチェーン店傘下ではない個人営業のお店。中華と
言ってもラーメン専門店ではなく、メニューにラーメン・餃子・炒飯が必ずあ
った上で、セットも充実、さらに中華なのにカツ丼カレーオムライスなど
も置いているような、昔ながらの中華食堂のことを「町中華」とカテゴライズ。
後継者不足などで絶滅が叫ばれる町中華を、しっかり記録しておこう、という
わりと崇高な企画らしい。

・・・いやぁ、面白いわ、コレ(^^;)。
僕自身は決して町中華が好きなワケではない。強いて言うのなら、炒飯が時折
強烈に食べたくなる程度で、後は冷やし中華の出される夏期に数度そういうお
店を訪れる程度。そして残念ながら(^^;)、この本を読んでいても、紹介される
料理を食べたい、という気持ちは少しも沸いてこない(^^;)。にも関わらず、読
んでいると何故か強烈にそのお店に行きたくなってくるのが不思議。

北尾トロも下関マグロも、以前は本当に好んで読んでいたアングラの申し子の
ようなライター。高尚でもなく、心を打たれるワケでも無いが、妙な居心地の
良さを感じる文体は円熟の域。特に中華料理に興味の無い僕が、読み終わる頃
には特にいっぱしの町中華愛好家の気分になってるのだから、やっぱり彼らの
実力はホンモノ。ま、胡散臭いことも間違いは無いけど。

こちらはUnlimited扱いなので、会員ならとにかく読んでみるべき。
アングラの実力を堪能出来ると思うので、ぜひ!

ボーダレス

▼ボーダレス / 誉田哲也(Kindle版)

誉田哲也の新作。
この作家は非常に振り幅が広く、警察ミステリーから剣道モノ音楽モノ、更
にはほのぼのお仕事モノなど、いろんなジャンルの作品を描いており、驚くこ
とに基本殆どハズレの無い天才。そういう人が今回手を付けたのは・・・。

最初の3章くらいまで、正直意味が解らなかった
毛色が全く違うエピソードが次々に繰り出され、果たして同じ作品世界なのか?
と疑問に思った程。いや、下手すれば落丁本を買っちゃった、とすら思った(^^;)。
まぁ、電子書籍だからそれはあり得ないのだけど(^^;)。

具体的に言えばストーリーは4つ、共通点はほぼ「女性」が主人公ということ。

・ミステリー小説家志望の友だちが出来た基本フツーな女子高生
・格闘家の父と事故で失明した妹を持つ姉
・音楽家の夢が破れ、才能ある妹に嘲まれつつ実家の喫茶店を手伝う姉
・病弱で外出すらままならない人(後の方まで性別不明)

・・・の4名のエピソードを軸に物語は展開する。
誉田哲也ファンならすぐピンと来ると思うが、この中にこれまでの誉田哲也の
ほぼ全てのジャンル、すなわち警察・格闘技・音楽・ヒューマンが組み込まれ
ているのがポイント。この「全く別」と思われるエピソードが、クライマック
ス近辺で予想出来ない状況でリンクしてくるから凄い。

こういうの、やりたかったんだろうなぁ、きっと。
とにかく今回は際だった構成力が勝因。全部入りにした弊害か、それぞれのエ
ピソードがやや軽い感はあるが、これから誉田哲也を読もう、という人には格
好のプレゼンテーション作品になりそう。オススメです、かなり。

猪木は馬場をなぜ潰せなかったのか

▼猪木は馬場をなぜ潰せなかったのか / 西花池湖南

プロレス「黄金時代」とされる1980年から89年までの10年間の解説本。
俗に新日本・全日本「二団体時代」とされる時期で、両団体の試合が地上波の
ゴールデンタイムで放映されていた、プロレスがいちばん熱かった時代。その頃
に選手としても経営者としても団体のトップを張っていた日本プロレス界の象徴
アントニオ猪木ジャイアント馬場対立と、両者の権力が衰えていく様子が時
系列で描かれている。

・・・この手のプロレス本に関してはかなりの数を読んでいるのだが、正直中途半
な印象。ディープなプロレスファンであればおおよそ知っている事実に対し、
主観を混ぜた状態で淡々と書かれているのだが、その肝心の「主観」があまりに
画一的。一冊の本としてまとめる場合、もう少し自分の考えが前面に出てきてく
れないと、すれっからしの我々は共感も批判も出来ない

そして、がっかりしたのはタイトルに対する明確なアンサーが記載されていない
こと。まぁ、文脈から察しろ、ということだとは思うのだが、だとするなら特に
必要の無い本(^^;)、ということになっちゃうと思う。

それなりに読める本ではあるが、良い意味でも悪い意味でも「問題作」では無い
そういうプロレス書籍ってインパクトも無いんだよなぁ、実は・・・。

スーツケースの半分は

▼スーツケースの半分は / 近藤史恵(Kindle版)

久しぶりの近藤史恵作品。
ちょうど読む本が切れたところでKindleストアを徘徊中、表紙デザイン可愛さ
に惹かれて思わずポチっと。いわゆるジャケット買い、というヤツ。

「旅」をテーマとしたヒューマンドラマ
ある女性がフリーマーケットで見掛け、一目惚れした青いスーツケースを入手。
やがてそのスーツケースは友人たちに貸し出され、世界中を駆け回る。そのう
ちに「幸運のスーツケース」と呼ばれるようになって・・・という物語。

旅モノの小説はこれまで幾つも読んで来たが、この作品ほど「清々しさ」を感
じたモノはこれまで無かった。偶然手に入れたスーツケースがキッカケとなり、
いろんな人たちが旅先で「生きて行く上で大事なモノ」が何かを見定めていく。
役割を終えるとスーツケースは次の人の手へ。そうやって巡り巡るストーリー
は、はかなくも美しい。大きな事件は全く起こらない「静かな小説」だが、ど
の篇を読んでもジーンと来てしまうのが凄い。

ファンタジー・・・とまで言わないものの、読後感はソレに非常に近いモノが。
おそらくこの作品、きっと何度か読み返すタイプの本になると思う。

旅行、それも一人旅が好きな人はきっとハマりそう。
ウチの今のスーツケースも色は青だが、いつの日か幸運のスーツケースに化け
てくんないかなぁ・・・。